|
|
基発第0330004号
平成18年3月30日
都道府県労働局長 殿
厚生労働省労働基準局長
化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針について
(平成27年9月18日 基発0918第3号により廃止)
労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第28条の2第2項の規定に基づき、「化学物質等による危険性又
は有害性等の調査等に関する指針」(以下「指針」という。)を作成し、その名称及び趣旨を、別添1の
とおり平成18年3月30日付け官報に公示した。
ついては、別添2のとおり指針を送付するので、労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第24条
の12において準用する第24条の規定により、都道府県労働局労働衛生主務課において閲覧に供されたい。
また、その趣旨、内容等について、下記事項に留意の上、事業者及び関係事業者団体等に対する周知等
を図られたい。
なお、平成12年3月31日付け基発第212号「「化学物質等による労働者の健康障害を防止するため必要な
措置に関する指針」について」は、本通達をもって廃止する。
記
1 趣旨等について
(1)指針の1は、本指針の趣旨を定めているほか、「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」(平成
18年3月10日付け危険性又は有害性等の調査等に関する指針公示第1号)との関係について規定したも
のであること。
(2)指針の「危険性又は有害性等の調査」は、ILO(国際労働機関)等において「リスクアセスメント
(risk assessment)」等の用語で表現されているものであること。
2 適用について
(1)指針の2は、労働者の就業に係るすべての化学物質による危険性又は有害性を対象とすることを規定
したものであること。
(2)指針の2の「化学物質等」には、製造中間体(製品の製造工程中において生成し、同一事業場内で他
の化学物質に変化する化学物質をいう。)が含まれること。
(3)指針の2の「危険性又は有害性」とは、労働者に負傷又は疾病を生じさせる潜在的な根源であり、
ISO(国際標準化機構)、ILO等においては「危険源」、「危険有害要因」、「ハザード(hazard)」
等の用語で表現されているものであること。
3 実施内容について
(1)指針の3は、指針に基づき実施すべき事項の骨子を示したものであること。
(2)指針の3の「危険性又は有害性の特定」は、ISO等においては「危険源の同定 (hazard identifi
cation)」等の用語で表現されているものであること。
4 実施体制等について
(1)指針の4は、調査等を実施する際の体制について規定したものであること。
(2)指針の4(1)アの「事業の実施を統括管理する者」には、総括安全衛生管理者、統括安全衛生責任
者が含まれること。また、総括安全衛生管理者等の選任義務のない事業場においては、事業場を実質
的に統括管理する者が含まれること。
(3)指針の4(1)イの「安全管理者、衛生管理者等」の「等」には、安全衛生推進者が含まれること。
(4)指針の4(1)ウの「化学物質管理者」は、事業場で製造等を行う化学物質等、作業方法、設備等の
事業場の実態に精通していることが必要であるため、当該事業場に所属する労働者等から指名される
ことが望ましいものであること。
(5)指針の4(1)エの「安全衛生委員会等の活用等」には、安全衛生委員会の設置義務のない事業場に
おいて実施される関係労働者の意見聴取の機会を活用することが含まれるものであること。
また、安全衛生委員会等の活用等を通じ、調査等の結果を労働者に周知する必要があること。
(6)指針の4(1)オの「機械設備等」の「等」には、電気設備が含まれること。
(7)調査等の実施に関し、専門的な知識を必要とする場合等には、外部のコンサルタントの助力を得る
ことも差し支えないこと。
5 実施時期について
(1)指針の5は、調査等を実施する時期を規定したものであること。
(2)指針の5(1)アの「化学物質等に係る建設物」には、化学プラントが含まれること。
(3)指針の5(1)イの設備には、仮配管等の仮設のものも含まれるとともに、設備の変更には、設備の
