自動車・同付属品製造業
溶接装置の組立現場は重量物の取り扱いが多く、従来、その移動は台車あるいは走行クレーンを使用して行っていた。しかし、安全衛生面および作業効率の点から、以下のような問題があり、改善の必要があった。
- ① 台車の移動は4〜5人で行わなければならないため効率が悪く、また腰痛の原因にもなる。
- ② 組立作業時、小回りがきかない。
- ③ クレーンおよび玉掛け免許所有者の手を煩わせている。
- ④ クレーン作業の競合がありロスタイムが出る。
- ⑤ クレーン走行時、荷下の作業者は一時作業がストップする。
- ⑥ 重量物運搬の危険性を常に排除しなければならない。
- ⑦ 3Sが徹底されない。
- ⑧ 職場の年齢構成が高く、体力的負担が大きい。
以上の課題を解決し、安全性と組立効率の向上を両立させる、製造ラインシステムの構築を目指して改善を行った。
クレーンおよび台車を用いての製品の移動搬送に替え、エアースケータを利用した浮上式床面自由搬送方式とした。
具体的には市販のエアースケータを装着した組立と搬送の兼用パレットを製作し、作業の効率化と省力化を図ることとした。パレットの脚に装着したエアースケータの下面には、ダイヤフラムが貼ってあり、エアーの注入により膨張して圧力ゾーンを形成し、下面の穴からの微量なエアーリークによって床面との間に薄い空気膜を形成する。これによって床との接地抵抗が軽減され、1人でも容易に重量物を移動させることができる。空気を注入するエアーホースは、通常ブースごとに壁面等に巻き取り式で設置されており、移動時にパレットのエアー制御バルブに接続する方式なので、作業の障害とはならない。
また、パレットは用途に応じて工夫を凝らしたものを数種類製作した。完成品反転装置付のものにおいては、重筋作業の改善と同時に、不良作業姿勢の改善も行えるように工夫した。
なお、この方式を導入するに当たり、パレットの移動をスムーズにするために床面にコーティングを施した。
- 走行クレーンの使用回数を87%削減でき、玉掛けおよび走行時に起因する危険要素(台車と足をぶつける等)が著しく低減した。
- 以前は車輪付台車の移動に4〜5人の力が必要であったが、エアースケータの利用により、1人でも容易に動かすことができるので、効率もよく、腰など体への負担も軽減された。
- 騒音レベルはクレーン使用時の85dBから75dBまで改善された。
- 床面の樹脂コーティングの実施と、パレット走行面の確保の必要性から自然と3Sが行き届くようになった。
- 生産性の面ではクレーンおよび玉掛け作業の低減により、作業効率が向上し、前後の工程も含め生産性は3倍となった。
平成6年6月〜平成7年12月
4,758万円(パレット5種・計31台、床面樹脂コーティングを含む)
有り