近年の厳しい経済環境の中で、企業は経営戦略の新たな構築や組織、人員の見直し、縮小などを行っている。このような状況下で、現場における労働安全衛生管理部門がどのような影響を受けているか、また、これによって安全衛生管理・活動がどのように変化してきているか、問題点は何かなどについてその事態を把握し、安全衛生活動推進のため企業の現場ではどのような安全衛生関係の人材を求め、あるいはどのように外部の人材を活用しているのかを明らかにすることが重要なテーマである。本報告書は、こうした観点から調査・研究した結果を取りまとめたものである。
調査結果によれば、過去5年間に2割を超える事業所で間接部門の見直しなどの理由により、労働安全衛生管理部門と他部門との統合や他業務との兼務という組織の変更が行われており、安全衛生関係業務の担当者数は減少している。
現場の安全衛生活動は5年前に比べて半数以上の事業所で良くなったと思っており、具体的には現場への指導、ヒヤリハット、KYT(危険予知訓練)、4Sなどの活動、管理体制の整備、機動的な措置対応などを挙げている。
今後充実したい対策としては、現業部門の日常活動の活性化や意識改革、ライン管理の強化などを望む事業者がそれぞれ4割を超えているが、それとともに3分の1の事業所が労働安全衛生マネジメントシステムの導入等システム面の強化、リスクアセスメント等による事前対策の強化などを挙げており、新たな手法への対応が考えられている。
人材面では、約4割の事業所で他業務との兼務を指摘し、専門的知識・経験を持った社員の不足を問題視している。
今後事業所で特に採用・育成したい人材は、衛生管理者のほか労働安全衛生マネジメントシステムの導入・運用が出来る者及びリスクアセスメントを担当できる者と、労働安全衛生マネジメントシステム関係に重点を置く事業所が多い。約15%の事業所が今後、外部専門家の活用を増やす方針で、心理相談、労働安全衛生マネジメントシステム、安全衛生診断などの分野が望まれている。
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