安全衛生情報センター
「電離放射線障害防止規則の一部を改正する省令」(平成25年厚生労働省令第57号。以下「改正省令」 という。)及び「事故由来廃棄物等処分業務特別教育規程」(平成25年厚生労働省告示第140号。以下「特 別教育規程」という。)が本日公布され、一部を除き、同年7月1日から施行し、又は適用することとされ たところである。 今般、除染の進展に伴い、平成23年3月11日に発生した東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発 電所の事故により放出された放射性物質(以下「事故由来放射性物質」という。)により汚染された廃棄物 及び土壌(以下「事故由来廃棄物等」という。)の処分の業務が本格的に実施される見込みとなっており、 当該業務に従事する労働者の放射線障害防止対策が必要であることから、改正省令及び特別教育規程を制 定し、当該業務の性質に応じ、労働者の放射線障害を防止するために必要な措置を規定したものである。 また、事故由来廃棄物等の処分の業務における労働者の放射線障害防止対策をより一層的確に推進する ため、電離放射線障害防止規則(昭和47年労働省令第41号。以下「電離則」という。)に規定する措置やそ の他の事業者が講ずべき措置、及び労働安全衛生関係法令の中で重要なものを一体的に示すことを目的と した「事故由来廃棄物等処分業務に従事する労働者の放射線障害防止のためのガイドライン」(平成25年 4月12日付け基発0412第2号。以下「処分業務ガイドライン」という。)を策定したところである。 改正省令及び特別教育規程の趣旨、内容については、下記のとおりであるので、現場の実態に即した放 射線障害防止対策が講じられるよう、処分業務ガイドラインと合わせて事業者に対する周知及び指導を行 い、これらの運用に遺漏なきを期されたい。
第1 改正の趣旨 今般、除染の進展に伴い、事故由来廃棄物等の処分の業務が本格的に実施される見込みとなってお り、当該業務に従事する労働者の放射線障害防止対策が必要となっている。 事故由来放射性物質により汚染された土壌等の除染等の業務などに従事する労働者の放射線障害防 止については、放射線源が点在している上に、主として労働者が屋外で作業を行うことから、「東日 本大震災により生じた放射性物質により汚染された土壌等を除染するための業務等に係る電離放射線 障害防止規則」(平成23年厚生労働省令第152号。以下「除染電離則」という。)により規定している ところである。一方、事故由来廃棄物等の処分の業務については、放射線源が一定の場所に管理可能 な状態で存在し、かつ、主として屋内で作業が行われることから、電離則を適用している。 改正前の電離則においても、放射性物質の取扱い、貯蔵、焼却等に関し、一定の措置が規定されて いるが、事故由来廃棄物等の量が非常に多く、施設の規模が大きいこと、事故由来廃棄物等の破砕や 埋立ての作業があること、線量当量率が高い地域における業務があることなどの事故由来廃棄物等の 処分の業務の特性に応じた労働者の放射線障害防止措置を規定する必要があるため、電離則を改正す るとともに、特別教育規程を制定したものである。 第2 細部事項 1 除染電離則との関係(附則第6条関係) (1) 改正省令附則第6条による除染電離則の改正により、除染電離則第2条第7項に規定する「除染等 業務」から、電離則第41条の3に規定する事故由来廃棄物等の処分の業務(以下「事故由来廃棄物等 処分業務」という。)を行う事業場(以下「処分事業場」という。)において行う業務が除かれたた め、処分事業場内で行われる土壌等の除染等の業務や除去土壌、汚染廃棄物の収集、運搬、保管な どの業務については除染電離則の適用はなく、電離則の適用を受けること。 (2) 改正省令附則第6条による除染電離則の改正により、除染電離則第2条第8項に規定する「特定線 量下業務」から、労働安全衛生法施行令(昭和47年政令第318号)別表第2に掲げる放射線業務が除か れたため、事故由来放射性物質により空間線量率が2.5マイクロシーベルト毎時を超える場所にお ける業務のうち、同表に掲げる放射線業務については「特定線量下業務」に該当せず、除染電離則 第2条第7項に規定する「除染等業務」を除き、電離則の適用を受けること。 