一般的に、人間は2足で立って歩行するという特性上、腰痛とは切っても切れない関係にあり、日常的な生活の場でも発生の可能性があるため、すべての事業場のあらゆる職場の従業員に関係する大きな問題である。しかしながら今日まで、この腰痛に対して予防対策が有効かつ適切に実施されてきたとは言い難い現状にあり、業務上疾病としての腰痛の発生件数は、年間6,000件を超え業務上疾病全体の過半数を占めている。
この理由の一つとして発生の原因が特定の作業にあるのではなく、いくつかの要因が、複合的に作用し発生するという特殊性を持っていることが挙げられる。
従来から実行されてきた予防対策でなく、人間工学等の関連学問分野の最近の学問分野の研究成果に基づいた対策を確立し、広く実行する必要がある。これらの内容は、業種ごとのような大雑把なものでなく、作業ごとの分析により発生原因を把握・発見してそれぞれの対策を立てる必要がある。
中央労働災害防止協会では、このような現状と問題点を踏まえて、平成2年10月に腰痛の予防対策に関する調査研究委員会を設置し、職業性腰痛の発症状況について調査し、腰痛の発生機序、腰痛リスク職場、作業形態・姿勢と腰痛の関係等について検討を行い、医学的な見地からみて合理的でかつ作業現場の実態に即した予防対策の検討を行い、その結果を取りまとめたものである。
本報告書は、腰痛の発生原因を様々な角度から解析した結果と、発生のメカニズムを正しく理解できるよう、人体の腰部の構造と機能についての詳しい解説を載せている。また予防対策については、作業管理、作業環境管理、健康管理の面からアプローチし、それぞれについて具体的な対策を示している。
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