安全衛生情報センター
1 はじめに 平成14年4月5日付け基発第0405001号「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(以下 「VDTガイドライン」という。)の基本的な考え方は、次のとおりである。 VDT(Visual Display Terminals)作業に従事する者の心身の負担を軽減するためには、事業者が作 業環境をできる限りVDT作業に適した状況に整備するとともに、VDT作業が過度に長時間にわたり行わ れることのないように適正な作業管理を行うことが重要である。 また、作業者が心身の負担を強く感じている場合や身体に異常がある場合には、早期に作業環境、作 業方法等の改善を図り、VDT作業を支障なく行うことができるようにする必要がある。そのためには、 事業者が作業者の健康状態を正しく把握し、できるだけ早い段階で作業者の健康状態に応じた適正な措 置を講ずることができるよう、作業者の健康管理を適正に行うことが重要である。 VDTガイドラインは、このような考え方により、VDT作業における作業環境管理、作業管理、健康管 理等の労働衛生管理について、産業医学、人間工学等の分野における知見に基づき、作業者の心身の負 担を軽減し、作業者が情報機器作業を支障なく行うことができるよう支援するために事業者が講ずべき 措置等について示したものである。 一方、平成14年にVDTガイドラインが策定されて以降、ハードウェア及びソフトウェア双方の技術革 新により、職場におけるIT化はますます進行している。これに伴い、ディスプレイ、キーボード等によ り構成されるVDT機器のみならずタブレット、スマートフォン等の携帯用情報機器を含めた情報機器が 急速に普及し、これらを使用して情報機器作業を行う労働者の作業形態はより多様化しているところで ある。 具体的には、 ① 情報機器作業従事者の増大 ② 高齢労働者も含めた幅広い年齢層での情報機器作業の拡大 ③ 携帯情報端末の多様化と機能の向上 ④ タッチパネルの普及等、入力機器の多様化 ⑤ 装着型端末(ウェアラブルデバイス)の普及 等の変化が起こっている。 上記①、②については、総務省「通信利用動向調査」によれば、事業所のパーソナルコンピュータ (以下「パソコン」という。)保有率は、平成14年時点で9割に達し、多くの労働者が情報機器を使用す る作業に従事している。VDTガイドラインが念頭に置いているパソコン等情報機器を使用して行う作業 における健康障害に関する知見は、ここ10年大きな変化はなく、パソコン等情報機器を使用して行う作 業における労働衛生管理については、引き続き取組が必要である。 一方、上記BからDまでに関連し、VDTガイドラインでは、主にデスクトップ型パソコンやノート型 パソコンを使って机で集中的に作業するという作業様態が念頭に置かれていたが、「平成29年通信利用 動向調査」によれば、例えば、個人のインターネットの利用機器の状況がパソコンよりもスマートフォ ンが上回るなど、使用される情報機器の種類や活用状況は多様化している。 このような状況を踏まえ、VDTガイドラインの基本的な考え方について変更せず、従来の視覚による 情報をもとに入力操作を行うという作業を引き続きガイドラインの対象としつつ、情報技術の発達や、 多様な働き方に対応するよう健康管理を行う作業区分を見直し、その他、最新の学術的知見を踏まえた 見直しを行った。 なお、VDTの用語が一般になじみがないこと、また、上述のとおり多様な機器等が労働現場で使用さ れていることを踏まえ、今般「VDT」の用語を「情報機器」に置き換え、「情報機器作業における労働 衛生管理のためのガイドライン」(以下「情報機器ガイドライン」という。)を定めることとした。 2 対象となる作業 対象となる作業は、事務所(事務所衛生基準規則第1条第1項に規定する事務所をいう。以下同じ。)に おいて行われる情報機器作業(パソコンやタブレット端末等の情報機器を使用して、データの入力・検 索・照合等、文章・画像等の作成・編集・修正等、プログラミング、監視等を行う作業をいう。以下同 じ。) とし、別紙「情報機器作業の作業区分」(以下「別紙」という。)