鉄鋼業
当事業場では、異形棒鋼の加工工程でのマスキング作業に月平均100本の塗料スプレー缶を使用している。このスプレーは充填ガスがジエチルエーテルとLPGのため、使用後は必ず残圧を抜いて廃棄する。
従来、残圧抜き作業は釘とハンマーあるいはハーケンを用いて行っていたが(図36)、孔を開ける際には充填ガスやラッカーが吹き出し、孔の角度によっては作業者の顔面や目に飛散するおそれがあった。また、空缶を手に持って作業するためけがをしたり、孔開けの際に発生する火花により爆発したりする危険性があるなど、安全衛生上、問題があった。
スプレー缶を手に持たずに残圧を抜くことができ、かつ、充填ガスやラッカーが周囲に飛散しないことをポイントに改善を進めた結果、図37に示す孔開け器具を考案した。
考案した器具は鋼板製の受皿と上蓋からなり、蝶番で止められている。受皿と上蓋の内側には鋲をそれぞれ2個と3個配置し、中にスプレー缶を入れて上蓋を閉めると、缶に孔が開き、残圧が抜けるようになっている。また、上蓋を大きくし、閉めた時に受皿を覆うことのできる形状として、ラッカー等の飛散防止を図った。さらに、受皿と支柱・台、上蓋と柄は溶接構造として強度を保ったほか、鋲を含め全体を塗装し、孔開けの際に火花が飛ばないようにした。
考案した器具による残圧抜き作業を写真44〜46に示す。
- スプレー缶の残圧抜き作業の際、充填ガスやラッカーが飛散することがなくなった。
- ハーケンやハンマーで手足を打つことがなくなり、安全に、かつ、容易に残圧抜き作業ができるようになった。
- 万が一、スプレー缶に残留していた塗料がこぼれても作業場の床を汚すことがなくなった。
本器具は、使用後に残圧抜きをしなければならない殺虫剤などすべてのスプレーに用いることができ、汎用性の高い考案である。
昭和63年1月〜2月
費用概算 1万円(材料費、工賃)
無し