労働安全衛生法の一部を改正する法律について

基発0625第4号
平成26年6月25日
都道府県労働局長 殿
厚生労働省労働基準局長

労働安全衛生法の一部を改正する法律について

 労働安全衛生法の一部を改正する法律(平成26年法律第82号。以下「改正法」という。)については、本
年3月13日に第186回国会に提出され、6月19日に可決成立し、本日公布されたところである。
 近年、事業場で使用される化学物質の数が年々増加する中、その危険性又は有害性の調査等、事業者の
化学物質管理が適切に行われていないことを原因とする労働災害が依然として多く発生している。また、
労働者が職場から受けるストレスは高い状況で推移しており、精神障害を原因とする労災給付の支給決定
の件数は年々増加している状況である。さらに、同一企業の異なる事業場において、同様の重大な労働災
害が繰り返し発生する事案が生じており、企業全体で安全衛生の改善を図ることが必要となっている。
 改正法は、こうした最近の社会情勢の変化や労働災害の動向に即応し、労働者の安全と健康を確保する
ため、労働安全衛生対策の一層の充実を図ることを目的としており、その主たる内容は下記のとおりであ
る。また、改正法の施行期日は、その内容に応じて、改正法の公布の日から起算して6月、1年、1年6月又
は2年を超えない範囲内において政令で定める日とされている。
 改正法の施行のために必要な関係政省令等については、今後、労使等の関係者の意見を聴きつつ検討す
ることとしている。貴職におかれては、改正法の円滑な施行に万全を期すため、以上のことを十分御理解
の上、所要の準備に努められたい。
第1 外国登録製造時等検査機関等
 1 登録製造時等検査機関に対する適合命令及び改善命令に係る規定は、外国にある事務所において製
  造時等検査の業務を行う登録製造時等検査機関(以下「外国登録製造時等検査機関」という。)につい
  て準用するものとしたこと。この場合において、これらの規定中「命ずる」とあるのは、「請求する」
  と読み替えるものとしたこと。(第52条の3関係)

 2 厚生労働大臣は、外国登録製造時等検査機関が次のいずれかに該当するに至ったときは、その登録
  を取り消すことができるものとしたこと。(第53条第2項関係)
   (1) 登録製造時等検査機関の登録の欠格事由等に該当するとき。
   (2) 1により読み替えて準用する適合命令及び改善命令に係る規定による請求に応じなかったとき。
   (3) 厚生労働大臣が、外国登録製造時等検査機関が(1)又は(2)のいずれかに該当すると認めて、6
    月を超えない範囲内で期間を定めて製造時等検査の業務の全部又は一部の停止を請求した場合に
    おいて、その請求に応じなかったとき。
   (4) 厚生労働大臣が、外国登録製造時等検査機関の業務の適正な運営を確保するため必要があると
    認めて、その職員をして外国登録製造時等検査機関の事務所に立ち入らせ、関係者に質問させ、
    又はその業務に関係のある帳簿、書類その他の物件を検査させようとした場合において、その立
    入り若しくは検査が拒まれ、妨げられ、若しくは忌避され、又は質問に対して陳述がされず、若
    しくは虚偽の陳述がされたとき。
   (5) 厚生労働大臣が、この法律を施行するため必要があると認めて、外国登録製造時等検査機関に
    対し、必要な事項の報告を求めた場合において、その報告がされず、又は虚偽の報告がされたと
    き。
   (6) 3による費用の負担をしないとき。

 3 2の(4)の検査に要する費用(政令で定めるものに限る。)は、当該検査を受ける外国登録製造時等検
  査機関の負担とするものとしたこと。(第53条第3項関係)

 4 1から3までは、登録性能検査機関、登録個別検定機関及び登録型式検定機関について準用するもの
  としたこと。(第53条の3第54条及び第54条の2関係)

第2 表示義務の対象物及び通知対象物について事業者の行うべき調査等
 1 事業者は、第57条第1項に規定する表示義務の対象物及び通知対象物による危険性又は有害性等を
  調査しなければならないものとしたこと。(第57条の3第1項関係)

 2 事業者は、1による調査の結果に基づいて、この法律又はこれに基づく命令の規定による措置を講
  ずるほか、労働者の危険又は健康障害を防止するための必要な措置を講ずるように努めなければなら
  ないものとしたこと。(第57条の3第2項関係)

 3 厚生労働大臣は、1及び2による措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るため必要な指針を公
  表するものとしたこと。(第57条の3第3項関係)

