安全衛生情報センター
労働安全衛生法の一部を改正する法律(平成26年法律第82号。以下「改正法」という。)については、平 成26年6月25日に公布され、その主たる内容については、同日付け基発0625第4号をもって通達したところ であるが、改正法において政令で定めることとされている施行期日のうち、化学物質等の危険性又は有害 性等の調査(以下「リスクアセスメント」という。)等に係るものについては、平成27年6月10日付けで公 布された労働安全衛生法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令(平成27年政令第249号。以下「施 行期日政令」という。)において、平成28年6月1日から施行されることとされたところである。 また、化学物質等の譲渡又は提供時の名称等の表示義務の対象物質の拡大、リスクアセスメント等に係 る規定の施行に伴う所要の規定の整備等を内容とした労働安全衛生法施行令及び厚生労働省組織令の一部 を改正する政令(平成27年政令第250号。以下「改正政令」という。)が平成27年6月10日付けで、労働安 全衛生規則及び産業安全専門官及び労働衛生専門官規程の一部を改正する省令(平成27年厚生労働省令第 115号。以下「改正省令」という。)が平成27年6月23日付けで、それぞれ公布され、いずれも平成28年6 月1日から施行されることとなっている。 改正法による改正後の労働安全衛生法(昭和47年法律第57号。以下「法」という。)、改正政令による改 正後の労働安全衛生法施行令(昭和47年政令第318号。以下「令」という。)及び改正省令による改正後の 労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号。以下「安衛則」という。)の趣旨、内容等は、下記のとおり であるので、これらを十分に理解の上、関係者への周知徹底を図るとともに、特に下記の事項に留意して、 その運用に遺漏のないようにされたい。
第1 改正法及び改正政令の趣旨 今回の改正は、人に対する一定の危険性又は有害性が明らかになっている化学物質について、起こ りうる労働災害を未然に防ぐため、事業者及び労働者がその危険性や有害性を認識し、事業者がリス クに基づく必要な措置を検討・実施する仕組みを創設するものであり、労働安全衛生法施行令別表第 9に掲げる640の化学物質等について、譲渡又は提供する際の容器又は包装へのラベル表示、安全デー タシート(SDS)の交付及び化学物質等を取り扱う際のリスクアセスメントの3つの対策を講じることが 柱となっている。 これらの化学物質等を取り扱う事業者は、譲渡・提供元から提供される安全データシート(SDS)の 内容等から化学物質等の危険性又は有害性を特定し、特定された危険性又は有害性によるリスクの見 積りを行い、その結果に基づきリスクを低減するための措置を検討するという一連の取組を行うとと もに、化学物質等を実際に取り扱う労働者が当該化学物質等の危険性又は有害性を確実に認識できる よう、譲渡又は提供する際には容器又は包装に名称、標章その他の事項を表示することとしたもので ある。 第2 改正の要点 T 施行期日政令関係 改正法附則第1条第4号に掲げる規定(リスクアセスメント等関係)の施行期日を平成28年6月1日とした こと。 U 改正政令関係 1 労働安全衛生法施行令の一部改正 (1) 表示対象物の範囲の拡大 法第57条の規定に基づき、譲渡又は提供の際に容器又は包装に名称等の表示が義務付けられている 物(以下「表示対象物」という。)の範囲を拡大し、以下のとおりとしたこと。(令第18条関係) ① 令別表第9に掲げる物(※一部の物を適用除外。(2)及び第3の2を参照。) ② 令別表第9に掲げる物を含有する製剤その他の物で、厚生労働省令で定めるもの ③ 令別表第3第1号1から7までに掲げる物を含有する製剤その他の物で、厚生労働省令で定めるもの (2) 表示義務の適用除外規定の創設 (1)①のうち、イットリウム、インジウム、カドミウム、銀、クロム、コバルト、すず、タリウム、 タングステン、タンタル、銅、鉛、ニッケル、白金、ハフニウム、フェロバナジウム、マンガン、モ リブデン又はロジウムの純物質であって粉状の物以外の物については、表示対象物から除くこととし たこと。