安全衛生情報センター
1 「チェーンソーによる伐木等作業の安全に関するガイドライン」(平成27年12月7日付け基発1207第3 号)(以下「ガイドライン」という。)は、安全に関する基本的な事項についてとりまとめたものである こと。 2 伐倒方法、造材方法には、ガイドラインで触れたもの以外に多様な方法があるが、作業者の技能、経 験等、伐木現場の状況等を踏まえ、最適な方法を選択すべきであること。 3 ガイドラインは、令和2年1月31日付け基発0131第1号「「チェーンソーによる伐木等作業の安全に関 するガイドライン」の改正について」の記の4に示す方針に基づき改正されたものであることから、「か かり木の処理の作業における労働災害防止のためのガイドライン」(平成14年3月28日基安安発第03280 01号)の第1の2を踏まえ、ガイドラインの2について、以下のとおり、適用範囲を定めているものである こと。 (1) チェーンソーを用いて行う伐木又は造材の作業(以下「伐木等作業」という。)に適用すること。 (2) 労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号。以下「安衛則」という。)第478条第1項を踏まえ、 伐木作業の結果かかり木が生じた場合及び既にかかり木が生じ、当該かかり木の処理のための準備 等の作業を行う場合を対象とすること。ただし、「かかり木の処理の作業における労働災害防止の ためのガイドライン」の第1の2では、「台風等による被害木、枯損木等が、他の立木に寄りかかっ たものを除く。」としていることから、同様に除外すること。 4 ガイドラインの4の(1)について、保護具として防護ズボンを推奨しているものであるが、チャップス についても防護ズボンと同等の性能があると認められるものであること。なお、チャップスについては、 留め具式の場合は全ての留め具を確実に留めた上、適度に締め付けて使用すること。また、作業中の歩 行などによりチャップスがめくれることのないよう、最下部の留め具が足首にできるだけ近いものを使 用することが望ましいこと。おって、防護ズボン及びチャップスについては、労働者の身体に合ったも のを使用するべきことは当然であること。 5 上記4による防護ズボンについてはJIS T8125-2「手持ちチェーンソー使用者のための防護服第2部:脚 部防護服の試験方法及び要求性能」を引用しているが、チャップスについても同等の性能が要求される ことは当然であること。なお、ISO規格、EN規格、ASTM規格及びAS/NZS規格に定める防護性能について は、JIS規格とほぼ同等と考えられるため、これらの規格に定める防護性能を有する製品を使用する場合 はガイドラインに適合するものと認められること。 6 ガイドラインの4の(4)について、履物は、安衛則第558条を踏まえ、より適切な履物の使用を求める 趣旨であり、安全靴を推奨しているものであること。なお、つま先、足の甲部、足首、及び下腿の前半 部分にソーチェーンによる損傷を防ぐ保護部材が入っており、JIS T8125-3「手持ちチェーンソー使用 者のための防護服第3部:履物試験方法」と同等以上と認められる場合は、地下足袋型であってもガイド ラインに適合するものと認められること。また、下肢の前半部分が履物によって防護されない場合、す ね当てを使用することが望ましいこと。 7 ガイドラインの6の(1)について、以下によること。 ア 調査及び記録は、原則として、契約ごとに行うこと。ただし、作業を行う場所の対象範囲等が広範 囲に及ぶ場合には、いくつかの区画に区切って、調査及び記録を行うことは可能であること。 イ ガイドラインの6の(1)の表1及び表2における調査に含める事項のうち、重複する事項については、 必要な調査を行うことが可能であれば、伐木等作業の実態に即して、効率的に調査を行うことは可能 であること。 ウ 伐木等作業、車両系木材伐出機械を用いる作業等の調査及び記録についても、伐木等作業を行う場 合に必要となる調査及び記録と共にとりまとめ、一の様式にすることは可能であること。 8 ガイドラインの6の(2)について、以下によること。 ア 事業者は、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)「以下「法」という。」第28条の2第1項に基づ き、「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」(平成18年3月10日危険性又は有害性等の調査等 に関する指針公示第1号)を踏まえ、リスクアセスメントを次に掲げる時期に実施すること。なお、 現に行っている作業でリスクアセスメントを行っていないものについては、可能な限り、リスクアセ スメントを実施すること。 (ア) ガイドラインの6の(3)による作業計画を定め又は変更するとき (イ) 作業方法又は作業手順を新規に定め又は変更すると (ウ) その他、次に掲げる場合など、機器、作業行動その他業務に起因する危険性又は有害性等につ いて変化が生じ又は生ずるおそれがあるとき ① 労働災害が発生した場合であって、過去の調査等の内容に問題がある場合 ② 前回の調査等から一定の期間が経過し、労働者の入れ替わり等に伴う労働者の安全衛生に 係る知識経験の変化、新たな安全衛生に係る知見の集積等があった場合 (参考) 危険性又は有害性等の調査等に関する指針について(平成18年3月10日付け基発第031 0001号) イ 事業者は、リスクアセスメントの実施等の担当者に対して、平成3年1月21日付け基発第39号「安全 衛生教育及び研修の推進について」に基づき、当該職務に初めて指名されたときに、指名時教育とし て、当該業務に関する全般的な事項について安全衛生教育を行うこと。 