 4 厚生労働大臣は、3の指針に従い、事業者又はその団体に対し、必要な指導、援助等を行うことが
  できるものとしたこと。(第57条の3第4項関係)

 5 労働者に危険又は健康障害を生ずるおそれのある物を譲渡し、又は提供する際にその容器又は包装
  に表示しなければならないこととされているもののうち、成分を削除するものとしたこと。(第57条
  第1項関係)

第3 心理的な負担の程度を把握するための検査等
 1 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師、保健師その他の厚生労働省
  令で定める者(以下「医師等」という。)による心理的な負担の程度を把握するための検査を行わなけ
  ればならないものとしたこと。(第66条の10第1項関係)

 2 事業者は、1による検査を受けた労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、当該検査を
  行った医師等から当該検査の結果が通知されるようにしなければならないものとしたこと。この場合
  において、当該医師等は、あらかじめ当該検査を受けた労働者の同意を得ないで、当該労働者の検査
  の結果を事業者に提供してはならないものとしたこと。(第66条の10第2項関係)

 3 事業者は、2による通知を受けた労働者であって、心理的な負担の程度が労働者の健康の保持を考
  慮して厚生労働省令で定める要件に該当するものが医師による面接指導を受けることを希望する旨を
  申し出たときは、当該申出をした労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面
  接指導を行わなければならないものとしたこと。この場合において、事業者は、労働者が当該申出を
  したことを理由として、当該労働者に対し、不利益な取扱いをしてはならないものとしたこと。(第
  66条の10第3項関係)

 4 事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、3の面接指導の結果を記録しておかなければなら
  ないものとしたこと。(第66条の10第4項関係)

 5 事業者は、3の面接指導の結果に基づき、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、
  厚生労働省令で定めるところにより、医師の意見を聴かなければならないものとしたこと。(第66条
  の10第5項関係)

 6 事業者は、5の医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮し
  て、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講ずるほか、当
  該医師の意見の衛生委員会若しくは安全衛生委員会又は労働時間等設定改善委員会への報告その他の
  適切な措置を講じなければならないものとしたこと。(第66条の10第6項関係)

 7 厚生労働大臣は、6により事業者が講ずべき措置の適切かつ有効な実施を図るため必要な指針を公
  表するものとしたこと。(第66条の10第7項関係)

 8 厚生労働大臣は、7の指針を公表した場合において必要があると認めるときは、事業者又はその団
  体に対し、当該指針に関し必要な指導等を行うことができるものとしたこと。(第66条の10第8項関係)

 9 国は、心理的な負担の程度が労働者の健康の保持に及ぼす影響に関する医師等に対する研修を実施
  するよう努めるとともに、2により通知された検査の結果を利用する労働者に対する健康相談の実施
  その他の当該労働者の健康の保持増進を図ることを促進するための措置を講ずるよう努めるものとし
  たこと。(第66条の10第9項関係)

 10 1の検査又は3の面接指導の実施の事務に従事した者は、その実施に関して知り得た労働者の秘密を
  漏らしてはならないものとしたこと。(第104条関係)

 11 産業医を選任しなければならない事業場以外の事業場についての1から9までの適用については、当
  分の間、1のうち「行わなければ」とあるのは「行うよう努めなければ」とするものとしたこと。(附
  則第4条関係)

第4 受動喫煙の防止
 1 事業者は、労働者の受動喫煙(室内又はこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされ
  ることをいう。以下同じ。)を防止するため、当該事業者及び事業場の実情に応じ適切な措置を講ず
  るよう努めるものとしたこと。(第68条の2関係)

 2 国は、労働者の健康の保持増進に関する措置の適切かつ有効な実施を図るため、受動喫煙の防止の
  ための設備の設置の促進その他の必要な援助に努めるものとしたこと。(第71条第1項関係)

第5 事業場の安全又は衛生に関する改善措置等
 1 厚生労働大臣は、重大な労働災害として厚生労働省令で定めるもの(以下「重大な労働災害」とい
  う。)が発生した場合において、重大な労働災害の再発を防止するため必要がある場合として厚生労
  働省令で定める場合に該当すると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、事業者に対し、
  その事業場の安全又は衛生に関する改善計画(以下「特別安全衛生改善計画」という。)を作成し、こ
  れを厚生労働大臣に提出すべきことを指示することができるものとしたこと。(第78条第1項関係)

