陸上貨物取扱業
製紙工場では、水の流れを利用して原料の原木(松丸太)を工場に供給するため、安定した水の量を確保することがきわめて重要である。そのため、取水口がゴミ等でふさがれることのないように保守管理する日常の作業がある。
取水口をふさぐ原因となるゴミの種類には冬場ではシャーベット状の雪や氷、秋口には、水中で浮き沈みする草木等がある。
こうしたゴミの除去作業を実施するうえで、次のような問題点が指摘された。
- ① 月に110時間の手作業による除去作業を余儀なくされている。
- ② ゴミは水を含んでいて重く、除去作業は重労働であり、また、足場が不安定で危険である。
- ③ 河岸は斜面で滑って危ない。
- ④ 作業者全員がヒヤリ・ハットを経験している。
- ⑤ 工場から取水口まで遠く(1.7km)、かつ、照明もない。さらに、冬季は、積雪もあり寒い。
そこで、このような危険性を排除するために、取水口のシガラミにゴミが付着する理由を追究したうえで、基礎的な実験を繰り返しながら、作業方法の改善を行った。
取水口のシガラミの寸法は、前幅240cm、縦方向85cm間隔20cmである。模型を使って種々の実験をした結果、次のようなゴミよけ装置を考案した。装置のポイントはフェンスの下に湾曲させた、少し硬めのゴムを取り付けたことである。この装置により、幕(スカート部)で起きる渦のような流れでゴミが浮き上がって、フェンスに沿って下流に流れ出ていき、また、多少の水位変動があっても、スカート部の湾曲とフェンスの浮力で底の部分の調整がなされることを確認した。
材料には松の角材を使用して浮力を持たせ、流れに沿った辺の長さは18mとしている。
また、支えになる部分をL型の構造にして、強度を増した。スカート部は、幅46cmのゴムベルトに1.0m間隔で鉄筋を取り付けたものである。そして、実験で得た数値とグレーダの形を参考にして、曲げの部分の半径を160cmとして、湾曲になるよう曲げぐせをつけた。
また、いたずらされたり、子供たちが木材に上がって遊ばないよう、木製の三角箱を取り付けた。
効果の確認のため、上流から、浮きゴミ、草等を流して、その回収率(装置内に入らずに下流に流れた率)をテストしたところ、およそ95%であった。同時に、除去に要した作業時間を調べた結果、約94%減少した。
現在までに約1年半使用しているが、上流からのゴミは、松の角材に沿って流れ、沈みゴミも湾曲したゴム製幕でできる渦流で浮き上がり取水口の方へはほとんど入りこまないため、取水口がふさがることはなくなった。
考案の効果をまとめると次の通りである。
- 除去作業がほとんど必要なくなり、取水口保守管理の巡回作業は、各直一回監督が行うことで十分となった。
- 取水量が安定した。
- 経済効果として、除去作業費の節減となった。
昭和63年4月〜平成元年2月
約7万円(角材、ベルト類は社給品)
無し