労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令及び特定化学物質障害予防規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行について

基発1130第4号
平成28年11月30日
都道府県労働局長 殿
厚生労働省労働基準局長

労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令及び特定化学物質障害予防規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行について

 労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令(平成28年政令第343号。以下「改正政令」という。)及び
特定化学物質障害予防規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令(平成28年厚生労働省令第172号。
以下「改正省令」という。)がそれぞれ平成28年11月2日、11月30日に公布され、平成29年1月1日から施行
することとされたところであるが、その改正の趣旨、内容等については、下記のとおりであるので、その
施行に遺漏なきを期されたい。
 併せて、本通達については、別添のとおり、別紙関係事業者等団体の長宛て傘下会員事業者への周知等
を依頼したので了知されたい。
第1 労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令
 1 改正の趣旨
   平成27年に化学工場で複数の労働者(退職者含む。)が膀胱(ぼうこう)がんを発症していることが明
  らかになり、同事業場に対する災害調査において、労働者がオルト−トルイジンに経気道のみならず
  経皮からもばく露していたと示唆された。
   オルト−トルイジンは、顔料、染料等の原材料等として国内の他の事業場においても取り扱われて
  いることから、専門家を招集して化学物質による労働者の健康障害防止に係るリスク評価(以下「リ
  スク評価」という。)を行い、その結果、オルト−トルイジン及びこれを含有する製剤その他の物を
  製造し、又は取り扱う作業について、リスクが高いため健康障害防止措置の導入が必要と評価された
  ところである。
   改正政令は、リスク評価を基に行った専門家による健康障害防止措置内容の検討結果を踏まえ、オ
  ルト−トルイジンについては、労働安全衛生法施行令(昭和47年政令第318号。以下「施行令」という。)
  第22条に規定する健康診断を行うべき有害な業務並びに施行令別表第3に規定する特定化学物質の範
  囲を拡大するため、施行令について所要の改正を行ったものである。

 2 改正の内容及び留意事項
  (1) 施行令の一部改正(改正政令本則関係)
   ア 特定化学物質の追加(施行令別表第3関係)
     特定化学物質の第2類物質として、オルト−トルイジン及びこれを含有する製剤その他の物で、
    厚生労働省令で定めるもの(具体的には第2の2の(1)のア参照)を追加したこと。これにより、当
    該物質を製造し、又は取り扱う場合は、作業主任者の選任、作業環境測定の実施及び特殊健康診
    断の実施を行わなければならないこととなること。
   イ 配置転換後の健康診断を行うべき有害な業務への追加(施行令第22条第2項関係)
     オルト−トルイジン及びこれを含有する製剤その他の物で、厚生労働省令で定めるもの(具体
    的には第2の2の(1)のカ参照)を製造し、又は取り扱う業務を、労働安全衛生法(昭和47年法律第
    57号。以下「法」という。)第66条第2項後段の健康診断の対象業務としたこと。

  (2) 施行期日(改正政令附則第1項関係)
    改正政令は、平成29年1月1日から施行することとしたこと。

  (3) 経過措置(改正政令附則第2項及び第3項関係)
   ア 作業主任者の選任に関する経過措置(改正政令附則第2項関係)
     オルト−トルイジン及びこれを含有する製剤その他の物を製造し、又は取り扱う作業について
    は、平成29年12月31日までの間(施行後1年間)は、作業主任者の選任を要しないこととしたこと。
   イ 作業環境測定に関する経過措置(改正政令附則第3項関係)
     オルト−トルイジン及びこれを含有する製剤その他の物を製造し、又は取り扱う屋内作業場に
    ついては、平成29年12月31日までの間(施行後1年間)は、作業環境測定を行うことを要しないこ
    ととしたこと。

第2 特定化学物質障害予防規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令
 1 改正の趣旨
   改正省令は、改正政令の施行に伴い、また、経皮吸収防止対策を強化するため、特定化学物質障害
  予防規則(昭和47年労働省令第39号。以下「特化則」という。)及び労働安全衛生規則(昭和47年労働
  省令第32号。以下「安衛則」という。)について所要の改正を行ったものである。