(令第18条第1号関係) なお、(1)②及び③(混合物)についての適用除外は、厚生労働省令において規定することとしたこ と(第3の2を参照。)。 2 所要の規定の整理 改正法による改正前の労働安全衛生法(以下「旧法」という。)第57条の3が、法第57条の4とされたこ と等に伴い、令及び厚生労働省組織令(平成12年政令第252号)について、所要の規定の整理を行ったこと。 3 経過措置 今般の改正政令により新たに名称等の表示義務の対象となる物であって、改正政令の施行の日におい て現に存するものについては、平成29年5月31日までの1年間は、法第57条第1項の規定は、適用しない こととしたこと。 V 改正省令関係 1 労働安全衛生規則の一部改正 (1) 表示対象物の裾切り値の設定等について ア 表示対象物の裾切り値の設定及び見直し(安衛則第30条、第34条の2関係) 令第18条の改正により、表示対象物及び通知対象物(法第57条の2第1項の通知対象物をいう。以 下同じ。)の範囲は、原則として同一となることから、表示対象物又は通知対象物の裾切り値につ いては、改正前の労働安全衛生規則(以下「旧安衛則」という。)別表第2及び別表第2の2を統合し、 新たに安衛則別表第2として一括して整理することとし、別表第2の上欄に掲げる物に応じ、中欄に 表示対象物としての裾切り値を、下欄に通知対象物としての裾切り値を、それぞれ規定したもので あること。 また、旧安衛則別表第2又は別表第2の2に規定されていた裾切り値の一部については、最新の知 見を踏まえて見直しを行った上で、安衛則別表第2に規定したこと。 イ 固形物の適用除外の創設(安衛則第30条、第31条関係) 表示対象物を含有する製剤その他の物(混合物)について、令第18条第2号の厚生労働省令で定め る物のうち、運搬中及び貯蔵中において固体以外の状態にならず、かつ、粉状にならない物であっ て、危険性又は皮膚腐食性を有しないものを表示義務の適用除外とすることとしたこと。 また、令第18条第3号の厚生労働省令で定める物についても同様としたこと。 (2) リスクアセスメント等について ア リスクアセスメントの実施時期(安衛則第34条の2の7第1項関係) 法第57条の3第1項の規定に基づくリスクアセスメントについては、以下に掲げる時期に行うもの としたこと。 ① 表示対象物及び通知対象物(以下「調査対象物」という。)を原材料等として新規に採用し、又 は変更するとき。 ② 調査対象物を製造し、又は取り扱う業務に係る作業の方法、手順を新規に採用し、又は変更す るとき。 ③ ①及び②のほか、調査対象物による危険性又は有害性等について変化が生じ、又は生ずるおそ れがあるとき。 イ リスクアセスメントの実施方法(安衛則第34条の2の7第2項関係) リスクアセスメントは、調査対象物を製造し、又は取り扱う業務ごとに、以下のいずれかの方法 (危険性に係る調査については①又は③の方法)又はこれらの方法の併用により行わなければならな いこととしたこと。 ① 調査対象物が労働者に危険を及ぼし、又は健康障害を生ずるおそれの程度(発生可能性)及び当 該危険又は健康障害の程度(重篤度)を考慮する方法 ② 労働者が調査対象物にさらされる程度(ばく露濃度等)及び当該調査対象物の有害性の程度(許 容濃度等)を考慮する方法 ③ その他、①又は②に準じる方法 ウ リスクアセスメントの結果等の労働者への周知(第34条の2の8関係) 事業者は、リスクアセスメントの結果やこれに基づき講ずる労働者の危険又は健康障害を防止す るため必要な措置の内容等を、作業場の見やすい場所に常時掲示し、又は備え付けること等により、 労働者に周知しなければならないこととしたこと。 エ 総括安全衛生管理者が統括管理する業務の追加等(安衛則第3条の2、第21条及び第22条関係) 法第57条の3第1項の規定に基づくリスクアセスメント及びその結果に基づき講ずる措置に関する こと等を、総括安全衛生管理者が統括管理する業務並びに安全委員会及び衛生委員会の付議事項に 追加することとしたこと。 (3) 表示又は文書交付に係る努力義務規定に関する改正について ア 「成分」に係る表示事項の削除(安衛則第24条の14関係) 安衛則第24条の14においては、表示対象物以外の化学物質について、名称等の表示の努力義務が 定められているが、改正法において旧法第57条第1項第1号ロに掲げる「成分」に係る表示事項が削 除されたことに伴い、安衛則第24条の14に定める表示事項からも「成分」に係る表示事項を削除し たこと。 