2 総則(第1章関係) 施設等における線量の限度(第3条の2関係) ア 第3条の2第1項における「1週間につき1ミリシーベルト」は、国際放射線防護委員会(ICRP)19 90年勧告の国内制度への取り入れに関する放射線審議会の意見具申において、施設を設計する基 準として示されたものを規定したものであること。 1週間につき1ミリシーベルトとは、週当たりの労働時間が40時間であることを前提にすると、 25マイクロシーベルト毎時に相当すること。この基準を超えないようにするためには、少なくと も空気中の放射性物質の濃度が第3条第3項に定める限度を超えない必要があること。 なお、本条における線量の限度は、労働者が常時立ち入る場所に関するものであり、破砕等設 備、焼却炉等の機械の内部や、事故由来廃棄物等取扱施設、貯蔵施設、埋立施設のうち、専ら保 守点検作業や修繕作業のときに立ち入る場所には適用されないこと。 イ 除染特別地域等(「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発 電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法」(平成2 3年法律第110号)第25条第1項に規定する除染特別地域又は同法第32条第1項に規定する汚染状況 重点調査地域をいう。)に処分事業場を設置する場合には、事故由来廃棄物等取扱施設、貯蔵施 設、埋立施設のうち、労働者が常時立ち入る場所については、周囲の環境からの放射線によるも のを含めた実効線量が本条の基準を超えないよう、遮蔽体の設置等の措置を講じる必要があるこ と。 ウ 本条は、遮蔽体の設置等により、実効線量を限度以下にすることを義務付けたものであるが、 その趣旨を明確にするため、所要の改正を行ったものであること。 エ 本条第1項の「設ける等」の「等」には、放射線源と労働者が常時立ち入る場所との間に十分 な距離を置くことが含まれること。 3 放射性物質(事故由来放射性物質を除く。)に係る汚染の防止(第4章第1節関係) (1) 退去者の汚染検査及び持出し物品の汚染検査(第31条及び第32条関係) ア 第31条は労働者の身体及び装具の汚染検査について、第32条は持出し物品の汚染検査について 規定したものであるが、第22条の放射性物質取扱作業室及び第41条の4の事故由来廃棄物等取扱 施設のみならず、他の施設又は設備の保守点検作業等においても一定の汚染が生じるおそれがあ ることから、汚染検査が実施されずに汚染が拡大することのないよう、汚染検査場所の設置場所 を一定の汚染の可能性がある管理区域の出口に改めたものであること。 イ 第31条第1項の汚染検査場所には、汚染検査のための放射線測定器を備え付けるほか、洗浄設 備等汚染の除去のための設備、使用済みの防じんマスク等の汚染廃棄物の一時保管のための設備 を設けること。 ウ 洗身等によっても身体の汚染が別表第3に定める限度(40ベクレル毎平方センチメートル)以下 にできない者については、第44条第1項第4号の規定により医師の診察を受けさせる必要があるこ とから、医師の診察を受けさせる場合においては、当該者を管理区域から退出させて差し支えな いこと。 (2) 貯蔵施設及び焼却炉(第33条及び第35条関係) 第33条に規定されていた「汚染物」については、汚染の除去で使用した布など、第2条第2項各号 に規定する数量及び濃度に該当しない物であり、貯蔵施設において貯蔵を行うことは想定されない ことから、第33条の基準に適合する貯蔵施設に貯蔵しなければならない物から除いたものであるこ と。今回の改正は、第33条の規定と第37条の規定の整合性を確保するため、規定の整理を行ったも のであること。 (3) 保護具(第38条関係) 本条は、汚染の除去の作業と緊急作業に関して、呼吸用保護具の備付けと使用を規定したもので あるが、これらの作業のみならず、施設又は設備の保守点検作業等においても第3条第3項の限度を 超えて汚染された空気を吸入する作業が想定されるため、このような作業において呼吸用保護具が 使用されずに労働者が被ばくすることのないよう、呼吸用保護具の備付けと使用が必要な作業の範 囲を改めたものであること。 4 事故由来放射性物質に係る汚染の防止(第4章第2節関係) (1) 事故由来廃棄物等処分事業場の境界の明示(第41条の3関係) ア 本条は、関係労働者以外の不要な被ばくを防止するため、処分事業場の境界を明示することを 規定したものであること。処分事業場の「境界」は、いわゆる敷地境界である必要はなく、事故 由来廃棄物等の処分の作業に必要な場所の境界として差し支えないこと。 