 2 改正の内容及び留意事項
  (1) 特化則の一部改正(改正省令第1条関係)
   ア オルト−トルイジン等の「特定第2類物質」への追加(特化則第2条及び別表第1関係)
     オルト−トルイジン及びこれを重量の1%を超えて含有する製剤その他の物(以下「オルト−ト
    ルイジン等」という。)については、リスク評価において、これを製造し、又は取り扱う業務に
    従事する労働者について健康障害のリスクが高いとされたことから、今般の改正により特定化学
    物質に追加したものであること。また、この物質は、高沸点の液体物質ではあるが、ヒトにおけ
    る吸入ばく露又は経皮ばく露による慢性の影響である尿路系の障害(腫瘍等)に加えて、急性の影
    響として、溶血性貧血、メトヘモグロビン血症等(具体的な症状は、頭重、頭痛、めまい、倦(け
    ん)怠感、疲労感、顔面蒼(そう)白、チアノーゼ、心悸(き)亢(こう)進、尿の着色等)が報告され
    ていることを考慮して、大量漏えいによる急性中毒の防止にも対処できるようオルト−トルイジ
    ン等を「特定第2類物質」として規定したこと。
   イ 作業環境測定の実施及びその結果の評価並びにこれらの結果の記録の保存(特化則第36条及び
    第36条の2関係)
     オルト−トルイジン等を製造し、又は取り扱う屋内作業場について、作業環境測定及びその結
    果の評価を行い、これらの結果の記録を30年間保存しなければならないこととしたこと。
   ウ 洗浄設備に係る規定の追加(特化則第24条及び特化則第38条関係)
     化学物質が労働者の皮膚から吸収されること等による健康影響の防止を徹底するため、シャワ
    ー等の洗浄設備の設置に加え、化学物質の飛散等により労働者の身体が汚染された場合、速やか
    にシャワー等の洗浄設備による労働者の身体の洗浄を義務づけることとしたこと。なお、洗浄に
    当たっては、水や石鹸等で皮膚を洗浄するなど、安全データシートに記載されている方法を参考
    に行うこととし、衣服が汚染された場合は、再度身体が汚染されないよう、洗浄の際にあわせて
    更衣を行うべきであるのはもちろんであること。
     また、「クロロホルム等」及び「クロロホルム等以外のものであつて別表第1第37号に掲げる
    物」についても、洗浄設備に係る第38条各項の条文を適用することとしたこと。
   エ 特別管理物質の追加(特化則第38条の3関係)
     オルト−トルイジン等を特別管理物質に追加したこと。
     これに伴い、オルト−トルイジン等については、特化則第38条の3の作業場内掲示、特化則第
    38条の4の作業記録の作成及び記録の30年間保存、特化則第40条第2項の特殊健康診断の結果の記
    録の30年間保存並びに特化則第53条の記録の提出の対象となることに留意すること。
   オ 1,3−プロパンスルトンに係る措置(特化則第38条の19関係)
     1,3−プロパンスルトンについては、コの(エ)に掲げるACGIH(米国産業衛生専門家会議)又
    は日本産業衛生学会が勧告する物質には含まれないが、動物実験の単回皮膚投与において、極め
    て強い発がん性が認められることなどから、保護具の使用による防護対策を一層徹底するため、
    労働者に対し、その使用義務を課すこととしたこと。
   カ オルト−トルイジン等を製造し、又は取り扱う業務に係る特殊健康診断(特化則第39条関係)
     事業者は、オルト−トルイジン等を製造し、又は取り扱う業務に常時従事する労働者(以下
    「業務従事労働者」という。)及びこれらの業務に常時従事させたことのある労働者で、現に使
    用しているもの(以下「配置転換後労働者」という。)に対し、特化則第39条の特殊健康診断を実
    施しなければならないこととしたこと。
     なお、配置転換後労働者は、事業者が過去に当該業務に常時従事させたことのある労働者で、
    現に使用しているものをいい、退職者までを含む趣旨ではないことは、従前のとおりであること。
     また、配置転換後労働者には、本省令の施行日(平成29年1月1日)より前に当該業務に常時従事
    させ、施行日以降に当該業務に従事させていない労働者で、現に使用しているものが含まれるこ
    と。
   キ オルト−トルイジン等に係る特殊健康診断の項目(特化則別表第3及び別表第4関係)
     オルト−トルイジンについては、ヒトに対する尿路系の障害(腫瘍等)、溶血性貧血、メトヘモ
    グロビン血症等を引き起こす可能性が指摘されたことを踏まえ、オルト−トルイジン等の業務従
    事労働者及び配置転換後労働者に対する特殊健康診断の項目の趣旨等については、次のとおりと
    すること。
