安全衛生情報センター
労働安全衛生規則第12条の5第3項第2号イの規定に基づき厚生労働大臣が定める化学物質の管理に関す る講習(令和4年厚生労働省告示第276号。以下「講習告示」という。)、労働安全衛生規則第34条の2の10 第2項、有機溶剤中毒予防規則第4条の2第1項第1号、鉛中毒予防規則第3条の2第1項第1号及び特定化学物 質障害予防規則第2条の3第1項第1号の規定に基づき厚生労働大臣が定める者(令和4年厚生労働省告示第27 4号。以下「専門家告示(安衛則等)」という。)及び粉じん障害防止規則第3条の2第1項第1号の規定に基づ き厚生労働大臣が定める者(令和4年厚生労働省告示第275号。以下「専門家告示(粉じん則)」という。)に ついては、令和4年9月7日に告示され、令和5年4月1日から適用(一部令和6年4月1日から適用)することと されたところである。 これらの告示の制定の趣旨、内容等については、下記のとおりであるので、関係者への周知徹底を図る とともに、その運用に遺漏なきを期されたい。
第1 制定の趣旨及び概要等について 1 制定の趣旨 今般、特定化学物質障害予防規則(昭和47年労働省令第39号。以下「特化則」という。)等の特別則 の規制の対象となっていない物質への対策の強化を主眼とし、国によるばく露の上限となる基準等の 制定、危険性・有害性に関する情報の伝達の仕組みの整備・拡充等を前提として、事業者が、危険性 ・有害性の情報に基づくリスクアセスメントの結果に基づき、国の定める基準等の範囲内で、ばく露 防止のために講ずべき措置を適切に実施する制度を導入することとし、労働安全衛生規則等の一部を 改正する省令(令和4年厚生労働省令第91号)等を公布したところである。 本告示は、これら事業者による化学物質管理を円滑に実施するために、事業場において化学物質の 管理を行う化学物質管理者を養成するための講習の内容を定めるとともに、事業場内において化学物 質管理を行い、事業場外において化学物質管理に関する助言や評価を行う専門家である化学物質管理 専門家の要件を定めるものである。 2 告示の概要等 (1) 講習告示関係 労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号。以下「安衛則」という。)第12条の5第3項第2号イに おいて、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号。以下「法」という。)第57条の3第1項の危険性又は有 害性等の調査(主として一般消費者の生活の用に供されるものを除く。以下「リスクアセスメント」と いう。)をしなければならない労働安全衛生法施行令(昭和47年政令第318号。以下「令」という。)第 18条各号に掲げる物及び法第57条の2第1項に規定する通知対象物(以下「リスクアセスメント対象物」 という。)を製造している事業場においては、講習告示に基づく講習(以下「化学物質管理者講習」と いう。)を修了した者又はこれと同等以上の能力を有すると認められる者のうちから化学物質管理者 を選任しなければならないと規定しているところ、講習告示は、化学物質管理者講習の科目、内容、 時間のほか、科目の免除等について定めたものであること。 (2) 専門家告示(安衛則等)及び専門家告示(粉じん則)関係 有機溶剤中毒予防規則(昭和47年労働省令第36号)第4条の2第1項、鉛中毒予防規則(昭和47年労働省 令第37号)第3条の2第1項、特化則第2条の3第1項第1号及び粉じん障害防止規則(昭和54年労働省令第 18号。以下「粉じん則」という。)第3条の2第1項において、新たに設けた適用除外の要件の1つとし て、当該事業場において、化学物質管理専門家が専属で配置されており、化学物質管理専門家がリス クアセスメント(粉じん則にあっては、法第28条の2第1項に規定する危険性又は有害性等の調査)の実 施並びに当該リスクセスメント等の結果に基づく措置等の内容及びその実施に関する事項の管理を行 うこと等を規定しており、また、安衛則第34条の2の10第1項に規定する労働基準監督署長による改善 指示を受けた事業場等は、同条第2項において、化学物質管理専門家から、当該事業場における化学物 質の管理の状況についての確認及び当該事業場が実施し得る望ましい改善措置に関する助言を受けな ければならないと規定しているところ、専門家告示(安衛則等)及び専門家告示(粉じん則)は、当該化 学物質管理専門家について要件を定めたものであること。 (3) 施行日 講習告示は、令和6年4月1日から、専門家告示(安衛則等)及び専門家告示(粉じん則)は、令和5年4 月1日から適用することとしたこと。ただし、専門家告示(安衛則等)第2号の規定については、令和6 年4月1日から適用することとしたこと。 