(平成27年9月18日 基発0918第3号により廃止)
(別添4-2)
化学物質等による有害性に係るリスク見積りについて
1 定量的評価について
ばく露限界の設定がなされている化学物質等については、労働者のばく露量を測定し、ばく露限界と
比較する。
2 化学物質による有害性に係る定性的リスク評価
ばく露限界の設定がなされていない化学物質等に関しては、定性的リスク評価を行う。その一例を次
に例4として示す。
例4:化学物質等による有害性に係るリスクの定性評価法の例 |
|
(1)化学物質等による有害性のレベル分け
化学物質等について、MSDSのデータを用いて、GHS等を参考にして有害性のレベルを付す。レベル
分けは、有害性をAからEの5段階に分けた表のような例に基づき行う。
例えばGHSで急性毒性に分類され、その区分が3の化学物質は、この表に当てはめ、レベルCとなる。
有害性のレベル
(HL) |
GHS有害性分類及びGHS区分 |
A |
・変異原性 |
区分1,2 |
・発がん性 |
区分1 |
・呼吸器感作性 |
|
B |
・急性毒性 |
区分1,2 |
・発がん性 |
区分2 |
・全身毒性−反復ばく露 |
区分1 |
・生殖毒性 |
区分1,2 |
|
C |
・急性毒性 |
区分3 |
・全身毒性−単回ばく露 |
区分1 |
・皮膚腐食性 |
サブクラス1A、1B又は1C |
・眼刺激性 |
区分1 |
・呼吸器刺激性 |
・皮膚感作性 |
・全身毒性−反復ばく露 |
区分2 |
|
D |
・急性毒性 |
区分4 |
・全身毒性−単回ばく露 |
区分2 |
|
E |
・急性毒性 |
区分5 |
・皮膚刺激性 |
区分2,3 |
・眼刺激性 |
区分2 |
・その他のグループに分類されない粉体と液体 |
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(2)ばく露レベルの推定
作業環境レベルを推定し、それに作業時間等作業の状況を組合せ、ばく露レベルを推定する。アか
らウの3段階を経て作業環境レベルを推定する具体例を次に示す。
ア 作業環境レベル(ML)の推定
化学物質等の製造等の量、揮発性・飛散性の性状、作業場の換気の状況等に応じてポイントを付
し、そのポイントを加減した合計数を表1に当てはめ作業環境レベルを推定する。労働者の衣服、
手足、保護具に対象化学物質等による汚れが見られる場合には、1ポイントを加える修正を加え、
次の式で総合ポイントを算定する。
A(取扱量ポイント)+B(揮発性・飛散性ポイント)−C(換気ポイント)+D(修正ポイント)
ここで、AからDのポイントの付け方は次のとおりである。
A:製造等の量のポイント
3 大量(トン、kl単位で計る程度の量)
2 中量(kg、l単位で計る程度の量)
1 少量(g、ml単位で計る程度の量)
B:揮発性・飛散性のポイント
3 高揮発性(沸点50℃未満)、高飛散性(微細で軽い粉じんの発生する物)
2 中揮発性(沸点50−150℃)、中飛散性(結晶質、粒状、すぐに沈降する物)
1 低揮発性(沸点150℃超過)、低飛散性(小球状、薄片状、小塊状)
C:換気のポイント
4 遠隔操作・完全密閉
3 局所排気
2 全体換気・屋外作業
1 換気なし
D:修正ポイント
1 労働者の衣服、手足、保護具が、調査対象となっている化学物質等による汚れが見られる
場合
0 労働者の衣服、手足、保護具が、調査対象となっている化学物質等による汚れが見られな
い場合
表1 作業環境レベルの区分 (例)
作業環境レベル(ML) |
a |
b |
c |
d |
e |
A+B−C+D |
6、5 |
4 |
3 |
2 |
1〜(−2) |
|
イ 作業時間・作業頻度のレベル(FL)の推定
労働者の当該作業場での当該化学物質等にばく露される年間作業時間を次の表2に当てはめ作業
頻度を推定する。
表2 作業時間・作業頻度レベルの区分 (例)
作業時間・作業頻度
レベル(FL) |
i |
ii |
iii |
iv |
v |
年間作業時間 |
400時間
超過 |
100〜
400時間 |
25〜100
時間 |
10〜25
時間 |
10時間
未満 |
|
ウ ばく露レベル(EL)の推定
アで推定した作業環境レベル(ML)及びイで推定した作業時間・作業頻度(FL)を次の表3に当
てはめて、ばく露レベル(EL)を推定する。
表3 ばく露レベル(EL)の区分の決定 (例)
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a |
b |
c |
d |
e |
i |
V |
V |
IV |
IV |
III |
ii |
V |
IV |
IV |
III |
II |
iii |
IV |
IV |
III |
III |
II |
iv |
IV |
III |
III |
II |
II |
v |
III |
II |
II |
II |
I |
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(3)リスクの見積り
(1)で分類した有害性のレベル及び(2)で推定したばく露レベルを組合せ、リスクを見積もる。
次に一例を示す。数字の値が大きいほどリスク低減措置の優先度が高いことを示す。