イ 特定危険有害化学物質等の範囲の見直し(安衛則第24条の15関係) 表示対象物又は通知対象物以外の化学物質についての文書交付を努力義務として定めている安衛 則第24条の15に規定する「特定危険有害化学物質等」の範囲を、「化学物質、化学物質を含有する 製剤その他の労働者に対する危険又は健康障害を生ずるおそれのある物で厚生労働大臣が定めるも の」から通知対象物を除いたものとしたこと。 2 その他 改正法により旧法第57条の3が法第57条の4とされたこと等に伴い、安衛則及び産業安全専門官及び労 働衛生専門官規程(昭和47年労働省令第46号)について、所要の規定の整理を行ったこと。 第3 改正政令及び改正省令に係る細部事項 1 表示対象物の範囲の拡大等について(法第57条、令第18条関係) (1) 今般の改正により表示対象物とされた640物質は、いずれも米国産業衛生専門家会議(ACGIH)や日 本産業衛生学会により許容濃度等が定められ、その有害性が明らかなものであることから、その危険 性又は有害性に係る情報を容器等のラベルに表示し、労働者が化学物質を取り扱うときに必要となる 危険性又は有害性や取扱い上の注意事項が確実かつ分かりやすい形で伝わるようにすることとしたも のである。 (2) 法第57条ただし書の「主として一般消費者の生活の用に供するためのもの」には、以下のものが含 まれるものであること。 ア 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)に 定められている医薬品、医薬部外品及び化粧品 イ 農薬取締法(昭和23年法律第125号)に定められている農薬 ウ 労働者による取扱いの過程において固体以外の状態にならず、かつ、粉状又は粒状にならない製 品 エ 表示対象物が密封された状態で取り扱われる製品 オ 一般消費者のもとに提供される段階の食品。ただし、水酸化ナトリウム、硫酸、酸化チタン等が 含まれた食品添加物、エタノール等が含まれた酒類など、表示対象物が含まれているものであって、 譲渡・提供先において、労働者がこれらの食品添加物を添加し、又は酒類を希釈するなど、労働者 が表示対象物にばく露するおそれのある作業が予定されるものについては、「主として一般消費者 の生活の用に供するためのもの」には該当しないこと。 (3) 旧法第57条第1項第1号ロに掲げる「成分」に係る表示事項については、改正法において削除された ところであるが、改正法の施行は平成28年6月1日とされているため、改正前の労働安全衛生法施行令 第18条各号に掲げる表示対象物(104物質)の「成分」に係る表示事項については、平成28年5月31日ま では削除できないこと。 一方、新たに表示対象となる物の表示事項については、平成28年6月1日の施行日前までは、旧安衛 則第24条の14の規定に基づき、「成分」に係る表示事項を含めた名称等の表示が努力義務とされてい るところであるが、表示対象物の範囲の拡大に係る改正の円滑な施行を図るため、同条の規定にかか わらず、施行日前における出荷分から、「成分」に係る表示事項を除いて表示することとして差し支 えないこと。なお、容器又は包装への表示が、労働者に対して表示対象物の危険性又は有害性をわか りやすく直接伝達することにより労働災害の発生を防止することを主たる目的としていることを踏ま え、全ての成分名を表示することにより、表示事項が増え、注意書き等表示全般について縮尺が小さ くなり、労働者に情報が伝わりにくくなることのないよう留意する必要があるが、施行日以後、各事 業者の判断において、適切と考えられる「成分」に係る表示事項を表示することは望ましいこと。 2 表示に係る固形物の適用除外の創設等 (1) 固形物の適用除外について(令第18条及び安衛則第30条関係) ア 改正の趣旨 表示対象物を譲渡し、又は提供する時点において固体の物については、粉状でなければ吸入ばく 露等のおそれがなく、健康障害の原因とならないものと考えられること、また、国際的にも、欧州 の化学品規制であるCLP規則において、文書交付により情報伝達がなされている場合には、塊状の 金属、合金、ポリマーを含む混合物、エラストマーを含む混合物について表示が適用除外とされて いることを踏まえ、令別表第9に掲げる物(純物質)及び令別表第9又は別表第3第1号1から7までに掲 げる物を含有する製剤その他の物(混合物)のうち、運搬中及び貯蔵中において、固体以外の状態に ならず、かつ、粉状にならない物について、表示義務の適用を除外することとしたこと。