職場の安全衛生水準向上のための新しい手法として、労働安全衛生マネジメントシステムが注目されるようになってから、その中核ともいえるリスクアセスメントに対する関心が高まってきました。
本書は平成11年度に中央労働災害防止協会において「日本版・職場のリスクアセスメント標準モデル開発委員会」を設置し、日本における職場のリスクアセスメント実施方法はどうあるべきかについて検討した結果に基づき作成されている。リスクアセスメントとは、職場にある危険源を特定し、リスクを見積もり・評価し、そのリスクが労働災害に至るかどうかを判断し、至ると判断した場合にはリスクの低減対策(安全衛生対策)を実施するという一連の論理的な手順である。リスクアセスメントを実施することによる直接効果として、職場のリスクが明確になる、職場の リスクに対する認識を管理者を含め職場全体で共有できる、安全衛生対策を合理的に優先度付けできる、費用対効果を考慮しながら対策を効果的に実施できる、残されたリスクについて「守るべき決め事」の理由が明確になる、管理者にとって安全衛生上の説明責任を果たすことができる等があげられる。また職場全員が参加することにより安全に対する感性が高まる、リスク低減対策の実施事例を記録することによりノウハウとして蓄積・伝承される、経営資源が有効活用される等の間接効果も指摘されている。現状は、ほとんどの企業ではリスクアセスメントに関する認識 が薄く、また日本の職場に適したリスクアセスメントのマニュアルがないこともあって、ごく一部の先行企業が試行錯誤しながら導入を図っているに過ぎない。今後リスクアセスメントを推進するためには、国際的な考え方と整合を保ちつつ、わが国の実態に適し、今後の日本におけるリスクアセスメントの主流となるようなリスクアセスメント導入のためのマニュアルが必要である。
リスクアセスメントの実施方法は職場の特質により異なる部分があり、全ての事業場で使用できる統一的なマニュアルの作成は現実的ではないため、本書では、事業場でリスクアセスメントを実施するための基となる共通的な方法を示した標準モデル、すなわち、一般的な製造業における職場のリスクアセスメントの実施内容の基本原則と具体的な進め方がまとめられている。
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