高年齢労働者の労働力人口に占める割合は年々増大し、災害発生比率も年を追って増加の一途で、高年齢労働者の安全対策が急務となっている。
そこで、昭和56年11月に第一次の調査研究委員会を設置し、製造業、建設業、運輸業等についての改善事例を収録して、昭和61年1月に「高年齢者の安全」を刊行した。その後、労働省からの要請で製造業を対象とした具体的な対策を取りまとめることとなり、9業種(鉄鋼、造船、化学、セメント、石油、ガス、機械、電機、自動車)ごとの対策を昭和62年3月に取りまとめた。この報告書には、前二回の研究成 果を踏まえ、高年齢労働者の災害の現状、加齢に伴う各種の心身機能の変化、高年齢労働者災害発生のメカニズム、具体的災害事例と応用可能な対策事例等が詳細に示されている。
この報告書は、第1章で高年齢労働者の災害発生状況を年別推移、産業別、業種別に調査した結果を示している。第2章では、加齢に伴う人間の心身機能の変化について考察しており、「加齢」と「心身機能」の関係を作業と関連させて考えると、 次の5原則が当てはまる。(1)生理的機能(特に感覚機能と平衡機能など)は、早い時期から低下が始まる。(2)筋力は、まず脚力の低下で始まり、手の指先の筋力低下は最も遅い。(3)訓練で得た能力(知識・技能)は、長期間使用するほど維持できる期間が長い。(4)経験と技能の蓄積は熟練を構成し、より高度で複合的な作業能力 を生む。(5)中高年期以降は、心身機能の個人差が拡大する。
その他、第3章では、高年齢労働者の災害の特徴を事故の型別に人的要因と物的要因から分析し、災害要因連鎖図を作成しており、第4章では、これらの災害に対する基本的対策を直接的対策と間接的対策から検討し、第6章では改善事例が示されている。
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