配置替えが含まれること。
(4)指針の5(1)オの「次に掲げる場合等」の「等」には、地震等により、建設物等に被害が出た場合、
もしくは被害が出ているおそれがある場合が含まれること。
(5)指針の5(1)オ(イ)の「化学物質等による危険性又は有害性等に係る新たな知見」には、例えば、
化学物質等の危険性又は有害性に係る新たに明らかになった特性、化学物質等による危険性又は有害
性のGHSの分類の追加又はその区分の変更、ばく露限界の新規設定又は変更があること。
(6)指針の5(1)オ(ウ)の規定は、実施した調査等について、設備の経年劣化等の状況の変化に対応
するため、定期的に再度調査等を実施し、それに基づくリスク低減措置を実施することが必要である
ことから設けられたものであること。なお、ここでいう「一定の期間」については、事業者が設備や
作業等の状況を踏まえ決定し、それに基づき計画的に調査等を実施すること。
(7)指針の5(1)オ(ウ)の「新たな安全衛生に係る知見」には、例えば、社外における類似作業で発
生した災害など、従前は想定していなかったリスクを明らかにする情報があること。
(8)指針の5(3)は、実際に建設物、設備等の設置等の作業を開始する前に、設備改修計画、工事計画
や施工計画等を作成することが一般的であり、かつ、それら計画の段階で調査等を実施することでよ
り効果的なリスク低減措置の実施が可能となることから設けられた規定であること。また、計画策定
時に調査等を行った後に指針の5(1)の作業等を行う場合、同じ事項に重ねて調査等を実施する必要
はないこと。
(9)既に設置されている建設物等や採用されている作業方法等であって、調査等が実施されていないも
のに対しては、指針の5(1)にかかわらず、計画的に調査等を実施することが望ましいこと。
6 対象の選定について
(1)指針の6は、調査等の実施対象の選定基準について規定したものであること。
(2)指針の6(2)の「化学物質等による危険又は健康障害のおそれがある事象が発生した作業等」の
「等」には、労働災害を伴わなかった危険又は健康障害のおそれのある事象(ヒヤリハット事例)の
あった作業、労働者が日常不安を感じている作業、過去に事故のあった設備等を使用する作業、又は
操作が複雑な化学物質等に係る機械設備等の操作が含まれること。
(3)指針の6(2)の「合理的に予見可能」とは、負傷又は疾病を予見するために十分な検討を行えば、
現時点の知見で予見し得ることをいうこと。
7 情報の入手について
(1)指針の7は、調査等の実施に当たり、事前に入手すべき情報を規定したものであること。
(2)指針の7(1)の「非定常作業」には、機械設備等の保守点検作業や補修作業に加え、予見される緊
急事態への対応も含まれること。
なお、工程の切替(いわゆる段取り替え)に関する情報についても入手すべきものであること。
(3)指針の7(1)アからキまでについては、以下に留意すること。
ア 指針の7(1)アの「危険性又は有害性に関する情報」には、例えば、使用する化学物質の化学物
質等安全データシート(MSDS)、使用する設備等の仕様書、取扱説明書、「機械等の包括的な安全
基準に関する指針」(平成13年6月1日付け基発第501号)に基づき提供される「使用上の情報」が
あること。
イ 指針の7(1)イの「作業手順書等」の「等」には、例えば、操作説明書、マニュアルがあること。
ウ 指針の7(1)ウの「作業の周辺の環境に関する情報」には、例えば、周辺の化学物質等に係る機
械設備等の配置状況や当該機械設備等から外部へ拡散する化学物質等の情報があること。また、発
注者において行われたこれらに係る調査等の結果も含まれること。
エ 指針の7(1)エの「作業環境測定結果等」の「等」には、例えば、特殊健康診断結果、生物学的
モニタリング結果があること。
オ 指針の7(1)オの「複数の事業者が同一の場所で作業を実施する状況に関する情報」には、例え
ば、塗装作業の実施予定、化学物質等に係る設備の整備作業の状況があること。
カ 指針の7(1)カの「災害事例、災害統計等」には、例えば、事業場内の災害事例、災害の統計・
発生傾向分析、ヒヤリハット、トラブルの記録、労働者が日常不安を感じている作業等の情報があ
ること。また、同業他社、関連業界の災害事例等を収集することが望ましいこと。
キ 指針の7(1)キの「その他、調査等の実施に当たり参考となる資料等」の「等」には、例えば、