第2 細部事項 1 講習告示関係 (1) 講義及び実習の内容(第1号イ及び同号ロ関係) ア 化学物質管理者講習の講義の各科目及び実習については、必ずしも連続して行う必要はなく、 一定の間を開けて実施しても差し支えないこと。また、受講者の理解度の評価方法については 特に定めていないが、何らかの方法により受講者の理解度を評価することが望ましいこと。 イ 講義及び実習は、事業者自らが行うことのほか、他の事業者の実施する講習を受講させるこ とも差し支えないこと。 ウ 実習については、受講者それぞれが、化学物質の危険性又は有害性等の調査等の一連の流れ や保護具の選択及び使用を実習することを想定しているため、それらが可能となる実習体制の 確保が必要であること。化学物質の危険性又は有害性等の調査等の実習については、実際に各 々の事業場で取り扱っている化学物質に関するものとする等、実務に近い内容とすることが望 ましいこと。 保護具の選択及び使用の実習については、必ずしもフィットテストについて機器を用いて実 習する必要はないが、「保護具の選択及び使用」の管理に必要な能力を身につけられる実習内 容とする必要があること。 エ 講義については、オンラインで実施しても差し支えないが、実習については、化学物質の危 険性又は有害性等の調査等のためのツール使用や保護具の使用についての実習を含むため、オ ンラインでの実施は認められないこと。 (2) 講義科目の受講の免除(第1号ハ関係) ア 講義科目の受講の免除ができる者については、それぞれの資格を取得する際に必要な技能講 習や試験の科目の内容を踏まえて定めており、当該資格に係る実務経験を求めてはいないこと。 イ 「化学物質の危険性及び有害性並びに表示等」の科目については、「有機溶剤作業主任者技 能講習」、「鉛作業主任者技能講習」、「特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講 習」の全ての技能講習を修了した者のみが、受講の免除を受けることができること。この場合 において、平成18年3月31日以前に「特定化学物質等作業主任者技能講習」を修了した者につ いては、「特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習」を修了した者と同等の者と して取り扱って差し支えないこと。 ウ 「第一種衛生管理者の免許を有する者」について、安衛則第10条各号に掲げる衛生管理者の 資格を有する者は該当しないため、「化学物質の危険性又は有害性等の調査」の科目について は、受講の免除の対象とはならないこと。 (3) 講師(第2号関係) 講習の講師については、講義及び実習の各科目に定める内容について必要な知識や実務経験等 を有する者を想定していること。 (4) その他 ア 化学物質管理者講習を修了した者と同等以上の能力を有すると認められる者 安衛則第12条の5第3項第2号イの「化学物質管理者講習を修了した者と同等以上の能力を有 すると認められる者」には、以下の①から③までのいずれかに該当する者が含まれること。 ① 本告示の適用前に本告示の規定により実施された講習を受講した者 ② 法第83条第1項の労働衛生コンサルタント試験(試験の区分が労働衛生工学であるものに限 る。)に合格し、法第84条第1項の登録を受けた者 ③ 専門家告示(安衛則等)及び専門家告示(粉じん則)で規定する化学物質管理専門家の要件に 該当する者 イ 受講記録の保存 選任した化学物質管理者が要件を満たしていることを第三者が確認できるよう、当該化学物 質管理者が受講した講習の日時、実施者、科目、内容、時間数等について記録し、保存してお く必要があること。 ウ 安衛則第12条の5第3項第2号ロの規定に基づき、リスクアセスメント対象物の製造事業場以 外の事業場においては、化学物質の管理に係る技術的事項を担当するために必要な能力を有す る者と認められるものから化学物質管理者を選任することとされているが、化学物質管理者講 習の受講者及びこれと同等以上の能力を有すると認められる者のほか、化学物質管理者講習に 準ずる講習を受講している者から選任することが望ましいこと。この化学物質管理者講習に準 ずる講習は、別表に定める科目、内容、時間を目安とし、講義により、又は講義と実習の組み 合わせにより行うこと。 2 専門家告示(安衛則等)及び専門家告示(粉じん則)関係 (1) 化学物質管理専門家の要件(専門家告示(安衛則等)第1号イからハ関係、専門家告示(粉じん則)第1 号から第3号関係) ア 化学物質管理専門家に必要な要件について、労働衛生コンサルタント(試験の区分が労働衛生工 学であるものに限る。)に係る「5年以上化学物質の管理に係る業務に従事した経験」又は「5年以 上粉じんの管理に係る業務に従事した経験」については、当該資格取得の前後を問わないこと。 イ 「化学物質の管理に係る業務」には、化学物質管理専門家、作業環境管理専門家、労働衛生コン サルタント(労働衛生工学に関する業務に限る。)