静電塗装は塗装方法の1種で、塗料使用量が少なく、塗料スプレーの方向を電場で制御して対象物の裏面まで付着できるために管などの自動塗装に適している利点がある。一方、高電圧電源の使用による電撃の危険性があり、また有機溶剤の放電着火などによる火災・爆発の危険性がある。
本書は昭和63年に中央労働災害防止協会が設置した「静電塗装作業における安全衛生対策調査研究委員会」の検討結果を踏まえて、「静電塗装作業における事業場の安全衛生管理担当者への指導書として出版された。
静電塗装の原理として塗料スプレーに負の電荷を与えるために、塗装機には数10〜100kVの負の高電圧が印加されること、この直流高電圧でコロナ放電を起こさせてスプレーを帯電させる形式の機械が多いこと、電流は通常数マイクロアンペアの微少電流であることが解説されている。静電塗装では、スプレー発生位置におけるコロナ放電に対象物またはその他の接地体が接近しすぎると火花放電が発生し、噴霧塗料に着火する危険性がある。静電塗装の装置は一般に塗装ブース内に設置されるが、ブース内の溶剤蒸気の滞留の防止、ブースの金属性部品の接地の励行が必要である。対象物の接地は安全上重用である。機器・設備の安全対策として塗料スプレー発生ガンに電気的な高抵抗を備えて放電を防止する、高電圧ケーブルには断線したとき高電圧の自動遮断機構を備える、高電圧ケーブルのガンの手持ち部への挿入部分は高電圧ケーブルをゴムやスプリングなどで保護する、手持ちガンの握り部分は接地されており、かつ作業者の手が確実に接地されている、スプレーガンは塗装のために引き金を引いたときだけ高電圧が印加される、自動ガンは塗料入り口の金属部分を接地する構造である、などの指示をしている。その他、周辺設備や運搬設備に対する対策なども示している。
作業の安全衛生管理として保護具の着用とその管理、換気ブースの設計、塗料や溶剤保管場所の設計、表示、塗料の装置への補給作業の危険性への注意、異常時の対応などを指示している。静電塗装の設備の保守管理の要点も示している。静電塗装に係わる災害としては火災・爆発が多いが、感電もある。火災の事例が示されている。
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