     (ア) 別表第3(いわゆる「一次健康診断」)関係
      ① 「業務の経歴の調査」は、オルト−トルイジン等を製造し、又は取り扱う業務について
       聴取するものであり、業務従事労働者に対して行う健康診断におけるものに限るものであ
       ること。
        ただし、配置転換後労働者が改正省令の施行日以降に初めて受ける健康診断が、法第66
       条第2項後段に規定する配置転換後健康診断に当たる場合には、当該健康診断の際に「業
       務の経歴の調査」を行うことが望ましいこと。
      ② 「作業条件の簡易な調査」は、労働者のオルト−トルイジンへのばく露状況の概要を把
       握するため、前回の特殊健康診断以降の作業条件の変化、環境中のオルト−トルイジンの
       濃度に関する情報、作業時間、ばく露の頻度、オルト−トルイジンの蒸気の発散源からの
       距離、保護具の使用状況等について、医師が主に当該労働者から聴取することにより調査
       するものであること。このうち、環境中のオルト−トルイジンの濃度に関する情報の収集
       については、当該労働者から聴取する方法のほか、衛生管理者等から作業環境測定の結果
       等をあらかじめ聴取する方法があること。
        なお、この項目については、業務従事労働者に対して行う健康診断におけるものに限る
       ものであるが、配置転換後労働者への取扱いについては、上記①と同様であること。
      ③ 「オルト−トルイジンによる頭重、頭痛、めまい、倦(けん)怠感、疲労感、顔面蒼(そう)
       白、チアノーゼ、心悸(き)亢(こう)進、尿の着色、血尿、頻尿、排尿痛等の他覚症状又は
       自覚症状の既往歴の有無の検査」は、オルト−トルイジンにより生じるこれらの症状の既
       往歴の有無の検査をいうこと。このうち「既往歴」とは、雇入れの際又は配置替えの際の
       健康診断にあってはその時までの症状を、定期の健康診断にあっては前回の健康診断以降
       の症状をいうこと。
        また、喫煙は尿路系腫瘍の原因の一つであることや、喫煙によりオルト−トルイジンに
       ばく露することが知られていることから、オルト−トルイジンによる健康影響やばく露状
       況の評価の参考とするため、喫煙歴についても聴取することが望ましい。
        なお、これらの症状のうち「頭重、頭痛、めまい、倦(けん)怠感、疲労感、顔面蒼(そう)
       白、チアノーゼ、心悸(き)亢(こう)進、尿の着色等の急性の疾患に係る症状」については、
       業務従事労働者に対して行う健康診断におけるものに限るものであること。
      ④ 「頭重、頭痛、めまい、倦(けん)怠感、疲労感、顔面蒼(そう)白、チアノーゼ、心悸(き)
       亢(こう)進、尿の着色、血尿、頻尿、排尿痛等の他覚症状又は自覚症状の有無の検査」は、
       オルト−トルイジンにより生じるこれらの症状の有無の検査をいうこと。なお、これらの
       症状のうち「頭重、頭痛、めまい、倦(けん)怠感、疲労感、顔面蒼(そう)白、チアノーゼ、
       心悸(き)亢(こう)進、尿の着色等の急性の疾患に係る症状」については、業務従事労働者
       に対して行う健康診断におけるものに限るものであること。
      ⑤ 「尿中の潜血検査」は、腎臓、尿管、膀胱(ぼうこう)等の尿路系の障害(腫瘍等)及び溶
       血性貧血を把握するための検査であり、試験紙法によるものをさすこと。
      ⑥ 「尿中のオルト−トルイジンの量の検査」は、医師が必要と認める場合に行う検査であ
       り、オルト−トルイジンのばく露状況を把握するための検査であること。
        なお、オルト−トルイジンは経皮吸収性があり、作業環境測定のみでは労働者のばく露
       状況の把握が不十分であることから、この項目についても、作業条件の簡易な調査、他覚
       症状及び自覚症状の有無の検査等の結果を踏まえて、できるだけ実施することが望ましい
       こと。
        また、オルト−トルイジンの体外への排泄速度を考慮すると、尿の採取時期は、連続す
       る作業日のうちの後半の作業日の作業終了時に行うことが望ましいこと。
        さらに、この項目については、業務従事労働者に対して行う健康診断におけるものに限
       るものであること。
      ⑦ 「尿沈渣(さ)検鏡の検査」と「尿沈渣(さ)のパパニコラ法による細胞診の検査」は、医
       師が必要と認める場合に行う検査であり、いずれも尿路系の障害(腫瘍等)を把握するため
       に行う検査であること。

