安全衛生情報センター
1 リスク評価物質 「ヒトに対しておそらく発がん性がある物質」又は「ヒトに対して発がん性が疑われる」とされてい る次の物質 (1) 詳細リスク評価(3物質) ○ジメチル―2,2―ジクロロビニルホスフェイト(別名DDVP) ○金属インジウム ○三酸化二アンチモン (2) 初期リスク評価(4物質) ○N,N―ジメチルアセトアミド ○フタル酸ビス(2―エチルヘキシル)(別名DEHP) ○リフラクトリーセラミックファイバー ○酸化チタン(ナノ粒子) 2 リスク評価の手法 リスク評価は、「有害性の評価」と「ばく露の評価」から行われる。 (1) 「有害性の評価」は、対象となる物質について主要文献から有害性の種類や程度などを把握し、得 られた情報から有害性評価を行うとともに、労働者が勤労生涯を通じてその物質に毎日さらされた場 合に健康に悪影響が生じるばく露限界値(「評価値」)を設定する。 (2) 「ばく露の評価」は、「有害物ばく露作業報告」(労働安全衛生規則第95条の6の規定に基づく報告) が出された事業場に対して実態調査を行い、それにより得られた労働者のばく露測定結果からばく露 濃度を算出する。 (3) 有害性の評価から得られた「評価値」と、ばく露の評価から得られた「ばく露濃度」を比較するこ とにより、労働者の健康障害の生じるリスクの高低を判定する。 3 リスク評価の結果及び今後の対応 7物質についてリスク評価を行ったところ、下記のように判定された。また、この結果を踏まえて、 下記に示すとおり今後の対応を行っていく。
物質名 | 評価結果の概要 | 今後の対応 |
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○ジメチル―2,2―ジクロロビニルホスフェイト (別名DDVP) | 成形加工又は包装の業務を行う事業場で、適切なばく露防止措置が講じられない状況では、労働者の健康障害のリスクが高いものと考えられることから、制度的対応を念頭において健康障害防止措置の検討を行うべきである。 |
化学物質による労働者の健康障害防止措置に係る検討会において、具体的な措置を検討するとともに、関係事業者に対し適切な管理が行われるよう行政指導を行う。 |
○N,N―ジメチルアセトアミド | ばく露の測定結果から、リスクは低いと考えられるが、有害性の高い物質であることから、関係事業者による自主的なリスク管理を進めることが適当である。 |
関係事業者に対し、自主的なリスク管理を行うよう行政指導を行う。 |
○フタル酸ビス(2―エチルヘキシル)(別名DEHP) | ばく露の測定結果から、リスクは低いと考えられるが、有害性の高い物質であることから、関係事業者による自主的なリスク管理を進めることが適当である。 |
関係事業者に対し、自主的なリスク管理を行うよう行政指導を行う。 |
○リフラクトリーセラミックファイバー | 一部の事業場で、ばく露が高い状況が見られたことから、さらに詳細なリスク評価が必要であり、ばく露の高かった要因を明らかにするとともに、関係事業者による自主的なリスク管理を進めることが適当である。 |
関係事業者に対し、自主的なリスク管理を行うよう行政指導を行うとともに、今後、詳細なリスク評価を実施する。 |
○酸化チタン(ナノ粒子) | 一部の事業場で、ばく露が高い状況が見られたことから、さらに詳細なリスク評価が必要であり、ばく露の高かった要因を明らかにするとともに、関係事業者による自主的なリスク管理を進めることが適当である。 |
関係事業者に対し、自主的なリスク管理を行うよう行政指導を行うとともに、今後、詳細なリスク評価を実施する。 |
○金属インジウム | 金属インジウムの有害性の評価については、当該物質の有害性に関する情報が不足しているため、現時点で評価することができない。 |
今後の調査研究の進展を待って評価することとする。 |
○三酸化二アンチモン | 三酸化二アンチモンの有害性の評価については、当該物質の有害性に関する情報が不足しているため、現時点で評価することができない。 |
今後の調査研究の進展を待って評価することとする。 |
4 発がん性のおそれのある有機溶剤の今後の対応 次の10物質については、有機溶剤中毒予防規則により一連のばく露低減措置が義務づけられている一 方で、職業がんの予防の観点からは健康障害防止措置が必ずしも十分とはいえない状況にあることから、 これらの物質を製造し又は使用して行う有機溶剤業務を対象として、職業がんの予防の観点から健康障 害防止措置を講じる必要がある。 ○クロロホルム ○四塩化炭素 ○1,4―ジオキサン ○1,2―ジクロルエタン ○ジクロルメタン ○スチレン ○1,1,2,2―テトラクロルエタン ○テトラクロルエチレン ○トリクロルエチレン ○メチルイソブチルケトン <添付資料> ○別紙1 リスク評価物質(3物質)に関する情報 ○別紙2 化学物質のリスク評価検討会参集者名簿及び開催経緯