上下水道工事業
導水管の管渠埋設工事を施工する際の土止め支保工として木矢板工法を採用している。
開削部分は見かけ上自立しており、湧水がない地山であっても、降水時や、貨物自動車等の通行による交通振動などにより、土の粘着力やせん断力の低下が起こり、地山の崩壊を招く恐れがある。特に、市街地の狭い道路や交通の頻繁な道路での下水道工事においては、作業幅の制約や軟弱地盤で地下水位の高い場所での工事が多いため、土砂崩壊のヒヤリ・ハット報告が数多くあった。
この開削個所に人が入り、木矢板を建て込み、腹起こしをし、切り梁を挿入する等土止め支保工の建て込みが完了するまでには、かなりの時間がかかり、その不安全状態の危険の排除と、繰り返し型災害の防止を目的として、開削部に人が入ることなく、地上で簡単に操作ができ、より安全な作業が行える上、各部材の十分な強度を考慮した「木矢板安全仮設機」を考案した。
導水管等の管渠埋設工事の施工に際し、機械で開削した掘削路の側面に、木矢板による土止め支保工の施工工事を安全に行うため、長方形の枠状をした「木矢板安全仮設機」を考案した。
木矢板安全仮設機の使用は、次の手順で行う。
まず、安全仮設機の長辺部の内側にある、木矢板固定用角材(腹起こし)支持装置に角材を抱きこむ。
次に、短辺部に設置した伸縮作動装置(アクチュエータ)を作動させ、開削部の幅よりやや狭い状態まで広げ、開削部の腹起こしを取り付ける位置までつり下げる。
そこで、開削部側面と仮設機との隙間に、木矢板を建て込む。
木矢板の建て込みが完了した時点で、アクチュエータを作動させ、木矢板を開削部側面に押しつける。安全仮設機で開削部側面の土圧を支えたまま、仮設機の中に作業者が入り、腹起こしを木矢板と連結させ、サポートにより固定し土止め支保工の建て込みを完了する。
仮設機に固定されていた腹起こしを外し、作業者が開削部から外に出た後、短辺部を縮め、仮設機を地表に取り出す。
これで、土止め支保工の施工が完了するのであるが、始めの腹起こしの仮設機への取り付けから、支保工の施工完了までは、わずか7、8分しかかからず、短時間で、安全に土止め支保工の建て込みができる。また、本仮設機では、地山の状況を見ながら、一段、二段等腹起こしを適宜の場所に入れることができる利点もある。
なお、アクチュエータの作動は電動であるため、短辺部の伸縮、任意の位置での停止等極めてスムーズな作動状況となっている。
作動に要する電源電圧は、どの現場でも仮設する100Vとした。
本考案による効果は、掘削工事において、その掘削路側面に施設する土止め支保工の建て込みが、掘削路内に作業員を配置せずに行うことができる木矢板安全仮設機の使用で、作業者が安心して作業できるということで、作業時の作業者の精神的負担を軽減するばかりか、一段と安全性を高めた工事が施工できるようになった。
また、従来の工法と比較して、木矢板の建て込み、腹起こしの取り付け等の作業がほとんど連続的に、極めて短時間ででき、建て込みの作業時間を減らすとともに、土砂崩壊の危険がない工事という、作業者の精神的負担を軽減したために、工期の短縮にまで寄与している。
昭和63年9月〜平成元年3月
1台当たり約80万円
有り