イ 「事故由来廃棄物等」には、除染電離則第2条第7項第2号イの除去土壌、及び同号ロの汚染廃 棄物のほか、これらの物の処分の過程における濃縮等により、放射性セシウム以外の放射性同位 元素の数量及び濃度が第2条第2項に規定する値を超えた物が含まれること。 ウ 事故由来廃棄物等の「処分」には、最終処分(埋立て)、中間貯蔵、中間処理(選別、破砕、圧 縮、濃縮、焼却等)及びこれらに関連する施設又は設備の保守点検作業等が含まれること。また、 上下水道施設において発生した事故由来廃棄物等に該当する汚泥等や、焼却施設において焼却し た一般廃棄物や産業廃棄物の灰であって、焼却の結果として1万ベクレル毎キログラムを超えた ものを単に貯蔵する場合(遠隔操作等により労働者が直接触れない方法で容器に封入する場合を 含む。)は、事故由来廃棄物等の処分を目的としていないため、本条の「処分」には含まれず、 第4章第1節の規定が適用されること。 (2) 事故由来廃棄物等取扱施設(第41条の4及び第41条の5関係) ア 第41条の5第1項各号で規定する材料、仕上げ及び構造については、トラックや車両系建設機械 の入退出を前提とする必要があること。なお、事故由来放射性物質で支配的な核種である放射性 セシウムは、沸点が常温を著しく超え、かつ、常温では蒸気圧は極めて低いことから、気体に関 する規定は設けていないこと。 イ 第41条の5第2項の「粉じんの飛散を抑制する措置」には、集塵機付きの局所排気装置の設置、 排水が発生しない程度の水の噴霧が含まれること。なお、事故由来廃棄物等処分業務における空 気中の放射性セシウムの濃度は、放射性セシウムが最大限に飛散すると仮定した場合でも、別表 第1に規定する空気中の放射性セシウムの濃度と比較して十分に小さいことから、厳密な密閉構 造は求めないこと。 ウ 第41条の5第3項は、トラック等が入退出するなど施設の開口部が大きいため、開口部が開放さ れた状態になることを防止し、かつ、二重扉の間で汚染検査を実施すること等により、汚染の拡 大の防止を図る趣旨であること。なお、「二重扉を設ける等」の「等」には、事故由来廃棄物取 扱施設と連結された仮設テント等に、遮水シート等の汚染の拡大を防止できる材料で作られ、か つ、開閉が可能な物を設置することや、開口部を開放した場合に施設外部から施設内部への気流 の流れを維持できる排気装置を設置することが含まれること。 (3) 破砕等設備(第41条の6関係) ア 本条は、事故由来廃棄物等の破砕等を行う際に、労働者が事故由来廃棄物等にばく露すること を防止し、かつ、周囲に汚染が拡大することを防止するため、設備の密閉性に係る要件を規定し たものであること。設備の周囲に粉じんが飛散するおそれがあるなど、本条の要件に適合しない 場合には、第41条の4の事故由来廃棄物等取扱施設の中に破砕等設備を設置する必要があること。 イ 「破砕等設備」には、付属する配管や接合部が含まれること。 ウ 「気体が漏れるおそれのない構造」、「粉じんが飛散するおそれのない構造」については、給 排気系統以外の部分から、それぞれ気体が漏れ、又は粉じんが飛散するおそれのないことを求め る趣旨であり、「液体が漏れるおそれのない構造」については、給排水系統以外の部分から液体 が飛散するおそれのないことを求める趣旨であること。 (4) ベルトコンベア等の運搬設備(第41条の7関係) 第41条の7第2項の「ベルトコンベア等の運搬設備」の「等」には、天井クレーンが含まれること。 (5) 埋立施設(第41条の8関係) ア 事故由来廃棄物等を埋立てることにより中間貯蔵することは、「貯蔵」ではなく、「埋立て」 に該当すること。 イ 本条は、第37条第1項の容器に密封され、又は同項ただし書の措置を講じた事故由来廃棄物等 を埋め立てることを前提とした規定であり、これらの措置を講じずに事故由来廃棄物等を埋め立 てるときは、事故由来廃棄物等取扱施設に係る要件を満たした施設において実施する必要がある こと。 なお、密封されていない除去土壌を埋め立てる場合における粉じんの飛散を防止する措置につ いては、空気中の放射性セシウムの濃度は、最大限安全側の仮定をおいた試算結果でも、別表第1 に定める空気中の放射性物質の濃度と比較して十分に小さいことから、厳密な密閉構造は求めら れず、ダンピングを行うときのみ仮設テント等の天井及び壁面を有する場所において作業を行い、 汚染されていない覆土等を行った後は、仮設テント等を除去し、又は他の場所に移設することも 可能であること。