労働安全衛生規則等の一部を改正する省令等の施行について

基発0331第68号
平成29年3月31日
都道府県労働局長 殿
厚生労働省労働基準局長

労働安全衛生規則等の一部を改正する省令等の施行について

 労働安全衛生規則等の一部を改正する省令(平成29年厚生労働省令第29号。以下「改正省令」という。)
及び労働安全衛生法及びこれに基づく命令に係る登録及び指定に関する省令第一条の二の十七第一項第三
号の規定に基づき厚生労働大臣が定める産業医研修の研修科目の範囲、履修方法及び時間及び労働安全衛
生法及びこれに基づく命令に係る登録及び指定に関する省令第一条の二の三十二第一項第三号の規定に基
づき厚生労働大臣が定める産業医実習の実習科目の範囲及び時間の一部を改正する告示(平成29年厚生労
働省告示第97号。以下「改正告示」という。)が平成29年3月29日に公布され、改正省令は平成29年6月1日
から、改正告示は平成29年10月1日から、それぞれ施行又は適用されるところである。
 改正省令及び改正告示は、近年、過重労働による健康障害防止対策、メンタルヘルス対策等が事業場に
おける重要な課題となるなど、産業保健を取り巻く状況が変化してきていることに対応して、産業医制度
の充実を図ること等を目的としたものである。
 改正の趣旨、内容等は以下のとおりであるので、これらを十分理解の上、関係者への周知徹底を図ると
ともに、当該施行等に遺漏なきを期されたい。
T 改正省令関係
第1 改正の趣旨及び概要
 1 労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号。以下「安衛則」という。)関係
  (1) 産業医の定期巡視の頻度(安衛則第15条第1項関係)
    過重労働による健康障害の防止、メンタルヘルス対策等が事業場における重要な課題となってお
   り、また、嘱託産業医を中心に、より効率的かつ効果的な職務の実施が求められている中、これら
   の対策に関して必要な措置を講じるための情報収集において、作業場等の巡視とそれ以外の手段を
   組み合わせることも有効と考えられ、これらを踏まえて、毎月1回以上、一定の情報が事業者から
   産業医に提供される場合においては、産業医の作業場等の巡視の頻度を、少なくとも2月に1回とす
   ることを可能としたこと。

  (2) 健康診断結果に基づく医師等からの意見聴取を行う上で必要となる情報の提供(安衛則第51条の
   2第3項関係)
    安衛則に基づく定期健康診断の有所見率が5割を超える状況の中、事業場規模にかかわらず異常
   所見者に対する就業上の措置に関する医師又は歯科医師からの意見聴取については事業者の義務と
   されており、また、産業医に期待される重要な職務である。
    しかし、産業医の選任義務のない50人未満の小規模事業場を中心に、異常所見者に対する就業上
   の措置の実施が低調であり、その充実・徹底が必要である。これを踏まえ、定期健康診断の異常所
   見者に対する就業上の措置に関する医師又は歯科医師からの意見聴取において医師又は歯科医師が
   意見を述べるに当たっては、定期健康診断において把握した情報に加えて、労働者の労働時間、業
   務内容等の情報を把握することも必要な場合があることなどから、事業者は、医師又は歯科医師か
   ら意見聴取を行う上で必要となる当該労働者の業務に関する情報を求められた場合は、速やかに、
   当該情報を提供しなければならないものとしたこと。

  (3) 産業医に対する長時間労働者に関する情報の提供(安衛則第52条の2第3項関係)
    過重労働による健康障害防止対策をはじめとする産業医の活動の充実の観点から、事業者は、安
   衛則第52条の2第2項に基づき、休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけ
   るその超えた時間を算定したときは、速やかに、その超えた時間が1月当たり100時間を超えた労働
   者の氏名及び当該労働者に係る超えた時間に関する情報を産業医に提供しなければならないものと
   したこと。

 2 有機溶剤中毒予防規則(昭和47年労働省令第36号)等関係
   特殊健康診断の異常所見者に対する就業上の措置に関する医師からの意見聴取において医師が意見
  を述べるに当たっては、特殊健康診断において把握した情報に加えて、労働者の労働時間、業務内容
  等の情報を把握することも必要な場合があることなどから、以下の8省令について、事業者は、医師
  から意見聴取を行う上で必要となる当該労働者の業務に関する情報を求められた場合は、速やかに、
  当該情報を提供しなければならないものとしたこと。
   ・ 有機溶剤中毒予防規則
   ・ 鉛中毒予防規則(昭和47年労働省令第37号)
   ・ 四アルキル鉛中毒予防規則(昭和47年労働省令第38号)
   ・ 特定化学物質障害予防規則(昭和47年労働省令第39号)
   ・ 高気圧作業安全衛生規則(昭和47年労働省令第40号)
   ・ 電離放射線障害防止規則(昭和47年労働省令第41号)
   ・ 石綿障害予防規則(平成17年厚生労働省令第21号)
   ・ 東日本大震災により生じた放射性物質により汚染された土壌等を除染するための業務等に係る
    電離放射線障害防止規則(平成23年厚生労働省令第152号)

