自動車・同付属品製造業
当工場では、自動車用変速機を生産しているが、変速機に使用するギヤ部品をボブ盤で加工する際、加工点の冷却、潤滑、切削屑の洗い流しを目的として、切削油を使用している。切削油は、加工時の摩擦熱により高温状態となるとオイルミストが発生し、作業環境に悪影響を及ぼす。
従来は、ミストコレクター(ミスト発生源を覆う固定カバー)を使用してきたが、次のような問題があった。
- ① 部品加工時は、オイルミストをほぼ回収することはできるが、加工開始時および加工終了時に部品を搬入・搬出する際、開口部から外部に飛散してしまう。
- ② フィルターメンテナンスがこまめに必要となる。
- ③ 加工機内に浮遊するオイルミストがカバーなどに付着し液状化するため、設備が汚れる。そのため、週1回(1時間30分程度)生産ラインを停止し、加工機の内外やミストコレクターを清掃することで、作業環境の維持に努めていた。
オイルミスト回収用油膜カーテンを考案した(写真1)。基本構造は次のとおり。
- ① 切削油は、円周上の2ヵ所から供給されることにより回転の流れをつくる(図1)。
- ② 切削油は、リング状のガイド板を経由して放射状に拡散される(図2)。その際、ガイド板に切削油を吸着させることにより、薄い膜をつくる。
- ③ ガイド板は流れ出る切削油の吐出圧により上下開閉し、板自体も回転する構造になっている。この板の自重と遠心力により切削油が拡散され、均一で薄い膜のカーテン状となり、膨らみをもって流れ落ちることになる(図3)。
- ④ 薄い膜のカーテンが実現することにより、カーテン内は完全に密封され、オイルミストが外部に飛散することが防止される。
- ライン周辺のオイルミスト量が低減された。
・ミストコレクター清掃:18mg/m2
・ミストコレクター清掃:6mg/m2
・本考案品設置後:0.4mg/m2 - ミストコレクターの定期メンテナンスおよび加工機周辺の清掃作業が不要となった。
- ミストコレクターの電力費が不要となった。
平成11年1月〜平成11年6月
25万円/台
有り