 2 事業者は、特別安全衛生改善計画を作成しようとする場合には、当該事業場に労働者の過半数で組
  織する労働組合があるときにおいてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないとき
  においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならないものとしたこと。(第78条第2
  項関係)

 3 1の事業者及びその労働者は、特別安全衛生改善計画を守らなければならないものとしたこと。(第
  78条第3項関係)

 4 厚生労働大臣は、特別安全衛生改善計画が重大な労働災害の再発の防止を図る上で適切でないと認
  めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、事業者に対し、当該特別安全衛生改善計画を変更
  すべきことを指示することができるものとしたこと。(第78条第4項関係)

 5 厚生労働大臣は、1又は4に規定する指示を受けた事業者がその指示に従わなかった場合又は特別安
  全衛生改善計画を作成した事業者が特別安全衛生改善計画を守っていないと認める場合において、重
  大な労働災害が再発するおそれがあると認めるときは、当該事業者に対し、重大な労働災害の再発の
  防止に関し必要な措置をとるべきことを勧告することができるものとしたこと。(第78条第5項関係)

 6 厚生労働大臣は、5の勧告を受けた事業者がこれに従わなかったときは、その旨を公表することが
  できるものとしたこと。(第78条第6項関係)

第6 計画の届出の廃止
   第88条第1項の規定による建設物又は機械等の設置等の計画の届出義務を廃止するものとしたこと。
   (第88条第1項関係)

第7 電動ファン付き呼吸用保護具
 1 電動ファン付き呼吸用保護具を、その譲渡、貸与又は設置に際して厚生労働大臣が定める規格又は
  安全装置を具備しなければならないものに追加するものとしたこと。(別表第2第16号関係)

 2 電動ファン付き呼吸用保護具を、その製造又は輸入に際して厚生労働大臣の登録を受けた者が行う
  型式についての検定(以下「型式検定」という。)を受けなければならないものに追加するものとした
  こと。(別表第4第13号関係)

 3 電動ファン付き呼吸用保護具に係る型式検定を行おうとして2の登録の申請をした者(以下「登録申
  請者」という。)について、厚生労働大臣が必ず登録をしなければならないものとされるための要件
  の一つとして、登録申請者が別表第14に掲げる設備(材料試験機、ガス濃度計測器、内圧試験装置、
  通気抵抗試験装置、粉じん捕集効率測定装置、排気弁気密試験装置、漏れ率試験装置、最低必要風量
  試験装置、公称稼働時間試験装置及び騒音計)を用いて型式検定を行うものであることを規定するも
  のとしたこと。(別表第14関係)

第8 その他
   その他所要の規定の整備を行うものとしたこと。

第9 附則
 1 施行期日
   この法律は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行するも
   のとしたこと。ただし、第9の2の(4)は公布の日から、第6、第7並びに第9の2の(1)から(3)まで及
   び4の一部は公布の日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日から、第3は公布
   の日から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日から、第2及び第9の4の一部は
   公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとしたこと。
   (附則第1条関係)

 2 経過措置
   (1) 第7の施行日前に製造され、又は輸入された電動ファン付き呼吸用保護具については、第7の1
    を適用しないものとし、第7の2の型式検定を受けることを要しないものとしたこと。(附則第2条
    及び第3条関係)

   (2) 第6の施行日前に改正前の労働安全衛生法第88条第1項の規定により計画の届出をした事業者に
    係る同条第7項の規定の適用及び労働基準監督署長が第6の施行日前にした同項の規定による工事
    の開始の差止め又は当該計画の変更の命令(同条第1項の規定による届出に係る場合に限る。)の
    効力については、なお従前の例によるものとしたこと。(附則第4条関係)

   (3) この法律の施行前にした行為、(2)によりなお従前の例によることとされる場合におけるこの
    法律の施行後にした行為及び改正前の労働安全衛生法第88条第1項の規定に違反する行為(第6の
    施行日以後にした行為のうち、同項に規定する届出をせずに第6の施行日から起算して29日を経
    過する日までに開始した工事に係るものに限る。)に対する罰則の適用については、なお従前の
    例によるものとしたこと。(附則第5条関係)

   (4) (1)から(3)までのほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定めるものとしたこ
    と。(附則第6条関係)

 3 検討規定
   政府は、この法律の施行後5年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加
  え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとしたこと。(附則第7
  条関係)

 4 関係法律の整備
   その他関係法律について、所要の規定の整備を行うものとしたこと。(附則第8条及び第9条関係)