わが国の少子・高齢化の進展に伴い、高年齢労働者の全労働者数に占める割合は増加の一途をたどっているうえ、高年齢労働者が労働災害に被災する比率は他の世代に比べて高くなっている。このような中にあって、高年齢労働者の労働災害防止対策はますます重要な課題となっている。そのため、労働省では「第9次労働災害防止計画」に基づき、高齢化に対応した安全衛生基準の見直しを行うこととしている
本報告書は、過去の文献はもとより新たな関連情報を整理した「高年齢労働者の心身機能の特性」の考察とその結果に基づく「職場の高齢化に対応した設備の安全基準の作成」をまとめたものである。本書は、視覚、聴覚、平衡機能の感覚機能、体力、筋力、柔軟性、持久力等の他に記憶や反応時間といった精神運動機能の加齢による変化を調べている。また高年齢労働者がどの業種、どんな事故、型別、起因別によって死傷災害を受けたかが分析されている。
以上の結果を踏まえて、高齢社会において、どのようなところにポイントをおいて注意し、改善していったらよいかが考察されている。例えば高所作業では「高所作業床の囲いの手すりは高めとし、中桟や爪先板をつける」、はい作業時には「昇降用のはしごや作業床等を設置して行う」、トラックの荷積み・荷下ろしや大型機械の組立などの作業には「親網を張り、安全帯を付ける」、「高所作業では必ず防網を張り、安全帯を付ける」、「高所作業車は作業場所を広くし、安定度を高め、また作業者を乗せたまま移動しない」等細かくポイントに分けて提案している。ポイント総数は96に上がっている。最後に労働安全マニュアルの考え方をベースとして、「異常」が災害に結びつくフローをモデル化している。
付属資料として、職場の問題発見チェックリストと高齢社会における職場環境整備のポイント集が載せられている
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