自動車・同付属品製造業
エンジン実験室での作業のなかに、エンジンのピストン交換作業がある。これは、エンジンが取り付けられているところの下に体を横にして入り、ハンマーの柄で、ピストンを下から突きあげピストンを上方に押し出す作業のことである。
従って、安全衛生上いろいろな問題があった。例えば、次のような災害、苦情がある。
- ① 無理な姿勢での作業のため、体の疲労が大きい。
- ② 作業中に異物が目に入ることがある。
- ③ 狭い場所のため、頭、腕等の打ち身、すり傷の発生が多い。
職場安全ミーティングの結果、ピストンの篏合状況からみて、ピストンに急激に大きな負圧をかけることによりピストンは抜けるのではないか、というアイデアがまとまりテストを重ねた。
シリンダー内にOリングでシールされたプランジャーを挿入し、取っ手をつけ、これを両手で強く握ることにより、プランジャーを引っ張り上げるような構造とした。すなわち、プランジャーが上がった量だけシリンダー内に負圧が生じ、この程度の発生負圧でピストンを抜くことができた。
ピストンの上に考案した治具をおき、両手で押しつけながらプランジャーを引き上げるとピストンが抜ける。なおピストンの上に、負圧のロス減少防止のため、ワッシャーを敷いている。
しかし、この治具にて、数多くのピストンを抜くことは、両手の握力がにぶり、疲れが大きいという新しい問題が発生した。
この対策として、エアシリンダー付き治具の改善となった。本考案のエアシリンダー付き治具の重量は約5kgであり、取り扱い上の疲労はない。
エア切替えバルブを、右手親指でONとすることにより、エアシリンダーでプランジャーを引っ張り上げることができる。
また、チェック弁は、プランジャーが下に下がる時開放になり、圧縮しようとする空気をシリンダー内から空気抜き穴を通して逃がす役割を持つ。プランジャー上昇時は、閉じてシリンダー内の圧力を負圧に保つことになる。
また減速弁を取り付けたのは、プランジャーが下降する時、急に下がるとチェック弁から抜け切れない空気が、圧縮空気となってピストンを下げる作用が起こるために、プランジャーの下降速度を調整するものである。
本考案治具の効果として、安全衛生上あるいは生産性上、次のような事項がある。
- エンジンの下に入らないでピストンの引き抜き作業を行うことができる。
- 立ち作業となったので、自然姿勢で作業ができる。このため、部分的な筋肉の疲れはなく、生産性は向上した。
- 打ち身、すり傷、目に異物が入るという苦情はなくなった。
平成元年5月〜12月
2.4万円/台
無し