、労働安全コンサルタント(化学安全に関する業 務に限る。)、化学物質管理者、化学物質関係作業主任者、作業環境測定士、第一種衛生管理者、 衛生工学衛生管理者、保護具着用管理責任者の業務が含まれること。 ウ 「粉じんの管理に係る業務」には、粉じん則で規定する粉じん作業に係る管理に係る業務のほか、 粉状の化学物質の管理に係る業務が含まれること。 エ 専門家告示(安衛則等)第1号ハ及び専門家告示(粉じん則)第3号で規定する厚生労働省労働基準局 長が定める講習については、別途示すところによること。 (2) 同等以上の能力を有すると認められる者(専門家告示(安衛則等)第1号ニ関係、専門家告示(粉じん 則)第4号関係) 専門家告示(安衛則等)第1号ニ及び専門家告示(粉じん則)第4号で規定する「同等以上の能力を有す ると認められる者」については、以下のアからカまでのいずれかに該当する者が含まれること。 ア 法第82条第1項の労働安全コンサルタント試験(試験の区分が化学であるものに限る。)に合格し、 法第84条第1項の登録を受けた者であって、その後5年以上化学物質に係る法第81条第1項に定める 業務(専門家告示(粉じん則)第4号においては、粉じんに係る法第81条第1項に定める業務)に従事し た経験を有するもの イ 一般社団法人日本労働安全衛生コンサルタント会が運用している「生涯研修制度」によるCIH(Ce rtified Industrial Hygiene Consultant)労働衛生コンサルタントの称号の使用を許可されて いるもの ウ 公益社団法人日本作業環境測定協会の認定オキュペイショナルハイジニスト又は国際オキュペイ ショナルハイジニスト協会(IOHA)の国別認証を受けている海外のオキュペイショナルハイジニスト 若しくはインダストリアルハイジニストの資格を有する者 エ 公益社団法人日本作業環境測定協会の作業環境測定インストラクターに認定されている者 オ 労働災害防止団体法(昭和39年法律第118号)第12条の衛生管理士(法第83条第1項の労働衛生コン サルタント試験(試験の区分が労働衛生工学であるものに限る。)に合格した者に限る。)に選任さ れた者であって、5年以上労働災害防止団体法第11条第1項の業務又は化学物質の管理に係る業務を 行った経験を有する者 カ 産業医科大学産業保健学部産業衛生科学科を卒業し、産業医大認定ハイジニスト制度において資 格を保持している者 第3 「労働安全衛生規則等の一部を改正する省令等の施行について」(令和4年5月31日付け基発0531第 9号)の改正について 1 「労働安全衛生規則等の一部を改正する省令等の施行について」(令和4年5月31日付け基発0531第 9号。以下「施行通達」という。)第1中改正の趣旨及び概要等の4(1)について、次表のとおり改正す る。
改正前 | 改正後 | |
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4 (1) |
(前略)ただし、2(2)イ及びエ、(3)ア、ウ@、C、D、エ前段(努力義務)、(4)(2(3)ウ@に係るものに限る。)、(5)、(6)、(8)に係る規定及び当該規定に係る経過措置については、令和5年4月1日から、2(1)、2(2)ウ、(3)イ、ウA、B、エ、(後略) | (前略)ただし、2(2)イ及びエ、(3)ア、ウ@、C、D、エ前段(努力義務)、エ後段、(4)(2(3)ウ@に係るものに限る。)、(5)、(6)、(8)に係る規定及び当該規定に係る経過措置については、令和5年4月1日から、2(1)、2(2)ウ、(3)イ、ウA、B、エ前段(義務)、(後略) |
2 施行通達第4中細部事項9(1)ウについて、次表のとおり改正する。
改正前 | 改正後 | |
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9 (1) ウA |
3年以上労働衛生コンサルタント(試験の区分が労働衛生工学又は化学であるものに合格した者に限る。)としてその業務に従事した経験を有する者 | 労働衛生コンサルタント(試験の区分が労働衛生工学であるものに合格した者に限る。)又は労働安全コンサルタント(試験の区分が化学であるものに合格した者に限る。)であって、3年以上化学物質又は粉じんの管理に係る業務に従事した経験を有する者 |
9 (1) ウC |
衛生管理士(法第83条第1項の労働衛生コンサルタント試験(試験の区分が労働衛生工学であるものに限る。)に合格した者に限る。)に選任された者で、その後3年以上労働災害防止団体法第11条第1項の業務を行った経験を有する者 | 衛生管理士(法第83条第1項の労働衛生コンサルタント試験(試験の区分が労働衛生工学であるものに限る。)に合格した者に限る。)に選任された者であって、3年以上労働災害防止団体法第11条第1項の業務又は化学物質の管理に係る業務を行った経験を有する者 |