本教育テキストは昭和59年6月26日付基発第328号「原子力発電所における放射線に係る労働衛生教育の推進要領について」に基づき、事業者がこれまで原子力発電所において適切な教育を実施するため使用してきたテキストを下に、東海村で起きた「臨界事故」の教訓から法令(電離放射線障害防止規則(電離則)第52条の7)が改正されたことを受けて「関係法令」に関する事項を追加する等の改訂増補を行い、新たに編集されたものである。
放射線による影響を分類すると、体に受けた場合、その影響が本人に現れる「身体的影響」とその子孫に現れる「遺伝的影響」に分けられ、さらに「身体的影響」は放射線を受けてから症状が現れるまでの時間によって「急性障害」と「晩発性障害」に分けられる。また、これとは別に「確定的影響」と「確率的影響」といった分け方がある。全身に大量の放射線を一度に受けた場合、500ミリシーベルトで肺納血中のリンパ球の減少が起こり、1000ミリシーベルトで10%の人が悪心嘔吐を起こし、3000〜5000ミリシーベルトでは50%の人が死亡し、7000ミリシーベルト以上では100%の人が死亡する。局部被ばくの場合には500ミリシーベルトで眼の水晶体混濁が起こり、2500ミリシーベルトで脱毛し、4000ミリシーベルトでは永久不妊に至る。5000ミリシーベルトでは白内障や紅斑が見られ、10000ミリシーベルト以上は急性潰瘍を作る。
放射線の受け方には外部被ばくと内部被ばくがあり、防護するためには(1)外部から受ける線量当量の低減や(2)放射線物質の身体への付着と取り込みの防止がある。外部被ばくを少なくするためには(1)線源を除去する、(2)線源を遮蔽する、(3)線源から距離をとる、(4)作業時間を短縮することが原則である。また内部被ばくを防ぐために、呼吸用保護具を着用する、作業場所をきれいに保つ、けがをしたら管理区域から退域するなどの決まりがある。実務的知識としては、身体を汚染しないために、汚染を広げないために注意することが書かれている。
巻末に放射線関係法令が載せられており、関係法令体系が図示されている。
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