紀州漆器産業について、大阪労働衛生総合センターが平成6年度及び平成7年度に行った有機溶剤取り扱いの実態調査の報告である。調査の内容は事業所に対するアンケート調査、作業環境測定、従業員の有機溶剤曝露と生物学的モニタリング及び一般健康診断と有機溶剤に係わる特殊健康診断である。
漆器の原材料としてプラスチックと化学インクが導入されるにつれて有機溶剤の使用が始まったが、調査時点で使用が特に多かった溶剤はトルエン、キシレン及びメタノールであった。また1事業場当たり使用量は10リットル/月〜1トン/月以上まであったが、500リットル/月以下が殆どであった。作業場と住居を同じ建物内に有する事業場が全体の31%あった。作業環境測定と健康診断を行っていない事業場が多かった。
塗装作業、乾燥作業、蒔絵作業及び塗料混合作業を行う4〜6作業場所で作業環境測定を行った結果、乾燥作業場で管理区分3と2が各1作業場所、塗料混合作業で管理区分2が1作業場所あったが、その他は管理区分1であった。塗装作業場ではすべて局所排気装置が設置されていたが、その他では換気が不十分な作業場が多かった。
有機溶剤への個人曝露濃度の8時間平均値の測定、作業場の空気中濃度の8時間平均値の測定及び生物学的モニタリングを行った結果、塗装作業と塗料混合作業に従事する作業者の中で曝露濃度の評価値が1を超える割合が約10%であった。尿中代謝産物として馬尿酸、メチル馬尿酸、オルトクレゾール、マンデル酸を測定した結果、馬尿酸濃度が分布区分2以上の作業者が約18%見いだされた。各有機溶剤の曝露濃度と尿中代謝産物の濃度の相関は、相関係数0.5程度であった。
健康影響調査では有機溶剤取扱者に有意な変化として心電図異常があったが、洞性不整脈や不完全右脚ブロックなどの軽度異常であった。聴力検査では40〜59歳の男性取扱い者が4kH聴力レベルにおいて有意に高かった。
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