本書は平成9年度に聖マリアンナ医科大学の吉田勝美教授を代表とする研究組織が中央労働災害防止協会からの委託により行った研究の報告書である。職域への肺癌検診の導入について、検診技術、スクリーニング効果及び経済効果について検討した。
年間18,368人を対象に職域肺癌検診を行っている某総合健保では、対象者の中で検診による肺癌発見が全発見の50%以上であり、検診発見群では検診以外の発見群より予後が良かった。「東京から肺癌をなくす会」は年2回の検診を会員に行っているが、検診技術としてヘリカルCTを導入する前後で発見率が10万人当たり163人から343人に増加し、早期発見例が多くなった。
肺癌検診では間接胸部写真の陰影が淡い、他の臓器との重複、結核既往などとの識別困難などの理由から初回検診後の要精検率が高いが、検診の精度向上のために間接胸部写真読影の方法として二重読影や比較読影などの採用、精検受診率の向上、 新しい診断法としてヘリカルCTなどのコンピューター診断、周辺臓器との鑑別のための核磁気共鳴画像診断、気管支鏡検査、細胞診、腫瘍マーカーの採用を検討する必要があるとしている。
医療経済に関する調査から、末期肺癌の入院治療費は平均38,442円であることが分かった。しかし検診の経済効果推定に十分な資料が未だ整理されていないとしている。
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