を参考に、作業の実態を踏ま えながら、産業医等の専門家の意見を聴きつつ、衛生委員会等で、個々の情報機器作業を区分し、作業 内容及び作業時間に応じた労働衛生管理を行うこととする。 具体的には、別紙に定める ・「作業時間又は作業内容に相当程度拘束性があると考えられるもの(全ての者が健診対象)」について は、4から8まで及び9(1) ・「上記以外のもの(自覚症状を訴える者のみ健診対象)」については、4から8まで及び9(2) に記載された労働衛生管理を原則として行うこと。ただし、全てを一律に行うのではなく、対策の検討 に当たっては、3の「対策の検討及び進め方に当たっての留意事項」を参照の上進めること。 なお、情報機器作業における労働衛生管理のほか、心の健康への対処については、「事業場における 労働者の心の健康の保持増進のための指針」(平成18年3月31日健康保持増進のための指針公示第3号、 平成27年11月30日同第6号)に基づき必要な措置を講ずること。さらに、情報機器作業のみならず、情 報機器作業以外の時間も含めた労働時間の把握、長時間労働の抑制に向けた取組、長時間労働者に対す る医師の面接指導などによる健康確保についても必要な措置を講じること。 また、事務所以外の場所において行われる情報機器作業、自営型テレワーカーが自宅等において行う 情報機器作業及び情報機器作業に類似する作業についても、できる限り情報機器ガイドラインに準じて 労働衛生管理を行うよう指導等することが望ましい。 3 対策の検討及び進め方に当たっての留意事項 事務所における情報機器作業が多様化したこと、また、情報機器の発達により、当該機器の使用方法 の自由度が増したことから、情報機器作業の健康影響の程度についても労働者個々人の作業姿勢等によ り依存するようになった。そのため、対策を一律かつ網羅的に行うのではなく、それぞれの作業内容や 使用する情報機器、作業場所ごとに、健康影響に関与する要因のリスクアセスメントを実施し、その結 果に基づいて必要な対策を取捨選択することが必要である。 したがって、対策の検討に当たっては、 ① 情報機器作業の健康影響が作業時間と拘束性に強く依存することを踏まえ、「5 作業管理」に掲 げられた対策を優先的に行うこと。 ② 情報機器ガイドラインに掲げるそれぞれの対策については、実際の作業を行う労働者の個々の作業 内容、使用する情報機器、作業場所等に応じて必要な対策を拾い出し進めること。 を原則的な考え方として進めること。 また、対策を進めるに当たっては、以下の点に留意する必要がある。 ① 事業者は、安全衛生に関する基本方針を明確にし、安全衛生管理体制を確立するとともに、各級管 理者、作業者等の協力の下、具体的な安全衛生計画を作成すること。また、作成した計画に基づき、 作業環境の改善、適正な作業管理の徹底、作業者の健康管理の充実等の労働衛生管理活動を計画的か つ組織的に進めていく必要があること。 ② 作業者がその趣旨を理解し、積極的に措置の徹底に協力することが極めて重要であるので、適切な 労働衛生教育を実施することが不可欠であること。 ③ 情報機器ガイドラインは、主な情報機器作業を対象としたものであるので、各事業場においては、 これをもとに、衛生委員会等で十分に調査審議すること。また、情報機器を使用する作業の実態に応 じて、情報機器作業に関する労働衛生管理基準を定めるとともに、当該基準を職場の作業実態により よく適合させるため、衛生委員会等において、一定期間ごとに評価を実施し、必要に応じて見直しを 行うことが重要であること。 ④ この基準をより適正に運用するためには、労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針(平成 11年労働省告示第53号)に基づき、事業者が労働者の協力の下に一連の過程を定めて継続的に行う自 主的な安全衛生活動の一環として取り組むことが効果的であること。 4 作業環境管理 作業者の心身の負担を軽減し、作業者が支障なく作業を行うことができるよう、次により情報機器作 業に適した作業環境管理を行うこと。 (1) 照明及び採光 イ 室内は、できる限り明暗の対照が著しくなく、かつ、まぶしさを生じさせないようにすること。 