化学物質等による危険性又は有害性に係る文献、作業を行うために必要な資格・教育の要件、セー
フティ・アセスメント指針に基づく調査等の結果、危険予知活動(KYT)の実施結果、職場巡視の
実施結果があること。
(4)指針の7(2)については、以下の事項に留意すること。
ア 指針の7(2)アは、化学物質等による危険性又は有害性に係る情報が化学物質等安全データシー
ト(MSDS)により伝達されることが調査等において重要であることから、化学物質等を取得する事
業者は当該化学物質等を譲渡し、又は提供する者に、必要に応じ当該化学物質等による危険性又は
有害性の調査等を求めること等により、化学物質等安全データシート(MSDS)を入手することを定
めたものであること。
イ 指針の7(2)イは、「機械等の包括的な安全基準に関する指針」、ISO、JISの「機械類の安全性」
の考え方に基づき、化学物質等に係る機械設備等の設計・製造段階における安全対策を行うことが
重要であることから、機械設備等を使用する事業者は、導入前に製造者に調査等の実施を求め、使
用上の情報等の結果を入手することを定めたものであること。
ウ 指針の7(2)ウは、使用する機械設備等に対する設備的改善は管理権原を有する者のみが行い得
ることから、その機械設備等を使用させる前に、管理権原を有する者が調査等を実施し、その結果
を機械設備等の使用者が入手することを定めたものであること。
また、爆発等の危険性のあるものを取り扱う機械設備等の改造等を請け負った事業者が、内容物
等の危険性を把握することは困難であることから、管理権原を有する者が調査等を実施し、その結
果を請負業者が入手することを定めたものであること。
エ 指針の7(2)エは、同一の場所で混在して実施する作業を請け負った事業者は、混在の有無や混
在作業における化学物質等による危険性又は有害性を把握できないので、元方事業者がこれらの事
項について事前に調査等を実施し、その結果を関係請負人が入手することを定めたものであること。
オ 指針の7(2)オは、化学物質等の製造工場や化学プラント等の建設、改造、修理等の現場におい
ては、請負事業者が混在して作業を行っていることから、どの請負事業者が調査等を実施すべきか
明確でない場合があるため、元方事業者が調査等を実施し、その結果を関係請負人が入手すること
を定めたものであること。
8 危険性又は有害性の特定について
(1)指針の8は、危険性又は有害性の特定の方法について規定したものであること。
(2)指針の8(1)の作業の洗い出しは、作業標準、作業手順等を活用し、化学物質等による危険性又は
有害性を特定するために必要な単位で実施するものであること。
なお、作業標準がない場合には、当該作業の手順を書き出した上で、それぞれの段階ごとに調査等
の対象を特定すること。
(3)指針の8(1)の「危険性又は有害性の分類」には、別添3に示すGHS(化学品の分類及び表示に関す
る世界調和システム)で定められた分類があること。各事業者が設備、作業等に応じて定めた独自の
分類がある場合には、それを用いることも差し支えないものであること。(指針の9(4)においても
同様であること。)
(4)指針の8(1)のただし書は、化学プラント等において、定常作業時には、周辺に労働者の作業場所
が無い場所を含めて、化学プラント等を工程ごとに分割する方法又は配置ごとに分割する方法等によ
り、いくつかのブロックに分割し、ブロック内の設備ごとに調査等の対象とすることによって、化学
物質等による危険性又は有害性を特定する手法を示すものであること。
また、「化学プラント等」の「等」には、例えば、紙パルプ製品製造設備、発電設備、製鉄設備が
あること。
(5)指針の8(2)は、労働者の疲労等により、負傷又は疾病が発生する可能性やその重篤度が高まるこ
とを踏まえて、危険性又は有害性の特定を行う必要がある旨を規定したものであること。したがって、
指針の9のリスク見積りにおいても、これら疲労等による可能性の度合と重篤度の付加を考慮する必
要があるものであること。
(6)指針の8(2)の「疲労等」には、単調作業の連続による集中力の欠如や、深夜労働による居眠り等
が含まれること。
9 リスクの見積りについて
(1)指針の9はリスクの見積りの方法等について規定したものであるが、その実施に当たっては、次に掲
げる事項に留意すること。
