1980年代になって急速に普及したVDT作業の中には、従来のFA化職場とは異質の生体負荷が含まれていることが各方面から指摘された。この問題に対し、昭和59年、中央労働災害防止協会に委員会が設置されて、VDT作業の健康影響に関する実態調査が行われ、それらに基づいて昭和60年12月「VDT作業のための労働衛生上の指針」が労働省より公表された。しかし近年に至り、FPDの普及、マウスの普及などハード面の進歩が著しく、情報化社会の中で使用目的も多様になってきている中で、作業負荷の変化の有無や、快適職場形成等行政的施策の進歩に調和させるため、今般、全国的調査によって作業実態を明らかにすることを企画し、それを実施するための委員会を組織した。
委員会の委員は、VDT機器製造事業場やVDT作業者の多い事業場の健康管理担当者をはじめ、人間工学、眼科学、整形外科学等、作業者に対する生体影響関連の学問分野の中から、現在指導的立場で活躍中の研究者によって構成され、約1000事業場と同事業場の作業者10000人を対象として現時点でのVDT作業実態調査に着手した。
調査結果は、クロス集計によって分析し、さらに専門的立場から関係文献や学会発表と照合して検討を加え、現場等の視察も行って、客観的かつ現実に即した内容となるように検討、考察を加えた。この過程で、関係学会で最近作成した「ガイドライン」や国際的な動向との照合も配慮した。このような過程で行った検討結果を、委員会が分担執筆し、取りまとめたものが本書である。VDT作業者は作業中及び作業後に、種種の身体部位の自覚的疲労症状を訴える頻度が高い。主たる自覚的疲労症状は[1]視覚系[2]筋・骨格系、及び[3]精神的負荷に関するものであってこれらの自 覚症状の特徴をまとめたものがのせられている。またマウスの使用が多くなったことに関係して、マウスの位置と肩や前腕の筋負荷の関係も研究されている。またノート型パソコンは視覚系ならびに筋骨格系負荷による自覚症状が大きいことが指摘されている。
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