木製家具製造業
この事業場は、住宅の収納システム(タンス等の家具類)、内装ドア等、木工内装品を製造している。従って、多くの木材加工用機械を使用している。
そのうちの一つ、軸傾斜式昇降盤には従来、上からつり下げる陣笠タイプの安全カバーが取り付けられていたが、完全に手指が入らない構造にはなっておらず、 丸のこを傾斜(45°)させて「留め木口」の加工をする場合には、安全カバーが邪魔になるため、これ上部に上げ、外したままで使用したこともある。
また、小間板の加工の場合、切断した小間板がカバーの中に残ることがあるので、取り出す際に手指がのこ歯に触れる危険があり、その小間板がカバーの中でのこ歯に触れて反ぱつするおそれもあった。
さらに、スイッチを切った後も丸のこが惰性回転しているため、加工終了後に材を片付けるために手を出して、手指を切傷する危険等があった。これらの危険を解消するため、今回の改善に取り組んだ。
- ① 昇降盤の電源スイッチをキー・スイッチ([A])に替え、キーを挿入しなければ電源がオンにならないようにした。
- ② 丸のこの回転起動用として光電管スイッチ([B])を丸のこのカバーの上・下によってオフ・オンに作動させ、かつ、カバーに取り付けた手元スイッチ([C])のオンの操作とによって初めて丸のこが回転する二重スイッチ構造にした。
- ③ スイッチ・オフの際の丸のこの惰性回転を防止するため、電磁ブレーキ([D])を採用した。(図1参照)
- ④ 丸のこの接触予防カバーの形を長方形の箱型にして、丸のこを完全に覆うとともに、切断片が反ぱつして作業者に飛んでくるのを防止するため、カバーが手元のテーブルの端までを覆うようにした。
キー・スイッチおよび電磁ブレーキ本体は、フレーム部分に取り付けた。キー・スイッチは作業者のひざの高さである。光電管は固定テーブルの手前右端に固定 して、カバーを下ろした時にカバーの右側面に光線を放射して、スイッチがオンとなる(有効距離30mmに調節)。手元スイッチはカバーの上面の取っ手の握 り棒の右端断面に押しボタンをはめ込んだ。カバーは固定テーブル奥の端に支点を設け、取っ手を持って上下動させる。上下動を容易にするためバランサーを利用している。(図2参照)
これらの装置の操作と機能を以下に述べる。
スイッチにキーを押し込んで電源をオンにする。テーブル上に加工材をセットした後、取っ手の操作でカバーを下げると光電管スイッチがオンになり、取っ手の押しボタンスイッチを親指で押すと手元スイッチもオンになり、丸のこが回転する。
加工材を送って切断が終わった時点で手元スイッチの親指を離すと、丸のこの回転は停止する。電磁ブレーキが作動して3秒で停止する。カバーを上げて加工材を取り出して完了する。
なお、カバー本体は鋼板であるが、重量を軽減するため両側面に窓を設け、ポリエチレン樹脂板を張った。この窓を通して内部が透視できる。また切断によって発生する木粉は、丸のこの底の部分から吸引している。
また、作業主任者がキーを保管し、取扱認定者のみに操作させるシステムをとっている。
- 手指が入る危険性がなくなり、途中で停止する場合でも、カバーを開けるだけで丸のこが停止する。
- カバー本体が材料押さえの役目もしているので、安定した姿勢で加工作業ができ、反ぱつも防止できる。
- 惰性回転が少なくなり、次の作業が早くできるようになった。
昭和63年10月〜12月
25万円/台
無し