ア 指針の9は、リスクの見積りの方法、留意事項等について規定したものであること。
イ 指針の9のリスクの見積りは、優先度を定めるために行うものであるので、必ずしも数値化する
必要はなく、相対的な分類でも差し支えないこと。
ウ 指針の9(1)の「負傷又は疾病」には、それらによる死亡も含まれること。また、「危険性又は
有害性により発生するおそれのある負傷又は疾病」は、ISO等においては「危害」(harm)、「負
傷又は疾病の重篤度」とは、「危害のひどさ」(severity of harm)等の用語で表現されている
ものであること。
エ 指針の9(1)アからウまで並びに指針の9(2)ア及びイに掲げる方法は、代表的な手法の例であ
り、(1)又は(2)の柱書きに定める事項を満たしている限り、他の手法によっても差し支えない
こと。
オ 指針の9(1)アで定める手法は、負傷又は疾病の重篤度と可能性の度合をそれぞれ横軸と縦軸と
した表(行列:マトリクス)に、あらかじめ重篤度と可能性の度合に応じたリスクを割り付けてお
き、見積対象となる負傷又は疾病の重篤度に該当する列を選び、次に発生の可能性の度合に該当す
る行を選ぶことにより、リスクを見積もる方法であること。(別添4の例1に記載例を示す。)
カ 指針の9(1)イで定める手法は、負傷又は疾病の発生する可能性の度合とその重篤度を一定の尺
度によりそれぞれ数値化し、それらを数値演算(かけ算、足し算等)してリスクを見積もる方法で
あること。(別添4の例2に記載例を示す。)
キ 指針の9(1)ウで定める手法は、負傷又は疾病の重篤度、危険性へのばく露の頻度、回避可能性
等をステップごとに分岐していくことにより、リスクを見積もる方法(リスクグラフ)であること。
(別添4の例3に記載例を示す。)
(2)指針の9(2)は化学物質等による疾病に係るリスクの見積りの方法等について規定したものであるが、
その実施に当たっては、次に掲げる事項に留意すること。
ア 指針の9(2)アは、実際のばく露量を測定し、ばく露限界と比較する手法を示すものであり、ば
く露の程度を把握するに当たって指針の9(2)イの手法より確実性が高い手法であること。(別添
4−2の1参照)
イ 指針の9(2)アの「ばく露濃度等」の「等」には気中有害物質濃度が含まれること。また、「日
本産業衛生学会の「許容濃度」等」の「等」にはACGIH(米国産業衛生専門家会議)のTLV−TWA(Th
reshold Limit Value - Time Weighted Average)が含まれること。
ウ 指針の9(2)イは、指針の9(1)のアの方法の縦軸と横軸を有害性とばく露の程度に置き換えた
ものであること。(別添4−2の2参照)
(3)指針の9(3)の事項については、次に掲げる事項に留意すること。
ア 指針の9(3)は、化学物質等による危険性又は有害性により負傷が発生する可能性の度合は化学
物質等の性質とその製造等の条件との関係から、化学物質等による危険性又は有害性により疾病が
発生する可能性の度合は化学物質等へのばく露の程度から、それぞれ予測することが必要であるこ
とから、指針の9(3)に掲げた事項を把握し、活用することを規定したものであること。
イ 指針の9(3)アの「性状」とは、例えば、固体、スラッジ、液体、ミスト、気体等を指すこと。
また、例えば、固体の場合、塊、フレーク、粒、粉等を指すこと。
ウ 指針の9(3)イの「製造量又は取扱量」は、化学物質等の種類ごとに把握すべきものであること。
また、タンク等に保管されている化学物質等の量が含まれること。
エ 指針の9(3)ウの「作業」は、定常作業であるか非定常作業であるかを問わず、化学物質等によ
る危険性又は有害性による負傷又は疾病が発生する可能性のある作業をいうこと。
オ 指針の9(3)ウは、ばく露の程度に係る情報を得るために規定したものであること。
カ 指針の9(3)エの「製造等に係る作業の条件」には、例えば、製造等を行う化学物質等を取扱う
温度、圧力があること。
キ 指針の9(3)エの「関連設備の状況」には、例えば、設備の密閉度合、温度や圧力の測定装置の
設置状況があること。
ク 指針の9(3)オの「製造等に係る作業への人員配置の状況」には、化学物質等による危険性又は
有害性による負傷を受ける可能性のある者及び化学物質等へのばく露を受ける可能性のある者の人
員配置の状況が含まれること。
