本書はドイツバイエルン州の労働、社会、家庭女性,保健省が公表した"Occupational Health and Risk Management System"(OHRIS)を翻訳したものである。OHRISは、ドイツで最初に公表された労働安全衛生マネジメントシステムで1995年から開発が開始され、試行による有効性の検証を経て、1998年に公表された。 現在は、バイエルン州だけでなくドイツの複数州で使用されている。内容は、労働安全衛生マネジメントシステムの必要性、OHRISのシステム要求事項、要求事項の構成の意味と関連する具体的な行動、OHRIS導入の手引きが詳細に説明されている。OHRISはEUのOHSMSガイドラインに影響を与えているが、わが国でも労働省指針にづくOHSMSを具体的に導入する際にも参考になると思われる。
本書の構造は左ページにオリジナル(英語)、右ページに対応する日本語訳文が書かれ、その方式は、図、表にいたるまで徹底している。OHRISは従業員の健康の確保及び潜在的に高度の危険有害要因を持つ施設周辺に居住する住民の保護が、企業戦略としては品質志向、収益追及型の生産という企業目的と同等に重要であるとの考えから、企業が背反する両者を調和させ、全職務,階層でこの目的が徹底されるよう指針を与えることを目的としている。この場合に、従業員の労働安全衛生を確保することは企業の主要な社会的責任及び法的義務を履行することと並び、安全の確保によって従業員の欠勤時間が減り、同時に操業の中断も減少させることができるという点で、収益追及の側面をもっている点も考慮すべきである。
付属書として、OHRISシステム要素の概観、OHRISシステム要素とISO14001システム要素との組み合わせ、OHRISシステム要素とISO9001システム要素との組み合わせ、OHRISの文書化システムが掲載されている。
Copyright(C) Japan Advanced InformationCenter of Safety and Health. All Rights Reserved.