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別添(令和2年1月31日 基発0131第1号により廃止)

かかり木の処理の作業における労働災害防止のためのガイドライン


第1  目的等
1 目的
本ガイドラインは、近年の人工林における間伐作業の増加等を背景に、かかり木の処理の作業における死亡災害が増加する傾向にあること等を踏まえ、労働安全衛生関係法令と相まって、かかり木の処理に係る事前の実地調査の実施、新たに開発された機械器具等の使用等安全な作業方法の徹底、かかり木を一時的に放置する場合の措置の徹底等安全対策として必要な措置を講ずることにより、かかり木の処理の作業における労働災害の防止を図ることを目的とする。
2 本ガイドラインの対象とするかかり木の処理の作業
伐木作業の結果生じたかかり木の処理の作業とする。(台風等による被害木、枯損木等が、他の立木に寄りかかったものを除く。)

第2 基本的な考え方
林業の作業については、通常作業現場が山間部等の広範な区域にわたっていること、労働者が単独で作業を行う場合が多いこと等のため、事業者による安全管理が行われにくい面があるとともに、特に、かかり木の処理の作業は、伐木作業の結果により生ずるものであることから、あらかじめ作業の有無が予測しにくく、当該作業に使用する機械器具等の準備等が十分に行われにくいことから、かかり木の処理の作業における安全な作業方法の徹底等が図られにくい状況にある。
このため、かかり木の処理の作業における労働災害を防止するためには、
[1]事前踏査の際に、かかり木に係る事項についても実地調査を行い、その結果に基づき、携行が必要な機械器具等を決定する等必要な準備を行うこと。
[2]適切な機械器具等の使用、労働者の確実な退避等安全な作業方法を徹底すること。
[3]かかり木を一時的に放置せざるを得ない場合に、講ずべき措置を徹底すること。
等の措置の確実な実施が必要であり、本ガイドラインにおいては、このような措置を講ずる上で必要な具体的な事項を中心に示すこととする。
また、かかり木の処理の作業において、新たに開発された、軽量で、作業現場に容易に携行することのできる機械器具等(フェリングレバー、ターニングストラップ等)の使用について、推進することとする。

第3 事業者等の責務
伐木作業を行う事業者(以下「事業者」という。)は、本ガイドラインに基づく措置を講ずることにより、かかり木の処理の作業における労働災害の防止に努めるものとする。
伐木作業を行う労働者は、事業者が行う本ガイドラインに基づく措置を遵守することにより、かかり木の処理の作業における労働災害の防止に努めるものとする。

第4 事業者が講ずべき措置
事業者は、次に掲げる事項を行うこと。
1 かかり木に係る実地調査の実施等
(1) 実地調査の実施
伐木作業を行おうとする林分について、事前踏査を行う際に、立木の径級、林分の密度、伐倒方向、枝がらみ等の状況を実地に調査すること。
また、その調査結果に基づき、当該かかり木の処理に使用する機械器具等を決定すること。
(2) 必要な機械器具等の携行
(1)で決定した機械器具等を、伐木作業を行う作業現場に携行すること。
2 安全な作業方法の徹底
(1) 作業方法の決定
かかり木が発生した場合には、かかっている木の径級、かかり木の状況、作業場所の状況、周囲の地形等を踏まえ、(2)から(4)までの事項等により、当該かかり木の処理の作業について安全な作業方法を決定すること。
(2) 確実な退避の実施等
退避場所の選定等
かかり木の発生後速やかに、当該かかり木の場所から安全に退避できる退避場所を選定すること。
かかり木の状況の監視等
かかり木が発生した後、当該かかり木を一時的に放置する場合を除き、当該かかり木の処理の作業を終えるまでの間、かかり木の状況について常に注意を払うこと。
確実な退避の実施
かかり木の処理の作業を開始した後、当該かかり木がはずれ始めたときには、イで選定した退避場所に労働者を速やかに退避させるようにすること。
また、かかり木の処理の作業を開始する前において、当該かかり木により労働者に危険が生ずるおそれがある場合についても、同様に退避させるようにすること。
(3) かかり木の速やかな処理
かかり木が発生した場合には、速やかに当該かかり木を処理するようにすること。
また、当該かかり木を一時的に放置せざるを得ない場合については、3に掲げる措置を講ずること。
(4) 適切な機械器具等の使用
かかっている木の径級、かかり木の状況及び林内作業車、機械集材装置、高性能林業機械等の林業機械の使用の可否の別により、次により機械器具等を使用すること。
かかっている木の胸高直径が20p未満であって、かつ、かかり木が容易にはずれることが予想される場合
木回し、フェリングレバー、ターニングストラップ、ロープ等を使用して、かかり木をはずすようにすること。
また、木回し、フェリングレバー、ターニングストラップ等を使用する場合には、かかっている木が安全な方向にはずれるように回転させるようにすること。
さらに、ロープを使用する場合には、必要に応じてガイドブロック等を用い、かかっている木を安全な方向に引き倒すようにすること。
かかっている木の胸高直径が20p以上である場合又はかかり木が容易に外れないことが予想される場合
けん引具等を使用して、かかり木をはずすようにすること。
また、けん引具等を使用する場合には、ガイドブロック等を用い、安全な方向に引き倒すようにするとともに、かかっている木の樹幹にワイヤロープを数回巻き付け、けん引具等によりけん引したときに、かかっている木が回転するようにすること。
林業機械を使用できる場合
林内作業車、機械集材装置、高性能林業機械等の林業機械を使用できる場合においては、これらを使用して、かかり木をはずすようにすること。
ただし、けん引具等を使用することにより、かかり木を安全に外すことができる場合については、この限りではないこと。
また、林業機械を使用する場合には、ガイドブロックを用い、安全な方向に引き倒すようにするとともに、急なウインチの操作、走行、ワイヤロープの巻取り等を行わないようにすること。
(5) かかり木の処理の作業における禁止事項の遵守
かかり木の処理の作業においては、次に掲げる事項を行ってはならないこと。
かかられている木の伐倒
かかられている木を伐倒することにより、かかり木全体を倒すこと。
他の立木の投げ倒し(浴びせ倒し)
他の立木を伐倒し、かかり木に激突させることにより、かかり木を外すこと。
かかっている木の元玉切り
かかっている木について、かかった状態のままで元玉切りをし、地面等に落下させることにより、かかり木を外すこと。
かかっている木の肩担ぎ
かかっている木を肩に担ぎ、移動すること等により、かかり木を外すこと。
かかり木の枝切り
かかられている木に上り、かかっている木又はかかられている木の枝条を切り落とすこと等により、かかり木を外すこと。
3 かかり木を一時的に放置せざるを得ない場合の措置の徹底
かかり木をやむを得ず一時的に放置する場合については、当該かかり木による危険が生ずるおそれがある場所に労働者等が誤って近付かないよう、標識の掲示、縄張り等の措置を講ずること。



かかり木の処理の作業における労働災害の防止のためのガイドラインの概念図