製鉄・製鋼・圧延業
クレーンによって鋼板を反転させる作業がある。(写真)
玉掛けは、ワイヤロープのアイにロープを通して鋼板を締め付ける目通し法による。反転は、平置き状態の鋼板をクレーンの巻上げ操作と走行または横行操作によって倒立させ、次に巻下げ操作と走行または横行操作によって転倒させて鋼板の反転作業が完了する。
しかし、この反転作業は次の通り、安全上問題が多かった。
- ① 目通し吊りは、ワイヤロープに負担をかけると極度に折れ曲がるため、キンクを生じ、素線切れや強度が低下してワイヤロープの寿命が短くなる。
- ② 垂直吊り状態を保つための走行や横行操作は、確認を怠ると斜め吊り状態となり、鋼板の支点側が急に動き出す危険性がある。
ワイヤロープのキンクを防止する吊具の考案と、倒立転倒時のクレーン走行や横行操作を不必要とした反転用の車輪付移動架台を考案した。
- ① 鋼板の吊り上げ側と支点側にワイヤロープを組み込んだ考案吊具を装着すると、目通し吊りをしなくても、ワイヤロープに負荷がかかると鋼板を締め付けることができる。
- ② 斜め吊り状態となった鋼板は、垂直吊り状態に戻ろうとする力が鋼板の支点側に働く。この力を利用して、鋼板の支点側に摩擦係数を小さくした車輪付移動架台を設置すると、巻上げのみで倒立、巻下げのみで転倒が可能となる。
- ③ 移動架台のストッパーと、鋼板の吊り上げ側を着地させるストッパー兼着地台を移動架台の両側に設置する。
- ④ 反転作業手順を以下に示す。
<手順1>反転架台上とストッパー兼着地台上に鋼板を乗せる(写真)。
<手順2>吊具を鋼板の吊り上げ側と支点側に装着する。
<手順3>巻上げる(移動架台が動き垂直吊りを保持する)。
<手順4>巻上げ鋼板を地切りさせる。
<手順5>走行あるいは横行操作で移動架台を反対側ストッパーに当てる。
<手順6>巻下げ鋼板を移動架台のストッパー側傾斜部を滑らせる。
<手順7>巻下げる(移動架台が動き垂直吊りを保持する)。
<手順8>巻下げ、吊り上げ側を着地台上に乗せる。
- ワイヤロープのキンクによる素線切れや強度低下を防止でき、安全性が向上した。
- 垂直吊り状態を保持したまま、巻上げのみで倒立、巻下げのみで転倒ができ、安全性が向上した。
- 従来と比較して、作業時間が約1/2に短縮できた。
昭和63年3月〜4月
材料費41,000円、人件費86,000円、合計127,000円
無し