ケ 指針の9(3)キの「換気設備の設置状況」には、例えば、局所排気装置、全体換気装置及びプッ
シュプル型換気装置の設置状況及びその制御風速、換気量があること。
コ 指針の9(3)クの「保護具の使用状況」には、労働者への保護具の配布状況、保護具の着用義務
を労働者に履行させるための手段の運用状況及び保護具の保守点検状況が含まれること。
サ 指針の9(3)ケの「作業環境中の濃度若しくはばく露濃度の測定結果」には、調査対象作業場所
での測定結果が無く、類似作業場所での測定結果がある場合には、当該結果が含まれること。
(4)指針の9(4)前段の事項については、次に掲げる事項に留意すること。
ア 指針の9(4)前段「GHSで示されている危険性又は有害性の分類等」については、個々の化学物
質等の分類に関して適用できるものであっても、これらの化学物質等の相互間の化学反応による危
険性又は有害性(発熱等の事象)が予測される場合には、事象に即してその危険性又は有害性にも
留意すること。
イ 化学物質等による負傷の重篤度又はそれらが発生する可能性の度合の見積りに当たっては、必要
に応じ、以下の事項に留意すること。
(ア)反応、分解、発火、爆発、火災等の起こしやすさに関する化学物質の特性(感度)
(イ)爆発を起こした場合のエネルギーの発生挙動に関する化学物質の特性(威力)
(ウ)タンク等に保管されている化学物質の保管量等
ウ 化学物質等による疾病の重篤度又はそれらが発生する可能性の度合の見積りに当たっては、必要
に応じ、以下の事項に留意すること。
(ア)化学物質等の取扱量、濃度、接触の頻度等
(イ)有害化学物質等への労働者のばく露量とばく露限界との比較
(ウ)侵入経路等
エ 負傷又は疾病の重篤度や発生可能性の見積りにおいては、生理学的要因(単調連続作業等による
集中力の欠如、深夜労働による影響等)にも配慮すること。
(5)指針の9(4)後段の安全衛生機能等に関する考慮については、次に掲げる事項に留意すること。
ア 指針の9(4)後段アの「安全衛生機能等の信頼性及び維持能力」に関して考慮すべき事項には、
必要に応じ、以下の事項が含まれること。
(ア)安全装置等の機能の故障頻度・故障対策、メンテナンス状況、局所排気装置、全体換気装置の
点検状況、密閉装置の密閉度の点検、交換頻度、保管場所等の保護具の管理状況、使用者の訓練
状況等
(イ)立入禁止措置等の管理的方策の周知状況、柵等のメンテナンス状況
イ 指針の9(4)後段イの「安全衛生機能等を無効化する又は無視する可能性」に関して考慮すべき
事項には、必要に応じ、以下の事項が含まれること。
(ア)生産性の低下、短時間作業である等の理由による保護具の非着用等、労働災害防止のための機
能・方策を無効化させる動機
(イ)スイッチの誤作動防止のための保護錠が設けられていない、局所排気装置のダクトのダンパー
が担当者以外でも操作できる等、労働災害防止のための機能・方策の無効化しやすさ
ウ 指針の9(4)後段ウの作業手順の逸脱等の予見可能な「意図的」な誤使用又は危険行動の可能性
に関して考慮すべき事項には、必要に応じ、以下の事項が含まれること。
(ア)作業手順等の周知状況
(イ)近道行動(最小抵抗経路行動)
(ウ)監視の有無等の意図的な誤使用等のしやすさ
(エ)作業者の資格・教育等
エ 指針の9(4)後段ウの操作ミス等の予見可能な「非意図的」な誤使用の可能性に関して考慮すべ
き事項には、必要に応じ、以下の事項が含まれること。
(ア)ボタンの配置、ハンドルの操作方向のばらつき等の人間工学的な誤使用等の誘発しやすさ、化
学物質等を入れた容器への内容物の記載手順
(イ)作業者の資格・教育等
オ 指針の9(4)後段エは、疾病の重篤度の見積りに当たっては、いわゆる予防原則に則り、有害性
が立証されておらず、化学物質等安全データシート(MSDS)等が添付されていない化学物質等を使
用する場合にあっては、関連する情報を供給者や専門機関等に求め、その結果、一定の有害性が指
摘されている場合は、入手した情報に基づき、有害性を推定することが望ましいことを規定したも
のであること。
(6)指針の9(5)の事項については、次に掲げる事項に留意すること。
ア 指針の9(5)ア及びイの重篤度の予測に当たっては、抽象的な検討ではなく、極力、どのような
負傷や疾病がどの作業者に発生するのかを具体的に予測した上で、その重篤度を見積もること。ま