     (イ) 別表第4(いわゆる「二次健康診断」)関係
      ① 「作業条件の調査」は、労働者のオルト−トルイジンへのばく露状況の詳細について、
       当該労働者、衛生管理者、作業主任者等の関係者から聴取することにより調査するもので
       あること。なお、この項目は、業務従事労働者に対して行う健康診断におけるものに限る
       ものであること。
      ② 「膀胱(ぼうこう)鏡検査」と「腹部の超音波による検査、尿路造影検査等の画像検査」
       は、医師が必要と認める場合に行う検査であり、いずれも尿路系腫瘍を把握するための検
       査であること。
        なお、膀胱(ぼうこう)鏡検査は内視鏡検査の一種であり、膀胱(ぼうこう)鏡には軟性の
       ものと硬性のものがあるところ、いわゆるファイバースコープは、軟性の膀胱(ぼうこう)
       鏡をさしており、膀胱(ぼうこう)鏡検査にはファイバースコープによる検査が含まれるこ
       と。
        また、画像検査には、腹部の超音波による検査や尿路造影検査のほか、造影剤を用いな
       いエックス線撮影による検査等があり、さらに、尿路造影検査の撮影方法としては、エッ
       クス線直接撮影やコンピュータ断層撮影(CT)があること。
      ③ 「赤血球数、網状赤血球数、メトヘモグロビンの量等の赤血球系の血液検査」は、医師
       が必要と認める場合に行う検査であり、オルト−トルイジンによる溶血性貧血、メトヘモ
       グロビン血症等の血液学的異常を把握するための検査であること。
        なお、これらの症状は急性のものであることから、この項目は、業務従事労働者に対し
       て行う健康診断におけるものに限るものであること。
     (ウ) 「医師が必要と認める場合」に行う検査の実施の要否の判断について
        オルト−トルイジンについては、一次健康診断及び二次健康診断のそれぞれにおける項
       目に「医師が必要と認める場合」に行う検査を規定したが、それぞれの検査の実施の要否
       は、次により医師が判断すること。また、この場合の「医師」は、健康診断を実施する医
       師、事業場の産業医、産業医の選任義務のない労働者数50人未満の事業場において健康管
       理を行う医師等があること。
      ① 一次健康診断における「医師が必要と認める場合」に行う検査
        一次健康診断における業務の経歴の調査、作業条件の簡易な調査、他覚症状及び自覚症
       状の既往歴の有無の検査、他覚症状及び自覚症状の有無の検査の結果、前回までの当該物
       質に係る健康診断の結果等を踏まえて、当該検査の実施の要否を判断すること。
      ② 二次健康診断における「医師が必要と認める場合」に行う検査
        一次健康診断の結果、前回までの当該物質に係る健康診断の結果等を踏まえて、当該検
       査の実施の要否を判断すること。
   ク 法第66条第2項後段の特殊健康診断の対象物に係る裾切値(特化則別表第5関係)
     改正政令による施行令第22条第2項の改正により、法第66条第2項後段の特殊健康診断の対象業
    務として、オルト−トルイジン又はこれを含有する製剤その他の物で、厚生労働省令で定めるも
    のを製造し、又は取り扱う業務が規定されたことに伴い、これらの物に係る裾切値を1%とした
    こと。
   ケ 特定化学物質健康診断結果報告書の様式(特化則様式第3号(裏面)関係)
     オルト−トルイジン等を製造し、又は取り扱う業務を特殊健康診断の対象業務として規定した
    ことに伴い、特化則様式第3号について所要の改正を行ったこと。
   コ 保護衣等の規定の追加(特化則第2条の2特化則第12条の2特化則第44条及び特化則第45条関
    係)
     特定化学物質の第1類物質及び第2類物質が重度の慢性毒性を及ぼす物質であることに鑑み、保
    護具等による防護対策を一層徹底するため、以下の内容及び趣旨による関連規定の改正を行った
    こと。
    (ア) クロロホルム等及びクロロホルム等以外のものであって別表第1第37号に掲げる物について、
      特化則第12条の2を改正し、特化則第44条及び第45条を適用することとしたこと。
    (イ) 従来特化則第2条の2の規定による適用除外の対象とされていた業務のうち、日本産業衛生
      学会において、皮膚と接触することにより、経皮的に吸収される量が全身への健康影響また
      は吸収量からみて無視できない程度に達することがあると考えられると勧告がなされている
      物質若しくはACGIHにおいて皮膚吸収があると勧告がなされている物質及びこれらを含有する
      製剤その他の物を製造し、若しくは取り扱う作業又はこれらの周辺で行われる作業であって、
      皮膚に障害を与え、又は皮膚から吸収されることにより障害をおこすおそれがあるものにつ
