化学物質を取り扱う作業者の健康影響の検出に利用できる新しい手法について、 中央労働災害防止協会が東京大学・荒記俊一教授に委託して行った調査研究の報告書である。化学物質による次の機能の変化の測定法を示している。
大脳誘発電位は上下肢の末梢神経に電気的刺激を加えると末梢神経、脊髄、視床、大脳で電位が変動する現象である。その中で刺激後30msec〜50msecに現れる短潜時体性感覚誘導発電位の測定を利用した。手関節部を電気刺激し、体性感覚誘導発電位の発生源における各頂点までの時間(頂点潜時)と頂点間潜時を測定した。この測定によって鉛、水銀、ノルマルヘキサン、アルコールによる中毒で中枢伝導の遅延が見られた。また局所振動によって末梢神経伝導路の遅延が見られた。 聴性脳幹誘発電位はクリック音を聞かせる刺激で、聴覚刺激後頭皮上に生じる10msec以内の電位変動であり、視覚誘発電位は目に光を照射することにより大脳皮質視覚野に生じる電位変動である。聴性脳幹誘発電位は鉛、有機水銀及び局所振動で遅延が見られ、視覚誘発電位は鉛とアルコールで遅延が見られた。
聴性脳幹誘発電位はクリック音を聞かせる刺激で、聴覚刺激後頭皮上に生じる 10msec以内の電位変動であり、視覚誘発電位は目に光を照射することにより大脳皮 質視覚野に生じる電位変動である。聴性脳幹誘発電位は鉛、有機水銀及び局所振動で遅延が見られ、視覚誘発電位は鉛とアルコールで遅延が見られた。
神経行動機能の試験法として精神運動、記憶、言語、感情及び視覚・空間認識の5項目からなるテストバッテリーを用いた。鉛中毒による視覚運動と記憶の低下、 有機溶剤中毒により視覚運動の低下が観察された。
末梢神経伝導速度の測定法は確立している。局所振動、鉛、ヒ素、タリウム、二酸化炭素、ノルマルヘキサン、除草剤等の中毒で伝導速度の遅延が観察されている。
免疫学的機能として抹消血リンパ球の分画及びCD4、CD3、CD8陽性細胞率と、単核球をターゲット細胞としたナチュラルキラー細胞活性を求めた。これらの標識はクロム作業者とアゾ染料作業者において有意な低下が観察された。
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