た、直接作業を行う者のみならず、作業の工程上その作業場所の周辺にいる作業者等も検討の対象
に含むこと。
イ 指針の9(5)ウの「休業日数等」の「等」には、後遺障害の等級や死亡が含まれること。
10 リスク低減措置の検討及び実施について
(1)指針の10(1)の事項については、次に掲げる事項に留意すること。
ア 指針の10(1)アの「使用の中止」とは、危険性又は有害性が高い化学物質等を用いる工程を化
学物質等を用いない工程に替えることにより化学物質等による危険性又は有害性を除去することを
いい、また、「危険性若しくは有害性のより低い物への代替」とは、製造等に使用する化学物質等
を、危険性又は有害性がより低い他の化学物質等に代替し、化学物質等による危険性又は有害性の
程度を低減させる措置をいうこと。
イ 指針の10(1)イの「化学反応のプロセス等の運転条件の変更、取り扱う化学物質の形状の変更
等による、負傷が生ずる可能性又はばく露の程度の低減」とは、アの措置を講ずることができず、
同一の化学物質等の製造等を続けるものの、当該化学物質等による危険性又は有害性による負傷又
は疾病の発生の可能性の度合の抜本的低減を図る措置をいうこと。
ウ 指針の10(1)ウの「工学的対策」とは、イの措置を講ずることができず抜本的には低減できな
かった当該化学物質等による危険性による負傷の発生の可能性の度合に対し、防爆構造化、安全装
置の多重化等の措置を実施し、当該化学物質等による危険性による負傷の発生の可能性の度合の低
減を図る措置をいうこと。
また、指針の10(1)ウの「衛生工学的対策」とは、イの措置を講ずることができず抜本的には
低減できなかった当該化学物質等による有害性による疾病の発生の可能性の度合に対し、機械設備
等の密閉化、局所排気装置等の設置等の措置を実施し、当該化学物質等による有害性による疾病の
発生の可能性の度合の低減を図る措置をいうこと。
エ 指針の10(1)エの「管理的対策」とは、アからウまでの措置により除去しきれなかった化学物
質等による危険性又は有害性に対し、マニュアルの整備、立入禁止措置、ばく露管理、警報の運用、
二人組制の採用、教育訓練、健康管理等の作業者等を管理することによる対策を実施するものであ
ること。
オ 指針の10(1)オの「個人用保護具の使用」は、アからエまでの措置により除去されなかった、
化学物質等による危険性又は有害性に対して、呼吸用保護具や保護衣等の使用を義務づけるもので
あること。また、この措置により、アからエまでの措置の代替を図ってはならないこと。
カ 指針の10(1)のリスク低減措置の検討に当たっては、大気汚染防止法等の公害その他一般公衆
の災害を防止するための法令に反しないように配慮する必要があること。
(2)指針の10(2)は、合理的に実現可能な限り、より高い優先順位のリスク低減措置を実施することに
より、「合理的に実現可能な程度に低い」(ALARP: As Low As Reasonably Practicable)レベ
ルにまで適切にリスクを低減するという考え方を規定したものであること。
なお、低減されるリスクの効果に比較して必要な費用等が大幅に大きいなど、両者に著しい不均衡
を発生させる場合であっても、死亡や重篤な後遺障害をもたらす可能性が高い場合等、対策の実施に
著しく合理性を欠くとはいえない場合には、措置を実施すべきものであること。
(3)指針の10(2)に従い、リスク低減のための対策を決定する際には、既存の行政指針、ガイドライン
等に定められている対策と同等以上とすることが望ましいこと。また、 高齢者、日本語が通じない
労働者、経験の浅い労働者等、安全衛生対策上の弱者に対しても有効なレベルまでリスクが低減され
るべきものであること。
(4)指針の10(3)は、死亡、後遺障害又は重篤な疾病をもたらすリスクに対して、(2)の考え方に基
づく適切なリスク低減を実施するのに時間を要する場合に、それを放置することなく、実施可能な暫
定的な措置を直ちに実施する必要があることを規定したものであること。
11 記録について
(1)指針の11(1)から(6)までに掲げる事項を記録するに当たっては、調査等を実施した日付及び実
施者を明記すること。
(2)指針の11(6)のリスク低減措置には、当該措置を実施した後に見込まれるリスクを見積もることも
含まれること。
(3)調査等の記録は、次回調査等を実施するまで保管すること。なお、記録の記載例を別添5に示す。