      いては、保護衣等に係る特化則第44条及び第45条の規定の対象とすることとしたこと。例え
      ば、次の物質を製造し、若しくは取り扱う作業が対象となること。
      ・クロロホルム
      ・四塩化炭素
      ・1,4−ジオキサン
      ・ジクロロメタン(別名二塩化メチレン)
      ・ジメチル−2,2−ジクロロビニルホスフェイト(別名DDVP)
      ・スチレン
      ・1,1,2,2−テトラクロロエタン(別名四塩化アセチレン)
      ・テトラクロロエチレン(別名パークロルエチレン)
      ・ナフタレン
    (ウ) 特化則第44条第1項の改正は、「製造する作業」も対象であることを明確にしたものであり、
      従来の内容と変更はないこと。なお、本条は、特定化学物質の飛散等により汚染されるおそ
      れがある作業が対象となるものであり、例えば密閉する設備内で製造する場合におけるばく
      露のない作業を含む趣旨ではないこと。
    (エ) 保護衣等を備え付けているものの、それらが使用されていない場合が考えられるため、保
      護具の使用義務に係る特化則第44条第2項及び第3項を新たに規定したものであること。対象
      物質は、第1類物質及び第2類物質のうち、日本産業衛生学会において、皮膚と接触すること
      により、経皮的に吸収される量が全身への健康影響または吸収量からみて無視できない程度
      に達することがあると考えられると勧告がなされている物質又はACGIHにおいて皮膚吸収があ
      ると勧告がなされている物質及びこれらを含有する製剤その他の物としたこと。具体的には、
      次の物質が該当すること。
      【第1類物質】
       ジクロルベンジジン及びその塩、塩素化ビフェニル(別名PCB)、オルト−トリジン及びそ
      の塩、ベリリウム及びその化合物、ベンゾトリクロリド
      【第2類物質】
       アクリルアミド、アクリロニトリル、アルキル水銀化合物(アルキル基がメチル基又はエ
      チル基である物に限る。)、エチレンイミン、オルト−トルイジン、オルト−フタロジニト
      リル、クロロホルム、シアン化カリウム、シアン化水素、シアン化ナトリウム、四塩化炭素、
      1,4−ジオキサン、3,3′−ジクロロ−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、ジクロ
      ロメタン(別名二塩化メチレン)、ジメチル−2,2−ジクロロビニルホスフェイト(別名DDV
      P)、1,1−ジメチルヒドラジン、臭化メチル、水銀及びその無機化合物(硫化水銀を除く。)、
      スチレン、1,1,2,2−テトラクロロエタン(別名四塩化アセチレン)、テトラクロロエ
      チレン(別名パークロルエチレン)、トリレンジイソシアネート、ナフタレン、ニトログリコ
      ール、パラ−ニトロクロロベンゼン、弗(ふっ)化水素、ベンゼン、ペンタクロロフェノール
      (別名PCP)、シクロペンタジエニルトリカルボニルマンガン又は2−メチルシクロペンタジ
      エニルトリカルボニルマンガン、沃(よう)化メチル、硫酸ジメチル
    (オ) 特化則第44条第2項の対象作業に関して、「皮膚に障害を与え、又は皮膚から吸収される
      ことにより障害をおこすおそれがあるもの」には、特定化学物質に直接触れる作業、特定化
      学物質を手作業で激しくかき混ぜることにより身体に飛散することが常態として予想される
      作業等が含まれること。一方で、突発的に特定化学物質の液体等が飛散することがある作業、
      特定化学設備に係る作業であって特定化学設備を開放等しないで行う作業を含むものではな
      いこと。
       なお、本条はばく露の高い作業を対象とするものであることから、保護具によるばく露防
      止を義務づけたものであるが、それに加えて、効果の確認された塗布剤を補助的な役割とし
      て用いることは差し支えないこと。
    (カ) 皮膚障害防止用保護具に係る規格として、日本工業規格T8115(化学防護服)、日本工業規格
      T8116(化学防護手袋)、日本工業規格T8117(化学防護長靴)、日本工業規格T8147(保護めがね)
      等があるので、これを参考に保護具を選択・使用されたいこと。
       なお、本条の「不浸透性」とは、有害物等と直接接触することがないような性能を有する
      ことを指すものであり、保護衣、保護手袋等の労働衛生保護具に係る日本工業規格における
      「浸透」しないこと及び「透過」しないことのいずれも含む概念であること。
  (2) 安衛則の一部改正(改正省令第2条関係)
    皮膚障害防止用の保護具に係る規定の変更(安衛則第594条関係)
    本条の改正は、本条の範囲をがん等も含めた健康障害全般を対象としたものであること。

