安全衛生情報センター
「東日本大震災により生じた放射性物質により汚染された土壌等を除染するための業務等に係る電離放 射線障害防止規則」(平成23年厚生労働省令第152号。以下「除染電離則」という。)等の施行については、 平成23年12月22日付け基発1222第7号「東日本大震災により生じた放射性物質により汚染された土壌等を 除染するための業務等に係る電離放射線障害防止規則の施行について」により指示しているが、事業者が、 「除染等業務に従事する労働者の放射線障害防止のためのガイドライン」(平成23年12月22日付け基発122 2第6号。以下「ガイドライン」という。)と相まって除染電離則に規定された措置を的確に実施するため には、現場の実態に即した放射線障害防止対策及び土壌等の除染等の業務又は廃棄物収集等業務(以下「除 染等業務」という。)における労働災害防止対策が講じられることが重要である。 ついては、今後の除染等業務における安全衛生対策を下記により推進することとしたので、その実施に 遺漏なきを期されたい。
1 基本的な考え方 「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出され た放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法」(平成23年法律第110号。以下「特措法」 という。)が平成24年1月1日に全面施行され、今後、除染等業務が本格化することに伴い、除染等業務に おける放射線障害や労働災害の発生が懸念されることから、その対策の徹底を図る必要がある。 このため、特に、特措法第25条第1項に規定する除染特別地域又は同法第32条第1項に規定する汚染状 況重点調査地域(以下「除染特別地域等」という。)に指定された地域を管轄する都道府県労働局におい ては、次の点に留意の上、除染等業務における安全衛生対策を重点対策として取り組むこととする。 (1) 除染等業務における放射線障害防止対策については、より一層的確な推進を図るため、次の事項の 実施について指導を行うこと。 ア 除染特別地域等内における除染等業務を行う事業の事業者(以下「除染等事業者」という。)に対 しては、除染電離則に規定された事項のほか、ガイドラインに定める事項 イ 除染等事業者以外の事業者で自らの敷地や施設等において除染等の作業を行う事業者に対しては、 ガイドラインに定める事項のうち必要な事項 ウ 除染特別地域等内ではない場所において除染等の作業を行う事業者に対しては、ガイドラインに 定める事項のうち必要な事項 (2) 元方事業者に対しては、労働安全衛生関係法令やガイドラインに基づき、安全衛生管理体制を確立 させるとともに、関係請負人の労働者の被ばく管理も含めた一元管理を実施させること。 (3) 除染等業務においては、放射線障害のみならず、各種の作業に伴う墜落・転落災害や建設機械関係 災害の発生が懸念されるため、別紙の「除染等業務における主な安全確保措置について」に基づき、 作業形態や作業に使用する機械等に応じた安全確保措置を実施させること。 (4) 除染等業務に係る作業(以下「除染等作業」という。)については、放射線障害防止のため、防じん マスク等の呼吸用保護具及び保護衣等を着用して行う必要があり、熱中症の発生が懸念されるため、 平成21年6月19日付け基発第0619001号「職場における熱中症の予防について」に定める必要な事項を 実施させること。 (5) 除染特別地域等内における土壌等の除染等の措置は、国、都道府県、市町村等(以下「市町村等」と いう。)が実施することとされ、発注者となることから、市町村等との積極的な連携を図ることによる 作業現場の効果的な把握に努めるとともに、発注者である市町村等に対し、除染等業務に従事する労 働者(有期契約労働者及び派遣労働者を含む。以下「除染等業務従事者」という。)の安全衛生の確保 について必要な要請を行うこと。 (6) 除染電離則及びガイドラインの周知等については、管内状況に応じて、除染等事業者や関係事業者 団体等に対して実施すること。 (7) 東京電力福島第一原子力発電所における緊急作業に従事した労働者を除染等業務に従事させる事業 者に対し、電離放射線障害防止規則(昭和47年労働省令第41号。以下「電離則」という。)第59条の2に 基づく被ばく線量等の記録等の提出について周知等を行うこと。 2 作業現場の把握等 除染電離則等に基づく放射線障害防止等の措置の履行確保を図るため、次の点に留意の上、作業現場 の確実な把握に取り組むこと。 (1) 除染特別地域内における土壌等の除染等の措置は、環境大臣が特別除染実施計画を策定し、国が実 施することとされ、発注者となること、また、除染電離則第10条に基づく作業の届出(以下「作業届」 という。)の対象となる平均空間線量率が2.5マイクロシーベルト毎時を超える作業現場は、概ね除染 特別地域内にあることから、作業届の懈怠を防止する観点にも立って、環境省の地方支分部局との連 携を図ることにより、作業現場の把握に努めること。 (2) 汚染状況重点調査地域内における土壌等の除染等の措置は、市町村が除染実施計画を策定し、市町 村等が実施することとされ、発注者となるので、その発注担当部署との連携を図ることにより、作業 現場の把握に努めること。 なお、汚染状況重点調査地域内における作業現場であっても、平均空間線量率が2.5マイクロシーベ ルト毎時を超えるものは、作業届の対象となること。 (3) 一般からの情報又は関係行政機関からの情報により、作業届の対象であるにもかかわらず提出がな されないおそれのある作業現場を把握した場合には、局・署間において情報共有を図ること。 (4) 提出された作業届については、届出様式中の次のアからオまでに掲げる欄ごとに、記載されている 内容を確認すること。また、その際、必要に応じ、関係リーフレット等を活用した指導を行うこと。 なお、イに掲げる欄については、当該期間について変更が生じる場合には、作業実施前に変更後の 当該期間について連絡するよう指導すること。 ア 「作業の場所」の欄 作業を行う範囲が具体的に記載されていること。 イ 「作業の実施期間」の欄 実際に当該作業が行われる期間が記載されていること。 ウ 「作業指揮者の氏名」の欄 作業指揮者の氏名が記載されていること。 エ 「作業を行う場所の平均空間線量率」の欄 事前調査により把握した除染等作業の場所の平均空間線量率が記載されていること。なお、平均 空間線量率は「東日本大震災により生じた放射性物質により汚染された土壌等を除染するための業 務等に係る電離放射線障害防止規則第二条第六項等の規定に基づく厚生労働大臣が定める方法、基 準及び区分」(平成23年厚生労働省告示第468号)第2条に定める計算方法により算定されているもの であること。 オ 「関係請負人一覧及び労働者数の概数」の欄 除染等作業に係るすべての関係請負人について記載されていること。 3 監督指導及び個別指導の実施 (1) 監督指導又は個別指導(以下「監督指導等」という。)の実施に当たっては、[1]被ばく線量管理、 [2]被ばく低減のための措置、[3]汚染の防止、[4]特別の教育、[5]元方事業者による被ばく状況の一 元管理、[6]安全の確保等を重点事項とすること。 (2) 上記2の(3)により把握した作業届の提出がなされていない作業現場のほか、作業届の内容や市町村 等からの情報等から除染電離則等違反のおそれがある作業現場等については、監督指導等を実施する こと。 (3) 上記2の(3)により把握した作業届を提出していないなどの事業者の店社についても、監督指導等を 実施すること。 (4) 監督指導等を実施した結果、労働安全衛生関係法令等違反その他指導すべき事項が認められた場合 には、所要の措置を講ずること。 (5) 監督指導等に当たっては、関係事業者に対し、関係リーフレット等を活用して除染電離則やガイド ラインの趣旨、講ずべき措置等の必要性を懇切丁寧に説明すること。 4 発注者に対する要請等 (1) 発注者である市町村等に対し、除染等業務従事者の安全衛生の確保に配慮した発注を行うとともに、 除染等事業者による除染電離則等に基づく放射線障害防止等の措置の確実な履行について必要な指導 援助を行うよう、要請を行うこと。特に次の事項についてその実施を強く要請すること。 ア 除染等業務従事者に対し、除染電離則第19条に基づく特別の教育(以下「特別教育」という。)を 実施しているかを確認した上で発注を行うこと。 イ 除染検査場所の設置及び汚染検査の適切な実施について、発注者として除染等事業者に対して必 要な指導援助を行うこと。 (2) 上記(1)の要請に当たっては、次の事項に留意すること。 ア 特別教育の実施を含む除染等業務従事者の安全衛生の確保に関する事項を発注仕様書に盛り込む ようにすること。 イ 特別教育については、必ずしも公的機関が実施する講習等を受講させる必要はなく、除染等業務 特別教育規程(平成23年厚生労働省告示第469号)に基づき、事業者自らによって実施して差し支えな いことを理解させること。 5 除染特別地域等における重要な生活基盤の点検、整備作業の放射線障害防止等 (1) 今後、本年3月末を目途として実施される避難区域の区分の変更に伴い、除染特別地域等における生 活基盤の点検、整備の作業が活発化することが予想されるため、これら作業中に、土壌の掘削等、除 染作業に類似する作業(以下「除染類似作業」という。)が含まれる作業を実施する事業者に対して、 平成24年2月14日付け基安発0214第1号「除染特別地域等における重要な生活基盤の点検、整備に従事 する労働者の放射線障害防止措置について」に基づき、ガイドラインに定める事項の適切な実施を指 導すること。 また、2.5マイクロシーベルト毎時を超える地域における除染類似作業の準備作業として行われる放 射線測定、測量等の作業を実施する事業者に対し、労働者全員に個人線量計を着用させて線量管理を行 うよう指導すること。 (2) 上下水道施設等、除去土壌又は汚染廃棄物の処分を行う事業場については、従来どおり電離則が適 用されているので、平成23年6月23日付け基安発0623第1号「放射性物質が検出された上下水処理副次 産物及び災害廃棄物の当面の取扱いについて」に基づき、関係事業者に対し、必要な指導を行うこと。