ただし、 爆発性、引火性等の危険性や、皮膚腐食性を有する物については、譲渡・提供時において固形であ っても当該危険性等が発現するおそれがあるため、適用除外の対象とはせず、引き続き、表示義務 の対象とすることとしたこと。 イ 純物質の取扱い(令第18条関係) 令第18条において適用除外とされる物は、純物質であって、譲渡・提供の過程において粉状にな らず、危険性又は皮膚腐食性がないという上記要件を満たすことが明らかである、イットリウム、 インジウム、カドミウム、銀、クロム、コバルト、すず、タリウム、タングステン、タンタル、銅、 鉛、ニッケル、白金、ハフニウム、フェロバナジウム、マンガン、モリブデン及びロジウムとした こと。なお、イットリウム化合物、インジウム化合物、カドミウム化合物、水溶性銀化合物、クロ ム化合物、コバルト化合物、スズ化合物、水溶性タリウム化合物、水溶性タングステン化合物、タ ンタル酸化物、銅化合物、無機鉛化合物、ニッケル化合物、白金水溶性塩、ハフニウム化合物、無 機マンガン化合物、モリブデン化合物及びロジウム化合物の純物質については、適用除外の対象と はされていないことに留意すること。 ウ 混合物の取扱い(安衛則第30条関係) (ア) 令別表第9又は別表第3第1号1から7までに掲げる物を含有する製剤その他の物(混合物)につい ては、その性質が様々であることから、運搬中及び貯蔵中において固体以外の状態にならず、 かつ、粉状にならないもののうち、以下の①から③までに掲げる危険性のある物又は皮膚腐食 性のおそれのある物に該当しないものを適用除外とすることとしたこと。 ① 危険物(令別表第1に掲げる危険物をいう。) ② 危険物以外の可燃性の物等爆発又は火災の原因となるおそれのある物 ③ 酸化カルシウム、水酸化ナトリウム等を含有する製剤その他の物であって皮膚に対して腐 食の危険を生ずるもの (イ) 「運搬中及び貯蔵中において固体以外の状態にならず、かつ、粉状にならないもの」とは、 当該物の譲渡・提供の過程において液体や気体になったり、粉状に変化したりしないものであ って、当該物を取り扱う労働者が、当該物を吸入する等により当該物にばく露するおそれのな いものをいうこと。例えば、温度や気圧の変化により状態変化が生じないこと、水と反応しな いこと、物理的な衝撃により粉状に変化しないこと、昇華しないこと等を満たすものである必 要があり、具体的には、鋼材、ワイヤ、プラスチックのペレット等は、原則として表示の対象 外となるものであること。 なお、「粉状」とはインハラブル(吸入性)粒子を有するものをいい、流体力学的粒子径が0.1 mm以下の粒子を含むものであること。顆粒状のものは、外力によって粉状になりやすいため、 「粉状にならない」ものとはいえないこと。 (ウ) 上記(ア)②又は③に掲げる物は、国連勧告の化学品の分類及び表示に関する世界調和システム (以下「GHS」という。)に準拠した日本工業規格Z7253の附属書Aの定めにより、物理化学的危険 性及び皮膚腐食性/刺激性の危険有害性区分が定められているものをいうこと。 (2) 裾切り値の見直しについて(安衛則第30条、第31条、第34条の2及び別表第2関係) 今回新たに表示対象物となる物、既存の表示対象物及び通知対象物の裾切り値については、原則と して、以下の考え方により設定されているものであること。 ア GHSに基づき、濃度限界とされている値とする。ただし、それが1パーセントを超える場合は1パ ーセントとする。これにより、裾切り値は下表のとおりとなる。
HSの有害性クラス | 区分 | 裾切り値(重量パーセント) | |
---|---|---|---|
表示(ラベル) | 通知(SDS) | ||
急性毒性 | 1〜5 | 1.0 | 1.0 |
皮膚腐食性/刺激性 | 1〜3 | ||
眼に対する重篤な損傷性/ 眼刺激性 |
1〜2 | ||
呼吸器感作性(固体/液体) | 1 | 1.0 | 0.1 |
呼吸器感作性(気体) | 1 | 0.2 | |
皮膚感作性 | 1 | 1.0 | 0.1 |
生殖細胞変異原性 | 1 | 0.1 | 0.1 |