  (3) 作業環境測定法施行規則(昭和50年労働省令第20号)の適用関係
    オルト−トルイジンが特定化学物質に追加されることにより、オルト−トルイジン等を製造し、
   又は取り扱う屋内作業場が作業環境測定法施行規則(以下「作環則」という。)別表第3号の作業場
   の種類に追加されること。

  (4) 施行期日(改正省令附則第1条関係)
    改正省令は、平成29年1月1日から施行することとしたこと。

  (5) 経過措置(改正省令附則第2条から第6条まで関係)
   ア 計画の届出に関する経過措置(改正省令附則第2条関係)
     安衛則別表第7に定める以下の設備等の設置若しくは移転又は主要構造部分の変更を平成29年3
    月31日までの間(施行後3月)に行う場合には、安衛則第86条第1項及び法第88条第1項の規定に基
    づく計画の届出を要しないこととしたこと。
    (ア) オルト−トルイジン等を製造する設備
    (イ) オルト−トルイジン等を製造し、又は取り扱う特定化学設備及びその附属設備
    (ウ) オルト−トルイジン等の蒸気等が発散する屋内作業場に設ける発散抑制設備
   イ 様式に関する経過措置(改正省令附則第3条関係)
     改正省令の施行の際、現に存する改正省令による改正前の様式による報告書の用紙は、当分の
    間、必要な改訂をした上、使用することができることとしたこと。
   ウ 第2類物質の製造等に係る設備に関する経過措置(改正省令附則第4条関係)
     オルト−トルイジン等を製造し、又は取り扱う設備で、改正省令の施行の際、現に存するもの
    については、平成29年12月31日までの間(施行後1年間)は、改正省令による改正後の特化則(以下
    「新特化則」という。)第4条の規定は、適用しないこととしたこと。
   エ 特定化学設備に関する経過措置(改正省令附則第5条関係)
     オルト−トルイジン等を製造し、又は取り扱う特定化学設備で、改正省令の施行の際、現に存
    するものについては、平成29年12月31日までの間(施行後1年間)は、新特化則第13条から第17条
    まで、第18条の2第19条第2項及び第3項第19条の2から第20条まで、第31条並びに第34条の
    規定は、適用しないこととしたこと。
   オ 出入口に関する経過措置(改正省令附則第6条関係)
     オルト−トルイジン等を製造し、又は取り扱う特定化学設備を設置する屋内作業場及び当該作
    業場を有する建築物であって、改正省令の施行の際、現に存するものについては、平成29年12月
    31日までの間(施行後1年間)は、新特化則第18条の規定は、適用しないこととしたこと。
   カ 警報設備等に関する経過措置(改正省令附則第7条関係)
     オルト−トルイジン等を製造し、若しくは取り扱う特定化学設備を設置する作業場又は当該作
    業場以外の作業場でオルト−トルイジン等を合計100リットル以上取り扱う作業場で、改正省令
    の施行の際、現に存するものについては、平成29年12月31日までの間(施行後1年間)は、新特化
    則第19条第1項及び第4項の規定は、適用しないこととしたこと。
   キ 床に関する経過措置(改正省令附則第8条関係)
     オルト−トルイジン等を製造し、又は取り扱う特定化学設備を設置する屋内作業場で改正省令
    の施行の際、現に存するものについては、平成29年12月31日までの間(施行後1年間)は、新特化
    則第21条の規定は、適用しないこととしたこと。