ただし、この場合、汚染の拡大防止のため、コンクリートピットや遮水工等が 必要となること。 (6) 準用(第41条の9関係) 準用に係る読替えについては、別紙1を参照すること。 ア 飛来防止設備等(第26条関係) 第26条は、放射性物質の飛沫又は粉末が労働者の身体又は装具に付着することを防止する措置 を規定したものであるが、事故由来廃棄物等処分業務については、作業の性質上、付着を防止す る設備を設けることは想定されないことから、一律に保護具の使用を義務付けたものであること。 イ 事故由来廃棄物等取扱施設内の汚染検査等(第29条関係) ① 第29条は、放射性物質取扱作業室内の天井、床等について定期的な汚染検査の実施を規定し たものであるが、事故由来廃棄物等取扱施設については、その規模が大きく、労働者が手を伸 ばしても届かない高さの天井、壁等が想定されることから、当該施設の天井、壁等のうち、通 常の作業時に労働者の触れるおそれがない部分については、汚染検査の対象から除外したこと。 ② 検査の実施については、壁1面単位、設備単位で、最も汚染されやすいと見込まれる箇所を1、 2点選び、1月以内ごとに1回検査すれば足りること。 ウ 持出し物品の汚染検査(第32条関係) ① 車両の汚染検査については、二重扉等の間で行うことを想定していること。 ② 除去土壌又は汚染廃棄物を運搬した車両については、荷下ろし場所において、荷台その他の 汚染された箇所の汚染の除去及び汚染検査を行うことが望ましいが、それが困難な場合には、 第41条の9において準用する第37条に定める飛散防止の措置を講じた上で、汚染検査場所に戻 り、そこで汚染検査を行うこと。 ③ 第2項の事故由来廃棄物等の処分のための施設とは、処分事業場内に設置された事故由来廃 棄物等取扱施設、破砕等設備、焼却炉、貯蔵設備、埋立施設、ベルトコンベア等の運搬設備を いうものであること。また、同項の廃棄のための施設には、処分事業場以外の廃棄のための施 設が含まれること。 エ 排気又は排液の施設(第34条関係) 排気に係る施設には、全体換気装置、局所排気装置、集じん機(バグフィルター)及び付属する 配管が含まれること。また、排液に係る施設には、排液タンク、排液処理設備及び付属する配管 が含まれること。 オ 焼却炉(第35条関係) ① 「焼却炉」には、炉と一体となった運搬設備、給排気装置及び付属する配管も含まれること。 ② 第1項の「気体がもれるおそれがなく」とは、給排気系統以外の部分から汚染された気体が 漏れるおそれがないことを求める趣旨であること。 カ 容器(第37条関係) ① 事故由来廃棄物等は、固体状であると想定されること、また、それに含まれる放射性同位元 素の大部分はセシウム134又はセシウム137であることから、第37条第4項は準用していないこ と。 ② 第1項ただし書の「容器に入れることが著しく困難なもの」には、大型の機械や、容器の大 きさを超える伐木、解体物又は瓦礫が含まれること。 ③ 「汚染の広がりを防止するための有効な措置」には、荷台が密閉構造となっているトラック を用いて運搬すること、トラックの荷台全体を遮水シートで梱包して運搬することが含まれる こと。 キ 保護具(第38条関係) ① 第1項の「有効な呼吸用保護具」は、次に掲げる作業の区分及び事故由来廃棄物等の放射能 濃度の区分に応じた捕集効率を持つ呼吸用保護具又はこれと同等以上のものをいうこと。
放射能濃度 200万Bq/kg超 |
放射能濃度 50万Bq/kg超 200万Bq/kg以下 |
放射能濃度 50万Bq/kg以下 |
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高濃度粉じん作業(粉じん濃度10mg/m3超の場所における作業) | 捕集効率99.9%以上(全面型) | 捕集効率95%以上 | 捕集効率80%以上 |
高濃度粉じん作業以外の作業(粉じん濃度10mg/m3以下の場所における作業) | 捕集効率95%以上 | 捕集効率80%以上 |
