非鉄金属鋳物業
当事業場では、ダイカストマシンを使用してアルミ部品の鋳造を行っているが、ダイカスト金型への溶湯の通路となるスリーブ(長さ450mm、内径80mm、外径130mm)が磨耗するため、4カ月に1度交換している。
このスリーブ交換作業は、ダイカストマシンからスリーブを抜く作業と抜き取ったスリーブをダイカストマシン内から取り出す作業があり、次のような問題点があった。
- ① ダイカストマシンからスリーブを抜く作業は、図1のように1人がスリーブに叩き棒を当て、他の1人がハンマーで叩き棒を叩いてスリーブを抜いていた。そのため、叩き棒を支えている作業者の手をハンマーで叩くおそれがあった。
- ② 抜き取ったスリーブをダイカストマシン内から取り出す作業は、スリーブが円筒形で滑りやすく、42kgあるため、図2のように2人で取り出すこととしている。ダイカストマシン内は狭く、足場が不安定なので作業者が腰痛になったり、スリーブを落としたりするなどのおそれがあった。
- ③ スリーブの交換時間は2人作業で1回110分かかる。作業の対象となるダイカストマシンは事業場内に26台あるので、年間の交換時間は、26台×3回×110分×2人=17,160分、すなわち延べ286時間の作業となり、効率が悪かった。
ダイカストマシン・スリーブ交換治具を考案した。これは、ダイカストマシンからスリーブを抜くための治具と、抜き取ったスリーブをダイカストマシン内から取り出すための治具で構成されている。
- ① スリーブをダイカストマシンから抜くための治具は、図3に示す構造をしている。この治具は、スリーブの上部にある切り込み(溶湯注入口)の中に装入して埋栓の役目をするものであり、図4に示すようにプランジャーロットのチップの受け金となるものである。
なお、スリーブを抜く作業は、油圧力で作動するプランジャーロットによりスリーブをダイカストマシンから抜け出る直前まで押し出す。 - ② 抜き取ったスリーブをダイカストマシン内から取り出すための治具は、ダイカストマシンから抜け出る直前まで押し出されたスリーブを、ホイストクレーンで吊ってダイカストマシン内から取り出すもので、図5のような構造になっている。
- スリーブを抜く作業で、叩き棒を支えている作業者の手をハンマーで叩くおそれがなくなった。
- スリーブをダイカストマシン内から取り出す作業で、作業者が腰痛になったり、スリーブを落としたりするなどのおそれがなくなった。
- 2人で110分要したスリーブの交換作業が、1人で30分でできるようになった。
平成10年3月〜平成10年8月
1個当たり 材料費:1万5千円 加工費:6万円
無し