高齢労働者の労災事故の比率が上昇傾向にあることを背景として、加齢に伴う能力変化や社会心理特性を考慮した高齢労働者の安全衛生対策を構築するための基礎資料として行った文献調査の報告である。本調査は中央労働災害防止協会が(株)三菱総合研究所に委託したものである。
調査の項目は高齢者の就業の勤務形態、就業理由などの社会的・経済的な要素、血圧、視力、聴力、運動機能などの身体的要素、及びライフスタイル、生き甲斐、判断力、認知機能、反射神経などの精神・神経的要素に亘っており、情報を収集・分析し、安全衛生対策の方向を示している。
高齢者の特性変化として、記憶力の低下、体力の低下、知覚―運動機能の低下、 環境適応力の変化を挙げている。その結果として高齢者は過去の経験に近接したものは理解が容易であるが、新しいものの取り込みが困難である。また高齢者の特性は残存機能によるので個人差が大きいこと、安全衛生対策でも個人差を考慮すべきであると指摘している。
高齢者は身体的・認知的機能は衰えるが、経験や知識の有効利用という補償効果 によって仕事を容易かつ安全に遂行することができるとしている。年齢によって事故の頻度や原因、障害を受ける部位に相違が見られるが、加齢とともに職種も変化する。従って年齢による災害の発生の変化には多くの要素が含まれていると指摘している。
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