② 防じんマスクの捕集効率については、200万ベクレル毎キログラムを超える事故由来廃棄物 等を取り扱う作業であって、粉じん濃度が10ミリグラム毎立方メートルを超える場所における 作業を行う場合、内部被ばく線量を1年につき1ミリシーベルト以下とするため、漏れを考慮し ても、50以上の防護係数を期待できる捕集効率99.9%以上の全面型防じんマスクの着用を義務 付けたものであること。 ③ 50万超200万ベクレル毎キログラム以下の事故由来廃棄物等を取り扱う作業であって、粉じ ん濃度が10ミリグラム毎立方メートルを超える場所における作業を行う場合、内部被ばく線量 を1年につき1ミリシーベルト以下とするため、漏れを考慮しても、7以上の防護係数を期待で きる捕集効率95%以上の半面型防じんマスクの着用を義務付けたものであること。 ④ 50万超200万ベクレル毎キログラム以下の事故由来廃棄物等を取り扱う作業又は粉じん濃度 が10ミリグラム毎立方メートルを超える場所における作業のいずれかに該当するものを行う場 合にあっては、十分な防護を実現するため、捕集効率80%以上の防じんマスクの着用を義務付 けたものであること。 ⑤ 50万ベクレル毎キログラムを超える事故由来廃棄物等を取り扱うことがない作業であって、 かつ、粉じん濃度が10ミリグラム毎立方メートル以下の場所における作業における内部被ばく 線量は、最大でも1年につき0.15ミリシーベルト程度であるため、防じんマスクを使用する必 要はないこと。ただし、じん肺の予防の観点から定められている粉じん障害防止規則(昭和54 年労働省令第18号)第7条又は第27条の基準に該当しない作業(草木や腐葉土等の取扱い等)であ っても、事故由来廃棄物等の経口摂取を防止するため、不織布製マスクを使用すること。 ④ 液体状の事故由来廃棄物等を取り扱う場合は、防じんマスクのフィルターとしてRL又はDLを 使用すること。気体状(ガス状)の事故由来廃棄物等を扱う場合には、ガスの種類に応じた防じ ん機能付き吸収缶を使用すること。 ⑤ 放射能濃度の判定の方法については、作業環境測定基準(昭和51年労働省告示第46号)第9条 に規定する測定のほか、処分業務ガイドラインの別紙1に規定する方法があること。 ⑥ 高濃度粉じん作業に該当するか否かの判断については、次のとおりとすること。 (ア) 容器に密封されていない事故由来廃棄物等を乾燥した状態で取り扱う作業、事故由来廃棄 物等の破砕、選別、圧縮、濃縮、焼却等を行うための設備の内部に立ち入る作業について は、粉じん濃度が10ミリグラム毎立方メートルを超え、高濃度粉じん作業に該当するもの とみなすこと。 (イ) (ア)にかかわらず、作業中に粉じん濃度の測定を行った場合には、その測定結果によって 高濃度粉じん作業に該当するか否かを判断すること。粉じん濃度の判定の方法については、 処分業務ガイドラインの別紙2に規定する方法があること。 ク 保護衣等(第39条関係) @ 第1項の「有効な保護衣、手袋又は履物」は、次に掲げる作業の区分及び事故由来廃棄物等 の放射能濃度の区分に応じた保護具又はこれと同等以上のものをいうこと。
放射能濃度 200万Bq/kg超 |
放射能濃度 50万Bq/kg超200万Bq/kg以下 |
放射能濃度 50万Bq/kg以下 |
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高濃度粉じん作業(粉じん濃度10mg/m3超の場所における作業) | 長袖の衣服の上に二重の密閉型全身化学防護服、綿手袋の上に二重のゴム手袋、ゴム長靴 | 長袖の衣服の上に密閉型全身化学防護服、綿手袋の上にゴム手袋、ゴム長靴 | 長袖の衣服、綿手袋、ゴム長靴 |
高濃度粉じん作業(粉じん濃度10mg/m3以下の場所における作業) | 長袖の衣服の上に密閉型全身化学防護服、綿手袋の上にゴム手袋、ゴム長靴 | 長袖の衣服、綿手袋の上にゴム手袋、ゴム長靴 | 長袖の衣服、綿手袋、ゴム長靴 |
② 事故由来廃棄物等は、水分を含んでいることが多く、汚染の人体や衣服への浸透を防止する ため、また、汚染した場合の汚染の除去を容易にするため、不浸透性の素材による靴の着用を 義務付けたものであること。 ③ 設備の内部の保守点検作業等で、放射能濃度200万ベクレル毎キログラムを超える事故由来 廃棄物等による全身の汚染が見込まれる場合は、陽圧型又は気密型の全身化学防護服(エアラ インスーツ等)の使用が望ましいこと。 ④ 汚染水の処理等、事故由来放射性物質に汚染された液体を取り扱う作業では、フード付きの 防水具を防護服の上に使用すること。 