京都の地場産業のひとつに約1000年の歴史を持つ西陣織、友禅染がある。両者の製造の工程については若干の相違はあるが、ともに紡糸、撚糸、染色、織布、精錬等の行程を経て製品化される。生産の様式は家内工業から中小企業を中心に生産され、それぞれの行程において有機溶剤、特定化学物質の使用、騒音、湿度、温度等職場環境に関わる問題がある。これらの問題解決については、関係者において努力がなされているものの、なお、十分とは言えない。そこで、西陣織、友禅染産業に従事する労働者の有機溶剤暴露実態と健康影響を明らかにし、健康障害の予防に資するため、平成6年度からの2年間にわたり調査を実施した。
調査対象は、京都金銀糸振興協同組合、京都染技同趣苑協同組合に加盟する事業 所で、作業環境調査、生物学的モニタリング調査、健康診断による調査を実施した。作業環境測定は染め2単位作業場所、金銀糸10単位作業場所、蒸し3単位作業場所について行っている。生物学的モニタリングは11作業所で88人について実施した。健康診断については平成6年度が88人、平成7年度が86人実施した。
調査の結果、作業環境測定では、有機溶剤使用作業場で第2、第3管理区分の作業場があった。生物学的モニタリングでは、個人暴露濃度でACGIHの混合評価値1を超えている者はいなかった。トルエンの代謝物である尿中馬尿酸は分布2以上を示す者が15人、テトラクロルエチレンの代謝物である総三塩化物は分布2以上を示す者が12人みられた。健康診断では、検査項目に一部所見を示す者がみられたが、これが有機溶剤による健康影響かどうかは、明らかではない。
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