「新素材の製造及び使用作業に係る労働衛生対策に関する調査研究委員会」は新素材の製造に従事する労働者の健康影響を予防、予測する見地から、労働衛生学的な評価を必要とする新素材の把握と労働衛生上の課題について3ヵ年にわたる調査を実施してきた。
本報告書はこれまで2年間の調査研究で浮かび上がってきた新素材製造に係わる未規制の化学物質について[1]in vivoおよびin vitro研究からえられた生体影響の概要、[2]実際のこれら有害物質の取り扱いから生じた症例研究、[3]各作業現場の有害物質の作業者へのばく露状態の把握を目的としたヒアリング調査、[4]新素材の今後の動向についての調査、[5]新素材に係わる労働衛生上の課題についてまとめたものである。
新素材及びその製造に使用する化学物質73種類の生体影響について文献的な検討が行われた。とりわけ、新素材のうちガスによるヒトへの生体影響について、ヒ化水素、フッ化水素、ホスフィン、ジボランの4物質の中毒症状、診断、治療法をまとめた。新素材製造事業場のヒアリング調査を実施し、結果が報告されている。新素材の今後についてさまざまな方向性が示された。
新素材製造事業場の業界別の労働衛生上の問題点として[1]化合物半導体及びシリコン、[2]ファインセラミックス、[3]高分子について、それぞれ報告されている。その上で、新素材製造事業場の業界別の労働衛生上の課題をそれぞれに示した。
新素材の今後の動向についてまとめられており、無機系新素材としては、[1]繊維(ボロン繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素、窒化ケイ素等)と[2]薄膜の製造(熱蒸着法(真空蒸着法)、スパッタ蒸着法、イオン蒸着法(イオンプレーティング法)、化学蒸着法(CVD法、MOCVD法))で使用される物質について、有機系新素材としては、生体関連高分子、電気伝導性ポリマー、光ファイバー、リサイクル技術、生分解性ポリマーについて報告されている。
参考資料として、新素材の有害性にかかわる文献、新素材の製造に使用する化学 物質の有害性一覧、収集文献一覧が添付されている。
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