5 除染特別地域等における特例(第41条の10関係) (1) 容器及び事故由来廃棄物等取扱施設(第41条の10第1項関係) ア 第41条の9において準用する第37条の規定(容器の使用)は、除去土壌を取り扱う労働者の身体 の汚染の防止及び汚染の拡大の防止を目的としたものであるため、遠隔操作の機械を使用する措 置や、粉じんの発散及び飛散を抑制する措置を講じるとともに、汚染の拡大を防止するための措 置が適切に実施されていることを確認するため、1月以内ごとに、事故由来放射性物質の表面密 度の測定を実施し、汚染の拡大が認められた場合には、埋立施設の周囲の平均的な表面汚染の程 度と同等以下(当該表面汚染の程度が電離則別表第3に掲げる限度を超えない場合には、当該限度 以下)になるまで汚染を除去する措置を講じたときは、容器を使用する義務の対象から除外した こと。 イ 第41条の9において準用する第41条の5の規定(事故由来廃棄物等取扱施設)は、事故由来廃棄物 等取扱施設の外に汚染が拡大することを防止することを目的としたものであるため、粉じんの発 散及び飛散を抑制する措置を講じるとともに、汚染の拡大を防止するための措置が適切に実施さ れていることを確認するため、1月以内ごとに、事故由来放射性物質の表面密度の測定を実施し、 汚染の拡大が認められた場合には、埋立施設の周囲の平均的な表面汚染の程度と同等以下(当該 表面汚染の程度が電離則別表第3に掲げる限度を超えない場合には、当該限度以下)になるまで汚 染を除去する措置を講じたときは、事故由来廃棄物等取扱施設の要件を適用しないこととしたこ と。 ウ 本項の特例により除去土壌を埋め立てる場合に、機械の故障時の対応や汚染の状況の調査、施 設又は設備の保守点検作業等のために一時的に施設内に立ち入ることは差し支えないが、その場 合には、あらかじめ作業を中止し、粉じんの発散を抑制した状態とするとともに、有効な呼吸用 保護具及び保護衣類を使用して立ち入る必要があること。 エ 第1号の「遠隔操作により作業を行う等」の「等」には、特別な仕様により密閉性を高めた車 両を用いて作業を行うことが含まれるが、この場合には、埋立施設に適用される第3条の2の規定 により、当該車両の内部の外部放射線による実効線量と空気中の放射性物質による実効線量の合 計が1週間につき1ミリシーベルトを超えないこと、表面汚染を除去しやすくする措置を講ずるこ と、1月以内ごとに1回、表面汚染の検査を実施し、40ベクレル毎平方センチメートルを超えてい る場合には汚染を除去することが必要であること。 オ 第2号の「湿潤な状態にする等」の「等」には、粉じんの発散抑制効果のある化学物質を散布 することが含まれること。 カ 第3号の「できる限り離れた場所において作業を行う等」の「等」には、埋立施設の境界に粉 じんの飛散防止効果のある遮風壁を設けることが含まれること。 キ 第4号の「別表第3に掲げる限度と当該埋立施設の周辺における事故由来放射性物質の表面密度 のいずれか高い値以下とするための措置」には、汚染された土壌等を除去するほか、コンクリー トや鉄板など遮蔽効果を有する物で覆うことが含まれること。 (2) 準用規定の特例(第41条の10第2項関係) 本項の特例の読み替えについては、別紙1を参照すること。 ア 汚染限度(第28条、第31条、第32条第2項及び第35条第1項関係) @ 除染特別地域等において処分事業場を設置する場合には、処分事業場の屋外は事故由来放射 性物質で汚染されており、また、処分事業場の外部から事故由来放射性物質により汚染された 土壌が継続的に流入する状況にあるため、処分事業場を設置する前よりも汚染を拡大させない ための管理を行うことが適当であることから、汚染の除去等の基準について、特例を設けたも のであること。 A 「別表第3に掲げる限度」である40ベクレル毎平方センチメートルは、GM計数管のカウント 値で13,000カウント毎分と同等であるものと取り扱って差し支えないこと。なお、周辺の線量 当量率が高く、汚染密度の測定が困難な場合には、汚染検査場所を線量当量率が十分に低い場 所に設置すること。 イ 汚染検査場所(第31条第1項関係) 除染特別地域等において処分事業場を設置する場合には、処分事業場の屋外は事故由来放射性 物質で汚染されており、また、処分事業場の外部から事故由来放射性物質により汚染された土壌 が継続的に流入する状況にあるため、処分事業場の外部に汚染を拡大させないための管理を行う ことが適当であることから、処分事業場の出入口において汚染検査を実施すれば足りるとする特 例を設けたこと。 