9 ガイドラインの6の(3)について、以下によること。 ア 作業計画は、原則として、契約ごとに定めること。なお、当該契約には、請負契約及び立木売買契 約があること。ただし、作業を行う場所の対象範囲等が広範囲に及ぶ場合には、いくつかの区画に区 切って、作業計画を定めることは可能であること。 イ ガイドラインの6の(3)の表3及び表4における作業計画に含める事項のうち、重複する事項について は、必要な作業計画を定めていればよく、一の様式にとりまとめる等効率的に作業計画を定めること は可能であること。 ウ 伐木等作業、車両系木材伐出機械を用いる作業等の調査及び記録についても、チェーンソーを用い て伐木又は造材の作業を行う場合に必要となる調査及び記録と共にとりまとめ、一の様式にすること は可能であること 10 ガイドラインの6の(4)について、事業者は、作業指揮者に対して、平成3年1月21日付け基発第39号 「安全衛生教育及び研修の推進について」に基づき、当該職務に初めて指名されたときに、指名時教育 として、作業指揮者の職務、安全な作業方法、作業設備の点検及び改善措置等に関する事項について安 全衛生教育を行うこと。 11 ガイドラインの6の(5)について、なお書きに示すチェーンソーを用いて行う伐木等の業務従事者安 全衛生教育は、5年ごとに実施することが基本であること。これに加えて、伐木等作業に用いる機械や 器具を更新する場合、伐木等作業に従事する労働者を新たに受け入れる場合等の機会を捉えて、当該教 育を実施することは望ましいこと。 なお、労働安全衛生規則の一部を改正する省令(平成31年厚生労働省令第11号)附則第1条第1項に基 づき、同省令第2条中労働安全衛生規則第36条の改正規定が施行されるまでの間、同省令による改正前 の安衛則第36条第8号の2についても、ガイドラインの6の(5)に示す安衛則第36条第8号と同等に取り扱 うものであること。 12 ガイドラインの7の(2)について、伐倒しようとする立木を中心として、当該立木の高さの2倍に相当 する距離を半径とする円形の内側に伐倒者以外が立ち入ることを禁止することは、従前より、諸外国の 基準を踏まえ設定していたものであるが、労働安全衛生規則の一部を改正する省令(平成31年厚生労働 省令第11号)による改正後の安衛則第481条第2項により禁止されるものであること。 13 ガイドラインの7の(3)について、伐倒方向は、通常、安全とされる方向を示したものであり、原則と してガイドラインのとおり伐倒することが望ましいが、あらゆる状況に一律に適合できるものではない こと。また、状況によっては上方に伐倒することがあるが、これはガイドラインの枠を超える高度な技 術であること。 14 ガイドラインの7の(3)について、胸高直径が20センチメートル未満の立木であっても、伐根直径の 1/4以上の深さの受け口を作ることが、安全に伐倒作業を行う上で有効な場合があること。なお、受け 口の深さは、胸高直径により伐根直径の1/4以上又は1/3以上としているが、その上限は樹種や生育の 状況等により様々であるので一律に示すことが困難であること。 また、立木の安定性を損なうことのないよう、切りすぎず、かつ、ガイドラインに示した深さを下回 らないようにすることが必要であること。 15 ガイドラインの7の(4)について、追いづる切りは、突っ込み切りを行う際にチェーンソーのバー先 端上部が立木に触れてキックバックするおそれがあるので、チェーンソー作業の習熟の程度が十分でな い者は行わないこと。 16 ガイドラインの別添1を活用して作業計画を作成する場合には、以下によること。 ア 作業計画の裏面の「記入に係る留意事項等」を留意の上、記入すること。 イ 作業計画の表面は、標準的な様式であって、現場や作業の実態等を踏まえ、適宜、記載する項目や 情報を拡充して差し支えないこと。 ウ 作業計画の表面は、車両系木材伐出機械その他の作業を行うために定める作業計画としても使用で きること。 エ 作業計画の表面に記載した措置は、例示として選択肢を示したものであるので、当該選択肢に限定 されることなく、現場の実態に即した内容を記入すること。 17 ガイドラインの別添2の2の(2)のアの(ア)において、かかり木の発生後速やかに、当該かかり木の場 所から安全に退避できる場合には、伐倒時に設定退避場所を退避場所として選定することは可能である こと。 18 ガイドラインの別添2の2の(2)のエの(ア)から(オ)では、禁止事項ごとに、禁止しているかかり木の 処理の作業を示すとともに、なお書きにより、当該作業により労働者に及ぼされる危険等を示している こと。 19 ガイドラインの参考2について、事業者は、伐倒しようとする立木の胸高直径が20センチメートル未 満である場合には、当該伐倒に従事する労働者の知識や経験、当該立木の状況等によって、適切に受け 口、追い口及びつる(切り残し)を作ることが困難である場合もあり得ることに留意すること。