2 | 1.0 | 1.0 | |
発がん性 | 1 | 0.1 | 0.1 |
2 | 1.0 | ||
生殖毒性 | 1 | 0.3 | 0.1 |
2 | 1.0 | ||
標的臓器毒性(単回ばく露) | 1〜2 | 1.0 | 1.0 |
標的臓器毒性(反復ばく露) | 1〜2 | ||
吸引性呼吸器有害性 | 1〜2 |
イ 複数の有害性区分を有する物質については、アにより得られる数値のうち、最も低い数値を採用 する。 ウ リスク評価結果など特別な事情がある場合は、上記によらず、専門家の意見を聴いて定める。 以上を踏まえ、令別表第9に掲げる表示対象物及び通知対象物の裾切り値とCAS番号は別紙1の一覧 のとおりとなること。 混合物については、裾切り値以上含有されている場合には、仮にGHS分類による危険有害性分類 がなされていない場合であっても、取扱い方法によっては危険有害性が生じるおそれがあることか ら、人体に及ぼす作用や取扱い上の注意に留意が必要であるため、表示義務の対象となること。 (3) 文書交付に係る努力義務規定に関する改正について(安衛則第24条の15関係) 安衛則第24条の15に規定する「特定危険有害化学物質等」は、法第57条の2第1項の文書交付が義務 付けられる通知対象物以外の化学物質、化学物質を含有する製剤その他の労働者に対する危険又は健 康障害を生ずるおそれのある物を対象とするものであるため、その趣旨が明確になるよう表現の適正 化を図ったものであること。 なお、安衛則第24条の15に規定する「化学物質、化学物質を含有する製剤その他の労働者に対する 危険又は健康障害を生ずるおそれのある物で厚生労働大臣が定めるもの」とは、安衛則第24条の14に 規定するものと同様のものを指すこと。 (4) その他の所要の改正について(安衛則第30条及び第34条の2関係) 旧安衛則別表第2及び別表第2の2を新安衛則別表第2に統合したことに伴い、旧安衛則別表第2又は 別表第2の2の備考において表示対象物又は通知対象物から除かれる物として規定されていた以下の物 を、それぞれ以下に掲げる規定の柱書において、表示対象物又は通知対象物から除く旨を規定するこ ととしたこと。 ア 旧安衛則別表第2の備考に掲げる「四アルキル鉛を含有する製剤その他の物のうち、加鉛ガソリ ン」及び「ニトログリセリンを含有する製剤その他の物のうち、98パーセント以上の不揮発性で水 に溶けない鈍感剤で鈍性化したものであつて、ニトログリセリンの含有量が1パーセント未満のも の」 安衛則第30条 イ 旧安衛則別表第2の2の備考に掲げる「ニトログリセリンを含有する製剤その他の物のうち、98パ ーセント以上の不揮発性で水に溶けない鈍感剤で鈍性化したものであつて、ニトログリセリンの含 有量が0.1パーセント未満のもの」 安衛則第34条の2 3 リスクアセスメント等について (1) 調査対象物について ア 安衛則第34条の2の7第1項第1号に規定する「調査対象物」とは、法第57条の3第1項に規定するリ スクアセスメントの対象となる物質のことをいい、具体的には、同項に規定されているように、表 示対象物及び通知対象物である640物質を指すものであること。 なお、640物質以外の物や表示対象物の裾切り値未満の物又は通知対象物の裾切り値未満の物に ついては、法第57条の3第1項に規定するリスクアセスメントの義務の対象とはならないが、これら の物は、引き続き、法第28条の2第1項のリスクアセスメントの努力義務の対象となるものであるた め、これらの物に係るリスクアセスメントについても、引き続き、実施するよう努める必要がある こと。 イ 主として一般消費者の生活の用に供される製品については、法第57条第1項の表示義務及び法第 57条の2第1項の文書交付義務の対象から除かれていることから、法第57条の3第1項に基づくリスク アセスメントの対象からも除くこととしたこと。なお、安衛則第34条の2の7第1項に規定する「主 として一般消費者の生活の用に供される製品」には、法第57条第1項及び法第57条の2第1項と同様 に、第3の1の(2)に掲げるものが含まれること。 (2) リスクアセスメントの実施時期等(安衛則第34条の2の7第1項関係) 法第57条の3第1項に基づくリスクアセスメントの実施時期は、調査対象物を原材料等として新規に 採用するときや、作業方法を変更するときなどとしており、具体的には、事業場として当該化学物質 等を初めて使用するとき、製造するとき、含有製品を取り扱うとき等が含まれる。