ロ ディスプレイを用いる場合の書類上及びキーボード上における照度は300ルクス以上とし、作業 しやすい照度とすること。 また、ディスプレイ画面の明るさ、書類及びキーボード面における明るさと周辺の明るさの差 はなるべく小さくすること。 ハ ディスプレイ画面に直接又は間接的に太陽光等が入射する場合は、必要に応じて窓にブラインド 又はカーテン等を設け、適切な明るさとなるようにすること。 ニ 間接照明等のグレア防止用照明器具を用いること。 ホ その他グレアを防止するための有効な措置を講じること。 (2) 情報機器等 イ 情報機器の選択 情報機器を事業場に導入する際には、作業者への健康影響を考慮し、作業者が行う作業に最も適 した機器を選択し導入すること。 ロ デスクトップ型機器 (イ) ディスプレイ ディスプレイは、次の要件を満たすものを用いること。 a 目的とする情報機器作業を負担なく遂行できる画面サイズであること。 b ディスプレイ画面上の輝度又はコントラストは作業者が容易に調整できるものであることが 望ましい。 c 必要に応じ、作業環境及び作業内容等に適した反射処理をしたものであること。 d ディスプレイ画面の位置、前後の傾き、左右の向き等を調整できるものであることが望まし い。 (ロ) 入力機器(キーボード、マウス等) a 入力機器は、次の要件を満たすものを用いること。 (a) キーボードは、ディスプレイから分離して、その位置が作業者によって調整できることが 望ましい。 (b) キーボードのキーは、文字が明瞭で読みやすく、キーの大きさ及びキーの数がキー操作を 行うために適切であること。 (c) マウスは、使用する者の手に適した形状及び大きさで、持ちやすく操作がしやすいこと。 (d) キーボードのキー及びマウスのボタンは、押下深さ(ストローク)及び押下力が適当であり、 操作したことを作業者が知覚し得ることが望ましい。 b 目的とする情報機器作業に適した入力機器を使用できるようにすること。 c 必要に応じ、パームレスト(リストレスト)を利用できるようにすること。 ハ ノート型機器 (イ) 適した機器の使用 目的とする情報機器作業に適したノート型機器を適した状態で使用させること。 (ロ) ディスプレイ ディスプレイは、上記ロの(イ)の要件に適合したものを用いること。ただし、ノート型機器 は、通常、ディスプレイとキーボードを分離できないので、長時間、情報機器作業を行う場合 については、作業の内容に応じ外付けディスプレイなども使用することが望ましい。 (ハ) 入力機器(キーボード、マウス等) 入力機器は、上記ロの(ロ)の要件に適合したものを用いること。 ただし、ノート型機器は、通常、ディスプレイとキーボードを分離できないので、小型のノー ト型機器で長時間の情報機器作業を行う場合については、外付けキーボードを使用することが望 ましい。 (ニ) マウス等の使用 必要に応じて、マウス等を利用できるようにすることが望ましい。 (ホ) テンキー入力機器の使用 数字を入力する作業が多い場合は、テンキー入力機器を利用できるようにすることが望ましい。 ニ タブレット、スマートフォン等 (イ) 適した機器の使用 目的とする情報機器作業に適した機器を適した状態で使用させること。 (ロ) オプション機器の使用 長時間、タブレット型機器等を用いた作業を行う場合には、作業の内容に応じ適切なオプショ ン機器(ディスプレイ、キーボード、マウス等)を適切な配置で利用できるようにすることが望ま しい。 ホ その他の情報機器 ロからニまで以外の新しい表示装置や入力機器等を導入し、使用する場合には、作業者への健康 影響を十分に考慮して、目的とする情報機器作業に適した機器を適した状態で使用させること。 ヘ ソフトウェア ソフトウェアは、次の要件を満たすものを用いることが望ましい。 (イ) 目的とする情報機器作業の内容、作業者の技能、能力等に適合したものであること。 (ロ) 作業者の求めに応じて、作業者に対して、適切な説明が与えられるものであること。 (ハ) 作業上の必要性、作業者の技能、好み等に応じて、インターフェイス用のソフトウェアの設定 が容易に変更可能なものであること。 (ニ) 操作ミス等によりデータ等が消去された場合に容易に復元可能なものであること。 