第2 細部事項
 1 安衛則関係
  (1) 産業医の定期巡視の頻度(安衛則第15条第1項関係)
   ① 産業医の作業場等の巡視頻度の変更についての事業者の同意は、産業医の意見に基づいて、衛
    生委員会又は安全衛生委員会(以下「衛生委員会等」という。)において調査審議を行った結果を
    踏まえて行うことが必要であること。なお、当該調査審議は、産業医の作業場等の巡視頻度を変
    更することとする一定の期間を定めた上で、当該一定期間ごとに産業医の意見に基づいて行うこ
    と。

   ② 産業医の作業場等の巡視頻度の変更を行う場合は、安衛則第15条第1項第1号及び第2号の情報
    とともに、改正省令により新たに規定された「休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働
    させた場合におけるその超えた時間が1月当たり100時間を超えた労働者の氏名及びその超えた時
    間に関する情報」が、事業者から産業医へ提供されていることが必要であること。

   ③ 産業医の作業場等の巡視頻度の変更は、事業者から産業医に対して、①で定めた一定期間中、
    毎月1回以上、必要な情報が提供されている場合において可能となるものであり、必要な情報が
    提供されなかった場合は、少なくとも毎月1回、産業医の作業場等の巡視を行う必要があること。
     なお、衛生管理者の巡視が週1回以上実施されない場合等、安衛則第15条第1項関係の法令の規
    定に違反している場合も、同様に、少なくとも毎月1回、産業医の作業場等の巡視を行う必要が
    あること。
    
   ④ 安衛則第15条第1項第1号の「衛生管理者が行う巡視の結果」には、巡視を行った衛生管理者の
    氏名、巡視の日時、巡視した場所、安衛則第11条第1項の「設備、作業方法又は衛生状態に有害
    のおそれがあるとき」と判断した場合における有害事項及び講じた措置の内容、その他労働衛生
    対策の推進にとって参考となる事項が含まれること。

   ⑤ 衛生委員会等における調査審議の結果として産業医に提供すべきものとしては、例えば、以下
    の情報が考えられ、事業場の実情に応じて、適切に定める必要があること。
    イ 労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第66条の9に規定する健康への配慮が必要な労働者の
     氏名及びその労働時間数(同条の規定に基づく面接指導の実施又は面接指導に準ずる措置の対
     象となる者は、安衛則52条の8第2項各号に規定する者としている。)
    ロ 新規に使用される予定の化学物質・設備名及びこれらに係る作業条件・業務内容
    ハ 労働者の休業状況

   ⑥ 産業医の作業場等の巡視頻度を変更しない場合においても、事業者は産業医に対して、安衛則
    第15条第1項第1号及び第2号の情報を提供することが望ましいこと。また、事業者から産業医に
    対して情報が提供された場合であっても、産業医は、必要に応じて、他の情報の収集・把握等に
    努め、事業場における課題等に対応すべきであること。

  (2) 健康診断結果に基づく医師等からの意見聴取を行う上で必要となる情報の提供(安衛則第51条の
   2第3項関係)
    「労働者の業務に関する情報」には、労働者の作業環境、労働時間、作業態様、作業負荷の状況、
   深夜業等の回数・時間数等があること。

  (3) 産業医に対する長時間労働者に関する情報の提供(安衛則第52条の2第3項関係)
    新たに事業者から産業医に提供されることとなる安衛則第52条の2第3項に規定する情報は、安衛
   則第52条の3第4項に基づく産業医による労働者に対する面接指導の申出の勧奨のほか、健康相談等
   で活用することを想定したものであること。なお、安衛則第52条の2第2項に基づき労働時間を算定
   し、「1週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間が1月当たり100時間を
   超えた労働者」がいない場合においても、その旨の情報を産業医に対して提供すること。

 2 有機溶剤中毒予防規則等関係
   「労働者の業務に関する情報」には、特殊健康診断の対象となる有害業務以外の業務を含む、労働
  者の作業環境、労働時間、作業態様、作業負荷の状況、深夜業等の回数・時間数等があること。

U 改正告示関係(改正の趣旨及び内容)
  事業場における治療と職業生活との両立支援対策に関する産業医の的確な関与を促進するため、産業
 医の要件に係る研修及び実習における研修科目及び実習科目の「健康管理」に関する範囲に「治療と職
 業生活との両立支援」を追加するものであること。
  なお、本改正告示の内容等とともに産業保健総合支援センター等における治療と職業生活との両立支
 援に関する産業医への研修についても、上記関与の促進に資することから、都道府県労働局においては、
 その周知に努めること。

V その他(治療と職業生活の両立支援に関する産業医の職務)
  昭和63年9月16日付け基発第602号「労働安全衛生規則の一部を改正する省令、ボイラー及び圧力容器
 安全規則の一部を改正する省令及び有機溶剤中毒予防規則等の一部を改正する省令の施行について」に
 おいて、安衛則第14条第1項第6号の労働者の健康管理に関することには、疾病管理等が含まれるとして
 いるが、「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」(平成28年2月23日基発第
 0223第5号等)等を踏まえた治療と職業生活の両立支援についてもこれに含まれること。



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