自動車・同付属品製造業
この職場では切削工具(ドリル等)の再研磨を行っている。仕上げ工程では工具研削盤を使用するが、前工程としてドリルの摩耗部分を研磨する荒どり作業を行っている。この作業は、両頭グラインダでの手研磨作業であるが、深く腰を曲げて無理な姿勢(写真1)で毎日200本のドリル(2H/日・人)を研磨しており、このままでは、腰痛になる可能性も大きいと考え、人にやさしい作業にしようと改善に取り組んだ。
身長を問わず、だれでも常に最良の姿勢で作業できるように、両頭グラインダ本体を上下させ、自分の姿勢に合った高さが任意に選択できる昇降装置を考案した(図1)。
具体的な考案のポイントは次のとおり。
- ① グラインダ上昇のサポートと操作機構
両頭グラインダ本体を15cm昇降(身長160〜185cmの人、すべてにフィット可能)させるサポートとして、昇降装置本体の両側にアブソーバーを各4本設置して、手動の上下調整用ハンドルを軽く回転させると、グラインダ本体を自由に上下させることができるようにした。
重量バランスの点でも、グラインダの重心はモーターの下部にあるので、15cm程度の上昇では問題ない。 - ② 昇降時のグラツキ防止にはトラックレールを使用した。また、と石が回転中に昇降するのは極めて危険なため、ハンドルの固定ピンを抜くと、グラインダの起動スイッチが入らない安全対策を取った(写真2)。
- ③ 砥石回転時の振動防止装置
グラインダ起動中の振動防止には、エンジンの据え付けに用いる防振ゴムパットや、高級車のシートなどに使われる積層制振鋼板を利用した。
上下調整用ハンドル脇には、自分の身長に合わせて何cm上昇させれば最適なレストの位置になるかが分かる表を作り、それに合わせるように目盛りを見ながらハンドルを回していけばよいので、だれでも簡単に最適な作業姿勢を得ることができる(写真3)。
毎日200本×2直×7工場の作業量を考慮すると、この作業に携わる作業者の目、肩、腰への負担を大きく軽減することができた。
部品を発注して作ると60〜80万円の費用が掛かるが、試作機は既存の部品を利用したので比較的安価で作製することができた。現在、他工場や他の機械への応用を考慮中であり、今後はコスト面でも性能面でも、より汎用性のあるものを作りたいと考えている。
平成8年7月〜10月
18万円
申請中