6 特別な作業の管理(第4章の2関係) (1) 事故由来廃棄物等処分業務における作業規程(第41条の13関係) ア 第1項第1号の「事故由来廃棄物等の処分に係る各設備の操作」には、各設備ごとの、操作の時 期、手順及び適正な運転状態の保持、設備の保守点検作業等に必要な事項が含まれること。また、 「各設備」には、事故由来廃棄物等取扱施設、貯蔵施設、焼却炉又は埋立施設に係る設備、破砕 等設備、ベルトコンベア等の運搬設備が含まれること。 イ 第1項第2号の「安全装置及び自動警報装置の調整」には、安全装置及び自動警報装置の調整の 時期、作動テストが含まれること。また、「安全装置」には、破砕等設備のインターロック等が 含まれること。さらに、「自動警報装置」には、排気又は排液の施設における漏えい、焼却炉等 における異常の発生を操作室に自動的に知らせる装置が含まれること。 ウ 第1項第3号の「作業の方法及び順序」には、管理区域への立入り及び退去の手順、密封されて いない事故由来廃棄物等の取扱いの方法及び順序、事故由来廃棄物等の選別、破砕、圧縮、濃縮 等、貯蔵、焼却又は埋立ての方法及び順序、事故由来放射性物質により汚染された設備の保守点 検作業等の方法及び順序、身体等の汚染の状態の検査及び汚染の除去の方法、保護具の性能及び 使用方法、遮蔽体の設置、遠隔操作の採用等の被ばく防止の方法、被ばく限度及び被ばく線量測 定の方法、被ばく線量測定の結果の確認及び記録等の方法が含まれること。 エ 第1項第4号の「外部放射線による線量当量率及び空気中の放射性物質の濃度の監視に関する措 置」には、外部放射線による線量当量率及び空気中の放射性物質の濃度の測定の方法、頻度及び 実施体制、これらの測定結果が電離則に定める限度を超えている場合の措置が含まれること。 オ 第1項第5号の「天井、床、壁、設備等の表面の汚染の状態の検査及び汚染の除去に関する措置」 には、天井、床、壁、設備等の表面の汚染の状態の検査の方法、頻度及び実施体制、この検査結 果が電離則に定める限度を超えている場合の汚染の除去の方法が含まれること。 カ 第1項第6号の「異常な事態が発生した場合における応急の措置」には、設備又は施設ごとの、 異常関連部署への緊急連絡、安全を保持するための要員の配置、必要な設備の使用方法、応急の 作業の方法が含まれること。 (2) 事故由来廃棄物等処分業務に係る作業の届出(第41条の14関係) ア 本条は、事故由来廃棄物等により汚染された設備の保守点検作業等においては、著しい被ばく のおそれがあるにもかかわらず、その作業の性質上、様々な設備で異なる間隔で作業が実施され るため、労働基準監督機関における適時の監督・指導が困難であることから、当該作業を行う事 業者(元方事業者に該当する事業者がいる場合は、元方事業者に限る。)に対し、あらかじめ、事 業場の所在地を管轄する労働基準監督署長に作業届の提出を義務付けたものであること。 イ 第1項第1号の「点検等」の「等」には、非破壊検査、塗装が含まれること。 ウ 第1項第1号の分解する作業には、汚染されていない部分を分解する作業は含まれないこと。 7 特別の教育(第6章の2関係)及び作業環境測定(第7章関係) (1) 事故由来廃棄物等処分業務に係る特別の教育(第52条の8関係) ア 本条第1項は、事故由来廃棄物等処分業務に従事する者に対し、電離則で定める措置を適切に 実施するために必要とされる知識及び実技の科目について特別の教育を実施することを義務付け たものであること。 イ 第2項の厚生労働大臣が定める事項については、特別教育規程によること。 ウ 第1項第1号から第5号までが学科教育、同項第6号が実技教育であり、その範囲及び時間につい ては、特別教育規程第2条及び第3条によること。 エ 第1項第1号から第5号までの学科教育の科目については、標準的なテキストを示す予定である こと。 オ 事故由来廃棄物等処分業務においては、密封されていない放射線源を大量に取り扱うことによ り、著しい被ばくのおそれがあることから、「被ばく線量の管理に関する知識」に関する教育を 義務付けたこと。 (2) 作業環境測定を行うべき作業場及び放射性物質の濃度の測定(第53条及び第55条関係) ア 第53条第2号の2は、事故由来廃棄物等取扱施設について作業環境測定を行うことを義務付けた ものであること。なお、同条第1号により、事故由来廃棄物等処分業務を行う作業場のうち管理 区域に該当する部分についても作業環境測定が義務付けられること。 