高齢社会が進展する中で、わが国の労働者総数に占める50歳以上の高年齢労働者の割合は年々増加し、今では29%となっている。一般に人は加齢によって運動機能や感覚機能などが低下する傾向にあり、このため高年齢労働者の災害発生率は他の年齢層に比べて高く、また健康診断の有所見率も若年労働者に比べて高くなっている。
さらに加齢に伴う筋力などの低下により、運搬や荷の上げ下ろしがつらいといったことや、視力や聴力などの低下により不快を感じながら仕事を行っていることが考えられる。
こうした高年齢労働者の諸特質を踏まえつつ、高年齢労働者の豊富な知識や優れた技能等を大いに活用しつつ、高年齢労働者が働き甲斐、生き甲斐をもって働き続けるためには、高年齢労働者の特性に配慮した労働災害防止対策等を進めるとともに働きやすい快適な職場環境を形成することが重要である。このようなことから、中央労働災害防止協会・中央快適職場推進センターでは労働者からの委託を受け、快適職場指針(平成4年7月労働省告示第59号)に基づいた高年齢労働者も働きやすい職場快適化事例を収集し、職場改善事例集を作成することを目的として調査研究を行った。
まず高年齢労働者の職場環境をめぐる現状把握と高年齢労働者の特質や人間工学的対策について検討し、高年齢労働者も働きやすい職場快適化事例を収集するための実地調査を行い、収集した事例を快適職場指針の項目別に分類、整理して事例集としてまとめられている。
事例集の内容は13社にわたり、多数のカラー写真とともにわかりやすく快適職場作りに取り組んでいる様子が説明されている。例えば、視力、聴力の低下をわかりやすい表示で補ったり、段差のない工場内をキャスター付き台車で運搬したり、休憩室にマッサージ器を設置したりしたN社例等が挙げられている。また指針項目別も多数のカラー写真を用いて空気環境から、音環境、緊張緩和といった細かな分類でわかりやすく説明されている。
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