 3 関係通達の一部改正
   「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令及び労働安全衛生規則等の一部を改正する省令の施
  行について」(平成27年9月30日付け基発0930第9号)の一部を次のように改正する。
    記の第2の2の(2)のキの(ク)中「特化則第38条の20第3項第2号の「有効な呼吸用保護具」とは、
   各部の破損、脱落、弛(たる)み、湿気の付着、変形、耐用年数の超過等保護具の性能に支障をきた
   していない状態となっており、かつ、100以上の防護係数が確保できるものであり、具体的には、
   粒子捕集効率が99.97%以上の全面形の面体を有する電動ファン付き呼吸用保護具、粒子捕集効率
   が99.97%以上の半面形の面体を有する電動ファン付き呼吸用保護具のうち、漏れ率が1%以下(電
   動ファン付き呼吸用保護具の規格(平成26年厚生労働省告示第455号)で定める漏れ率による等級が
   S級又はA級)であって、(ケ)の方法により、労働者ごとに防護係数が100以上であることが確認され
   たものが含まれること。」を「特化則第38条の20第3項第2号の「有効な呼吸用保護具」とは、各部
   の破損、脱落、弛(たる)み、湿気の付着、変形、耐用年数の超過等保護具の性能に支障をきたして
   いない状態となっており、かつ、100以上の防護係数が確保できるものであり、(ケ)の方法により、
   労働者ごとに防護係数が100以上であることが確認されたものが含まれること。ただし、電動ファ
   ン付き呼吸用保護具の規格(平成26年厚生労働省告示第455号)に定める粒子捕集効率が99.97%以上
   かつ漏れ率が1%以下のものに限っては、(ケ)の方法により労働者ごとに防護係数が100以上である
   ことを確認することまでは要しない。」に、記の第2の2の(2)のキの(ケ)中「(ク)の労働者ごとの
   防護係数の確認は、当該確認に係る電動ファン付き呼吸用保護具を特化則第38条の20第3項の規定
   に基づき、当該労働者に初めて使用させるとき及びその後6月以内ごとに1回、定期に、日本工業規
   格T8150で定める方法により防護係数を求めることにより行うこと。なお、事業者は、当該確認を
   行ったときは、労働者の氏名、呼吸用保護具の種類、確認を行った年月日及び防護係数の値を記録
   し、これを30年間保存すること。」を「(ク)の労働者ごとの防護係数の確認は、当該労働者に初め
   て使用させるとき及びその後6月以内ごとに1回、定期に、日本工業規格T8150で定める方法により
   防護係数を求めることにより行うこと。なお、事業者は、当該確認を行ったときは、労働者の氏名、
   呼吸用保護具の種類、確認を行った年月日及び防護係数の値を記録し、これを30年間保存すること。」
   に改正する。
    記の第2の2の(9)のア中、「法第88条第2項において準用する同条第1項の規定」を「法第88条第1
   項の規定」に改正する。




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