また、従来から取 り扱っている物質を従来どおりの方法で取り扱う作業については、施行時点において法第57条の3第1 項に規定するリスクアセスメントの義務の対象とはならないが、過去にリスクアセスメントを行った ことがない場合等には、事業者は計画的にリスクアセスメントを行うことが望ましいこと。この場合 の従来どおりの方法とは、作業手順、使用する設備機器等に変更がないことをいうこと。 なお、リスクアセスメントの実施については、平成28年6月1日を施行日としており、経過措置は設 けていないこと。 (3) リスクアセスメントの実施方法等(安衛則第34条の2の7第2項関係) ア 事業者は、リスク低減措置の内容を検討するため、次の(ア)から(ウ)までに掲げるいずれかの方 法により、又はこれらの方法の併用により化学物質等によるリスクを見積もるものとすること。 (ア)の方法は、危険性又は有害性に応じて負傷又は疾病の生じる可能性の度合いと重篤度を見積も るものであり、(イ)の方法は、有害性に着目して実際のばく露量又は推定値とばく露限界とを比較 してリスクを見積もるものである。また、(ウ)はリスクアセスメントの対象物質に特別規則により 既に個別の措置が義務付けられている物質が含まれることを考慮し、当該特別規則の規定の履行状 況を確認すること等をもってリスクアセスメントを実施したこととするものである。このため、危 険性に係るものにあっては、(ア)又は(ウ)に掲げる方法に限ること。 (ア) 化学物質等が当該業務に従事する労働者に危険を及ぼし、又は当該労働者の健康障害を生ず るおそれの程度(可能性の度合)及び当該危険又は健康障害の程度(重篤度)を考慮する方法。 (イ) 当該業務に従事する労働者が化学物質等にさらされる程度(ばく露の程度)及び当該化学物質 等の有害性の程度を考慮する方法。 (ウ) (ア)又は(イ)に掲げる方法に準ずる方法。 イ 法第57条の3第1項の規定に基づくリスクアセスメントは、条文上は「危険性又は有害性等の調査」 とされているが、危険性又は有害性のいずれかについてのみリスクアセスメントを行うという趣旨 ではなく、調査対象物の有する危険性又は有害性のクラス及び区分(日本工業規格Z7253(GHSに基づ く化学品の危険有害性情報の伝達方法―ラベル、作業場内の表示及び安全データシート(SDS)(以下 「JISZ7253」という。)の附属書A(A.4を除く。)の定めにより危険有害性クラス(別紙2に示す引火 性液体のような物理化学的危険性及び発がん性、急性毒性のような健康有害性の種類をいう。)、 危険有害性区分(危険有害性の強度)をいう。)に応じて、必要なリスクアセスメントを行うべきも のであり、調査対象物によっては危険性と有害性の両方についてリスクアセスメントが必要な場合 もあり得ること。 また、例えば、当該作業工程が密閉化、自動化等されていることにより、労働者が調査対象物に ばく露するおそれがない場合であっても、調査対象物が存在する以上は、リスクアセスメントを行 う必要がある。その場合には、当該作業工程が、密閉化、自動化等されていることにより労働者が 調査対象物にばく露するおそれがないことを確認すること自体が、リスクアセスメントに該当する ものであること。 (4) 化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針 リスクアセスメントの具体的な手順の例については、法第57条の3第3項に基づき定めることとして いる「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針」において示すこととしているの で、参照されたいこと。 第4 関連通達の読み替えについて 改正法により旧法第57条の3から第57条の5までの規定が1項ずつ繰り下げられたところである。 このため、旧法第57条の3から第57条の5までの規定については、改正法による改正の前後でその内 容に変更はないものであることから、これらの規定に係る通達については、「第57条の3」とあるの は「第57条の4」と、「第57条の4」とあるのは「第57条の5」と、「第57条の5」とあるのは「第58 条」と、それぞれ読み替えた上で適用するものとする。別紙1(PDF:165KB)