自動車・同付属品製造業
形鋼製品の形状をオフラインにて矯正するプレス矯正での矯正見通し作業は、プレス機から形鋼製品が開放される際、製品が振られるため非常に危険な作業のひとつである。しかし、この作業において災害は発生しておらず、そのため、「危険作業である」という認識が薄くて、工場稼働当初より約30年間、稼働中のテーブルライン(製品移送設備)内に立ち入って行う見通し作業を「当たり前の作業」と捉えていた。
時代の流れとともに、作業者の安全に対する意識レベルが向上し、このような作業状態は「危険である」という認識が芽生えてきた。そこで、さまざまな対策を施し、注意喚起を行ってはきたものの、根本的な対策にはつながらなかった。
テーブルラインの外側から安全に効率よく見通し作業ができるよう、次のような装置を考案した(写真1)。
本装置は、鏡を利用し、鏡に製品を映すことによって見通し作業を行うものであるが、1枚の鏡では左右反対に映るので、合わせ鏡にすることで製品を直接眼で見た感覚で見通せるようにした。
この合わせ鏡は、製品の高さにも応じられるように電動で鏡の高さおよび角度を変えることができるものである。これにより、椅子に座った状態での作業を可能とした(写真2)。
また、テーブルラインの内側及び外側を仕切り、テーブルラインの内側に上体が入らないよう、開閉式の手すりも設置した。しかし、製品によっては、縦型プレス機と横型プレス機の両方を操作する必要があることから、どうしてもテーブルラインを通行しなければならない。そこで、テーブルラインの内側に入る際は、
- ① ラインを止める。
- ② 操作禁止札を掛け、指差呼称する。
- ③ 手摺りを開く。
- ④ 指差呼称でライン停止を確認して、テーブルラインの内側に入る。
以上のような、作業手順を確立した。
さらに、作業場所を覆いハウス化し、ほこりっぽい環境からの解放、防音及びスポットクーラーによる快適な作業環境をつくった。
- 考案実施前の方法で矯正具含を見るには、稼働中のライン内に立ち入ることとなり、危険作業である。しかし、考案実施後の方法は、上体をラインの内側に入れなくても矯正具合を見ることができ、危険作業が排除された。
- テーブルラインの内側及び外側の区分が明確になり、ラインの内側に入る際は確実にスイッチをロックし、操作禁止札を掛けてから立ち入るようになった。
- 体勢が崩れた時もラインの内側に倒れ込むことを防止することができるようになった。
- 上体をひねる作業もなくなり、椅子に座って作業ができるようになったので、高齢者の脚部・腰部への負担が軽減された。
平成8年8月〜10月
約30万円
無し