イ 第55条は、事故由来廃棄物等取扱施設に係る作業環境測定の実施について、放射性物質取扱作 業室と同様に、空気中の放射性物質の濃度を対象とすること等を規定したものであること。 8 雑則(第10章関係) (1) 健康診断に関する調整(第61条の4及び附則第6条関係) ア 電離則の放射線業務に配置替えとなる直前に「除染等業務」に常時従事する労働者であった者 が直近に受けた除染電離則第20条第1項の規定による健康診断(6月以内に行われたものに限る。) については、電離則第56条第1項の規定による配置換えの際の健康診断とみなされること。この 場合には、当該除染電離則第20条第1項の規定による健康診断が実施された日から6月以内に、電 離則第56条第1項の規定による定期健康診断を実施する必要があること。 イ 除染等業務に配置替えとなる直前に電離則の放射線業務に常時従事し、かつ、管理区域に立ち 入る労働者であった者が直近に受けた電離則第56条第1項の規定による健康診断(6月以内に行わ れたものに限る。)については、除染電離則第20条第1項の規定による配置換えの際の健康診断と みなされること。この場合には、当該電離則第56条第1項の規定による健康診断が実施された日 から6月以内に、除染電離則第20条第1項の規定による定期健康診断を実施する必要があること。 (2) 準用(第62条関係) 本条は、事故由来廃棄物等の貯蔵施設、埋立施設の清掃を行う事業者など、処分事業場内におい て電離則の放射線業務以外の業務を行う事業の事業者(除染電離則第2条第1項の事業者を除く。)及 びその使用する労働者に対し、改正省令により規定した条項のうち、当該事業者及び労働者におい ても同様の措置を講じる必要のあるものを準用することを規定したものであること。また、処分事 業場以外の電離則の放射線業務を行う事業場において、除染電離則第2条第7項又は第8項の業務を 行う事業の事業者及びその使用する労働者については本条の対象から除外し、除染電離則を適用す ることを明らかにしたものであること。 9 様式関係 事故由来廃棄物等処分業務に係る作業届(様式第1号)は、記載すべき必要最小限度の事項を定める ものであって、これと異なる様式を用いることを妨げるものではないこと。 10 附則関係 (1) 施行期日(附則第1条関係) ア 改正省令は、平成25年7月1日から施行すること。ただし、8(1)の健康診断に関する調整の関係 は、公布の日から施行すること。 イ 特別教育規程は、平成25年7月1日から適用すること。 (2) 経過措置(附則第2条及び第3条関係) ア 平成25年7月1日において密封されていない事故由来廃棄物等を取り扱う作業が現に行われてい る専用の作業室又は当該作業に従事中の者の専用の廊下等で、改正省令による改正前の電離則第 23条の規定に適合するものについては、これらを引き続き使用する場合に限り、改正省令による 改正後の電離則第41条の5の規定に適合するものとみなすこと。 イ 改正省令による改正前の電離則の規定に違反した者については、従前のとおり、罰則を適用す ること。 (3) 労働安全衛生規則の一部改正(附則第4条関係) 労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第36条の改正により、労働安全衛生法(昭和47年法律 第57号)第59条第3項の特別教育を必要とする業務に事故由来廃棄物等処分等業務を加えたこと。 (4) 作業環境測定法施行規則の一部改正(附則第5条関係) 作業環境測定法施行規則(昭和50年労働省令第20号)第1条の改正により、作業環境測定士に作業環 境測定を実施させなければならない作業場に事故由来廃棄物等取扱施設を加えたこと。 (5) 除染電離則の一部改正(附則第6条関係) 1(1)及び8(1)のほか、除染電離則第10条の作業の届出について、元方事業者に該当する者がいる 場合に限って、元方事業者のみに届出を義務付ける趣旨を明確にしたこと。 第3 根拠条文及び罰則 電離則、労働安全衛生規則、作業環境測定法施行規則、除染電離則は、労働安全衛生法第22条、第 27条等、作業環境測定法(昭和50年法律第28号)第2条等に基づく省令であり、罰則の適用があること。 なお、電離則の新設条文の根拠条文等は、別紙2のとおりであること。「事故由来廃棄物等処分業務に従事する労働者の放射線障害防止のためのガイドライン」(PDF:773KB)