平成24年度ばく露実態調査対象物質に係るリスク評価結果に基づく労働者の健康障害防止対策の徹底について

基安発0129第1号
平成26年1月29日
都道府県労働局長 殿
厚生労働省労働基準局安全衛生部長

平成24年度ばく露実態調査対象物質に係るリスク評価結果に基づく労働者の健康障害防止対策の徹底について

 今般、「化学物質のリスク評価検討会」(以下「リスク評価検討会」という。)において、N,N-ジメチル
アセトアミド、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(別名DEHP)、リフラクトリーセラミックファイバー、酸
化チタン(ナノ粒子)、三酸化二アンチモン、金属インジウム、ジメチル-2,2-ジクロロビニルホスフェイ
ト(別名DDVP)の7物質についてのリスク評価、また、発がんのおそれのある有機溶剤(クロロホルム、四塩
化炭素、1,4-ジオキサン、1,2-ジクロルエタン(1,2-ジクロロエタン)、ジクロルメタン(ジクロロメタン)、
スチレン、1,1,2,2-テトラクロルエタン(1,1,2,2-テトラクロロエタン)、テトラクロルエチレン(テトラ
クロロエチレン)、トリクロルエチレン(トリクロロエチレン)及びメチルイソブチルケトンの10物質)の今
後の対応についての検討を行い、その結果が取りまとまった。このうち、リスク評価検討会報告書におい
てリスクが高いとされたジメチル-2,2-ジクロロビニルホスフェイト及び発がんのおそれのある有機溶剤
については、「化学物質による労働者の健康障害防止措置に係る検討会」(以下「健康障害防止措置検討
会」という。)において、具体的な健康障害防止措置の検討を行い、その結果がとりまとまったところで
ある。ついては、これらの結果を踏まえ、下記のとおり、関係事業者等に対し指導されたい。
 併せて、別添1により関係事業者団体等の長に対して傘下会員事業者への周知等を要請したので了知さ
れたい。
 また、上記の検討会報告書の概要を別添2及び3として添付するが、報告書全文(本文及び別冊)は厚生労
働省のホームページ(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r985200000376uw.html(リスク評価検討会)http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000035885.html(健康障害防止措置検討会http://www.mhlw.go.
jp/stf/shingi/))に掲載しているので了知されたい。
1 詳細リスク評価を行い制度的対応を念頭において健康障害防止措置の検討を行うべきとされた物質に
 ついて
   ジメチル-2,2-ジクロロビニルホスフェイト(別名DDVP)については、詳細リスク評価の結果、当該
  物質を含有する製剤を用いて行う成形加工又は包装の業務においては、事業場の作業工程に共通して
  労働者に健康障害を発生させるリスク(以下単に「リスク」という。)が高いことが認められたところ
  であり、さらに当該作業に係るリスク低減のための健康障害防止措置等の検討を行ったところ、作業
  環境測定の実施や発散抑制措置等の措置が必要となったところである。このため、今後予定する法令
  改正を待たず速やかに労働安全衛生法(昭和47年法律第57号。以下「法」という。)第28条の2第1項の
  規定に基づき、当該物質に関し有害性等の調査を行い、その結果に基づいて労働安全衛生規則(昭和
  47年労働省令第32号。以下「安衛則」という。)第576条第577条第593条第594条等の規定に基
  づく措置を講ずることにより、リスクの低減を図るよう、都道府県労働局及び各労働基準監督署(以
  下「局署」という。)において関係事業者等に対し指導すること。

2 発がんのおそれのある有機溶剤について
   発がんのおそれのある有機溶剤については、リスク評価検討会において、「これらの物質は、有機
  溶剤中毒予防規則(昭和47年労働省令第36号)により一連のばく露低減措置が義務づけられているが、
  職業がんの原因となる可能性があることを踏まえ、より一層の健康障害防止措置を充実させるため、
  これらの物質を製造または使用して行う有機溶剤業務を対象として、職業がんの予防の観点から健康
  障害防止措置を講じる必要がある」と結論づけられた。さらに、健康障害防止措置の具体的内容の検
  討を行ったところ、①作業記録の作成、②記録(特殊健康診断結果の記録、作業環境測定の測定結果と
  評価結果の記録、作業記録)の30年間の保存、③名称・人体に及ぼす作用・取扱上の注意事項・使用
  保護具の掲示等の措置を行うことが必要とされたところである。
   このため、今後予定する法令改正を待たず速やかに同措置を講ずることにより、職業がん予防の取
  組の促進を図るよう、局署において関係事業者等に対し指導すること。
   なお、発がんのおそれのある有機溶剤のうち、クロロホルム、四塩化炭素、1,4-ジオキサン、1,2-
  ジクロルエタン(1,2-ジクロロエタン)、ジクロルメタン(ジクロロメタン)、テトラクロルエチレン
  (テトラクロロエチレン)の6物質については、すでに「労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づき厚
  生労働大臣が定める化学物質」(平成3年労働省告示第57号)に定められ、これらの物質の製造、取扱
  い等に際し、事業者が講ずべき措置について定めた「労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づき厚
  生労働大臣が定める化学物質による労働者の健康障害を防止するための指針」(平成24年公示第23号)
  (以下「がん原性指針」という。)の中で、①作業記録の作成と30年間の保存、②測定・評価結果の30
  年間の保存、③SDSの内容の作業場への掲示等の措置を求めているので、これらの措置については同
  告示及び同指針にも基づき指導すること。

3 初期リスク評価を行った物質について
  (1) 高いリスクが認められたため、さらに詳細なリスク評価が必要とされた物質について
    リフラクトリーセラミックファイバー及び酸化チタン(ナノ粒子)の2物質については、初期リスク
   評価の結果、一部の事業場の作業工程においてリスクが高いことが確認されたため、平成25年度に
   おいて、引き続き詳細リスク評価のためのばく露実態調査を行っており、今後その結果によりリス
   クの高い作業工程を明らかにするとともに、必要なリスク低減措置について検討することとしてい
   る。
    しかしながら、これらの物質は有害性の高い物質であり、かつ、事業場において高いばく露が生
   じる可能性があることから、速やかに法第28条の2第1項の規定に基づき、当該物質に関し有害性等
   の調査を行い、その結果に基づいて安衛則第576条第577条第593条第594条等の規定に基づく
   措置を講ずることにより、リスクの低減を図るよう、局署において関係事業者等に対し指導するこ
   と。

  (2) 引き続き適切な管理を行うべき物質について
    N,N-ジメチルアセトアミド及びフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(別名DEHP)の2物質については、
   初期リスク評価の結果、事業場において高いリスクは確認されなかった。
    しかしながら、これらの物質は有害性の高い物質であることから、必要に応じて安衛則第576条、
   第577条第593条第594条等に基づく措置を講ずるほか、事業者による自主的な管理を推進する必
   要がある。
    特に、N,N-ジメチルアセトアミドについては、平成25年10月1日付けの改正により「がん原性指針」
   の対象となったところであるので、引き続き、同指針に基づく措置を講じるよう、局署において関
   係事業者等に対し指導すること。

4 その他(継続検討となった物質について)
   三酸化二アンチモン及び金属インジウムの2物質については、詳細リスク評価の結果、有害性の評
  価についての情報が不足しており、今後の調査研究の進展を待って評価することとなっていること。



「発ガンのおそれのある有機溶剤を取扱う際には 作業記録を作成、保存しましょう」PDFが開きます(PDF:198KB)
このページのトップへ戻ります