自動車・同付属品製造業
当実験室では、車両の衝突実験を実施している。衝突実験では車両に多くのセンサーを取り付け、電線を通して車載計測器に入力して一瞬の現象を測定する。
電線は衝突時の強い衝撃で損傷を受けるため、ハンダ溶着で1カ月に100件の修理を行っている。しかも、その修理には車室内やトランクルーム内など狭い箇所が多く、のぞき込んだり、屈み込むような無理な姿勢を強いられ、腕・肩・腰への負担が大きかった(写真1)。
また準備・後処理作業ではハンダごてをシート背部にかけて配線の溶着準備をしているため、ハンダごての不意の接触によってやけどをする危険が大きかった。
さらに、両手のハンダ溶着作業であるため、結線の際、線の部分を固定することが難しいので失敗が多く、作業の繰り返しによる焦燥感によるストレスが高かった。
片手で簡単に電線のハンダ溶着ができる「ハンドバイス式ハンダ溶着工具」を考案し、作成した(写真2)。
作業手順は、まず溶着する電線をセットし、レバーで溶着部をクランプし、2段クランプまで握り込むと加熱、さらにローラーを回してハンダを供給して溶着される。次いで、レバーを開放してハンダ溶者が完了する。
工夫点としては、まず中折れレバーにより1段目でクランプ、2段目で加熱、力を緩めれば冷却となり、レバーの握り力の変化だけで一連の作業をできることが挙げられる。また、ヒーター部には2種の熱線を使い分けて異なる太さの電線の溶着を可能にし、局部加熱にしたため加熱、冷却時間を大幅に短縮した。さらに3つのローラーの組み合わせにより、ハンダノズルから溶着部へとスムーズかつ確実なハンダの供給が図られた。電源も市販のニカド電池を使用し、コードレス化した(図)。
特にハンダの供給については半自動溶接機の送り機構がヒントになった。また、溶着機構についてニクロム線に薄い鋼板を貼るなどの試行錯誤を繰り返す中で、ハンダが熱線に付着するなどの問題も発生した。これは、自動車のシガーライター機構の応用で解決できた。
- 手を離せばスイッチ・オフとなりヒーター部が瞬時に冷却されるため、やけどの危険がなくなり、安心して作業ができるようになった。
- 修理部分をクランプして固定できるため、イライラすることがなくなり、ストレスを感じることがなくなった。
- 片手で作業ができるようになったので、無理な姿勢をとることがなくなり、腕・肩・腰の負担が軽減した。
- 作業時間が5分の1に短縮された。
- ハンダ溶着品質が向上した。
平成8年11月〜平成9年4月
5,000円(1台)
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