ト 椅子 椅子は、次の要件を満たすものを用いること。 (イ) 安定しており、かつ、容易に移動できること。 (ロ) 床からの座面の高さは、作業者の体形に合わせて、適切な状態に調整できること。 (ハ) 複数の作業者が交替で同一の椅子を使用する場合には、高さの調整が容易であり、調整中に座 面が落下しない構造であること。 (ニ) 適当な背もたれを有していること。また、背もたれは、傾きを調整できることが望ましい。 (ホ) 必要に応じて適当な長さの肘掛けを有していること。 チ 机又は作業台 机又は作業台は、次の要件を満たすものを用いること。 (イ) 作業面は、キーボード、書類、マウスその他情報機器作業に必要なものが適切に配置できる広 さであること。 (ロ) 作業者の脚の周囲の空間は、情報機器作業中に脚が窮屈でない大きさのものであること。 (ハ) 机又は作業台の高さについては、次によること。 a 高さの調整ができない机又は作業台を使用する場合、床からの高さは作業者の体形にあった高 さとすること。 b 高さの調整が可能な机又は作業台を使用する場合、床からの高さは作業者の体形にあった高さ に調整できること。 (3) 騒音の低減措置 情報機器及び周辺機器から不快な騒音が発生する場合には、騒音の低減措置を講じること。 (4) その他 換気、温度及び湿度の調整、空気調和、静電気除去、休憩等のための設備等について事務所衛生基 準規則に定める措置等を講じること。 5 作業管理 作業者が、心身の負担が少なく作業を行うことができるよう、次により作業時間の管理を行うととも に、4により整備した情報機器、関連什器等を調整し、作業の特性や個々の作業者の特性に合った適切 な作業管理を行うこと。 (1) 作業時間等 イ 一日の作業時間 情報機器作業が過度に長時間にわたり行われることのないように指導すること。 ロ 一連続作業時間及び作業休止時間 一連続作業時間が1時間を超えないようにし、次の連続作業までの間に10分〜15分の作業休止時 間を設け、かつ、一連続作業時間内において1回〜2回程度の小休止を設けるよう指導すること。 ハ 業務量への配慮 作業者の疲労の蓄積を防止するため、個々の作業者の特性を十分に配慮した無理のない適度な業 務量となるよう配慮すること。 (2) 調整 作業者に自然で無理のない姿勢で情報機器作業を行わせるため、次の事項を作業者に留意させ、椅 子の座面の高さ、机又は作業台の作業面の高さ、キーボード、マウス、ディスプレイの位置等を総合 的に調整させること。 イ 作業姿勢 座位のほか、時折立位を交えて作業することが望ましく、座位においては、次の状態によること。 (イ) 椅子に深く腰をかけて背もたれに背を十分にあて、履き物の足裏全体が床に接した姿勢を基本 とすること。また、十分な広さを有し、かつ、すべりにくい足台を必要に応じて備えること。 (ロ) 椅子と大腿部膝側背面との間には手指が押し入る程度のゆとりがあり、大腿部に無理な圧力が 加わらないようにすること。 ロ ディスプレイ (イ) おおむね40cm以上の視距離が確保できるようにし、この距離で見やすいように必要に応じて適 切な眼鏡による矯正を行うこと。 (ロ) ディスプレイは、その画面の上端が眼の高さとほぼ同じか、やや下になる高さにすることが望 ましい。 (ハ) ディスプレイ画面とキーボード又は書類との視距離の差が極端に大きくなく、かつ、適切な視 野範囲になるようにすること。 (ニ) ディスプレイは、作業者にとって好ましい位置、角度、明るさ等に調整すること。 (ホ) ディスプレイに表示する文字の大きさは、小さすぎないように配慮し、文字高さがおおむね3 mm以上とするのが望ましい。 ハ 入力機器 マウス等のポインティングデバイスにおけるポインタの速度、カーソルの移動速度等は、作業者 の技能、好み等に応じて適切な速度に調整すること。 ニ ソフトウェア 表示容量、表示色数、文字等の大きさ及び形状、背景、文字間隔、行間隔等は、作業の内容、作 業者の技能等に応じて、個別に適切なレベルに調整すること。 6 情報機器等及び作業環境の維持管理 作業環境を常に良好な状態に維持し、情報機器作業に適した情報機器等の状況を確保するため、次に より点検及び清掃を行い、必要に応じ、改善措置を講じること。 (1) 日常の点検 作業者には、日常の業務の一環として、作業開始前又は一日の適当な時間帯に、採光、グレアの防 止、換気、静電気除去等について点検させるほか、ディスプレイ、キーボード、マウス、椅子、机又 は作業台等の点検を行わせること。 (2) 定期点検 照明及び採光、グレアの防止、騒音の低減、換気、温度及び湿度の調整、空気調和、静電気除去等 の措置状況及びディスプレイ、キーボード、マウス、椅子、机又は作業台等の調整状況について定期 に点検すること。 (3) 清掃 日常及び定期に作業場所、情報機器等の清掃を行わせ、常に適正な状態に保持すること。 7 健康管理 作業者の健康状態を正しく把握し、健康障害の防止を図るため、作業者に対して、次により健康管理 を行うこと。 (1) 健康診断 イ 配置前健康診断 新たに情報機器作業を行うこととなった作業者(再配置の者を含む。以下同じ。)の配置前の健康 状態を把握し、その後の健康管理を適正に進めるため、情報機器作業の作業区分に応じて、別紙に 定める作業者に対し、次の項目について必要な調査又は検査を実施すること。 なお、配置前健康診断を行う前後に一般健康診断(労働安全衛生法第66条第1項に定めるものをい う。)が実施される場合は、一般健康診断と併せて実施して差し支えない。 a 業務歴の調査 b 既往歴の調査 c 自覚症状の有無の調査 (a) 眼疲労を主とする視器に関する症状 (b) 上肢、頸肩腕部及び腰背部を主とする筋骨格系の症状 (c) ストレスに関する症状 d 眼科学的検査 (a) 視力検査 i 遠見視力の検査 ii 近見視力の検査 (b) 屈折検査 (c) 自覚症状により目の疲労を訴える者に対しては、眼位検査、調節機能検査 e 筋骨格系に関する検査 (a) 上肢の運動機能、圧痛点等の検査 (b) その他医師が必要と認める検査 ロ 定期健康診断 情報機器作業を行う作業者の配置後の健康状態を定期的に把握し、継続的な健康管理を適正に進 めるため、情報機器作業の作業区分に応じて、別紙に定める作業者に対し、1年以内ごとに1回、定 期に、次の項目について必要な調査又は検査を実施すること。 なお、一般定期健康診断(労働安全衛生法第66条第1項に定めるものをいう。)を実施する際に、 併せて実施して差し支えない。 a 業務歴の調査 b 既往歴の調査 c 自覚症状の有無の調査 (a) 眼疲労を主とする視器に関する症状 (b) 上肢、頸肩腕部及び腰背部を主とする筋骨格系の症状 (c) ストレスに関する症状 d 眼科学的検査 (a) 視力検査 i 遠見視力の検査 ii 近見視力の検査 iii 40歳以上の者に対しては、調節機能検査及び医師の判断により眼位検査。ただし、c 自 覚症状の有無の調査において特に異常が認められず、d(a)i遠見視力又はd(a)ii近見視力がい ずれも、片眼視力(裸眼又は矯正)で両眼とも0.5以上が保持されている者については、省略し て差し支えない。 (b) その他医師が必要と認める検査 e 筋骨格系に関する検査 (a) 上肢の運動機能、圧痛点等の検査 (b) その他医師が必要と認める検査 ハ 健康診断結果に基づく事後措置 配置前又は定期の健康診断によって早期に発見した健康阻害要因を詳細に分析し、有所見者に対 して次に掲げる保健指導等の適切な措置を講じるとともに、予防対策の確立を図ること。 (イ) 業務歴の調査、自他覚症状、各種検査結果等から愁訴の主因を明らかにし、必要に応じ、保 健指導、専門医への受診指導等により健康管理を進めるとともに、作業方法、作業環境等の改 善を図ること。また、職場内のみならず職場外に要因が認められる場合についても必要な保健 指導を行うこと。 (ロ) 情報機器作業の視距離に対して視力矯正が不適切な者には、支障なく情報機器作業ができる ように、必要な保健指導を行うこと。 (ハ) 作業者の健康のため、情報機器作業を続けることが適当でないと判断される者又は情報機器 作業に従事する時間の短縮を要すると認められる者等については、産業医等の意見を踏まえ、 健康保持のための適切な措置を講じること。 (2) 健康相談 作業者が気軽に健康について相談し、適切なアドバイスを受けられるように、プライバシー保護へ の配慮を行いつつ、メンタルヘルス、健康上の不安、慢性疲労、ストレス等による症状、自己管理の 方法等についての健康相談の機会を設けるよう努めること。 また、パートタイマー等を含む全ての作業者が相談しやすい環境を整備する等特別の配慮を行うこ とが望ましい。 (3) 職場体操等 就業の前後又は就業中に、体操、ストレッチ、リラクゼーション、軽い運動等を行うことが望まし い。 8 労働衛生教育 労働衛生管理のための諸対策の目的と方法を作業者に周知することにより、職場における作業環境・ 作業方法の改善、適正な健康管理を円滑に行うため及び情報機器作業による心身への負担の軽減を図る ことができるよう、次の労働衛生教育を実施すること。 また、新たに情報機器作業に従事する作業者に対しては、情報機器作業の習得に必要な訓練を行うこ と。なお、教育及び訓練を実施する場合は、計画的に実施するとともに、実施結果について記録するこ とが望ましい。 (1) 作業者に対する教育内容 作業者に対して、次の事項について教育を行うこと。また、当該作業者が自主的に健康を維持管理 し、かつ、増進していくために必要な知識についても教育を行うことが望ましい。 イ 情報機器ガイドラインの概要 ロ 作業管理 (内容) 作業計画・方法、作業姿勢、ストレッチ・体操など ハ 作業環境管理 (内容) 情報機器の種類・特徴・注意点 ニ 健康管理 (内容) 情報機器作業の健康への影響(疲労、視覚への影響、筋骨格系への影響、メンタルヘル スなど) (2) 管理者に対する教育内容 情報機器作業に従事する者を直接管理する者に対して、次の事項について教育を行うこと。 イ 情報機器ガイドラインの概要(労働災害統計を含む。) ロ 作業管理 (内容) 作業時間、作業計画・方法、ストレッチ・体操など ハ 作業環境管理 (内容) 情報機器の種類・特徴・注意点、作業環境(作業空間、ワークステーション、什器、採 光・照明、空調など) ニ 健康管理 (内容) 情報機器作業の健康への影響(疲労、視覚への影響、筋骨格系への影響、メンタルヘル スなど)、健康相談・健康診断(受け方)、事後措置 9 情報機器作業の作業区分に応じて実施する事項 (1) 「作業時間又は作業内容に相当程度拘束性があると考えられるもの(全ての者が健診対象)」に該当 する者の場合 以下の対策を1〜8に加えて実施すること。 イ 一日の連続作業時間への配慮 視覚負担をはじめとする心身の負担を軽減するため、他の作業を組み込むこと又は他の作業との ローテーションを実施することなどにより、一日の連続情報機器作業時間が短くなるように配慮す ること。 ロ 健康診断 新たに作業時間又は作業内容に相当程度拘束性があると考えられるもの(全ての者が健診対象)に 該当することとなった作業者(再配置の者を含む。以下同じ。)には、7(1)イによる配置前健康診断 を、作業者の配置後には、7(1)ロにより定期健康診断を、全ての対象者に実施すること。 (2) 「上記以外のもの(自覚症状を訴える者のみ健診対象)」に該当する者の場合 以下の対策を1〜8に加えて実施すること。 イ 健康診断 新たに上記以外のもの(自覚症状を訴える者のみ健診対象)に該当することとなった作業者(再配 置の者を含む。以下同じ。)には、7(1)イによる配置前健康診断を、作業者の配置後には、7(1)ロ により定期健康診断を、自覚症状を訴える者を対象に実施すること。 10 配慮事項等 (1) 高齢者に対する配慮事項等 高年齢の作業者については、照明条件やディスプレイに表示する文字の大きさ等を作業者ごとに見 やすいように設定するとともに、過度の負担にならないように作業時間や作業密度に対する配慮を行 うことが望ましい。 また、作業の習熟の速度が遅い作業者については、それに合わせて追加の教育、訓練を実施する等 により、配慮を行うことが望ましい。 (2) 障害等を有する作業者に対する配慮事項 情報機器作業の入力装置であるキーボードとマウスなどが使用しにくい障害等を有する者には、必 要な音声入力装置等を使用できるようにするなどの必要な対策を講じること。 また、適切な視力矯正によってもディスプレイを読み取ることが困難な者には、拡大ディスプレイ、 弱視者用ディスプレイ等を使用できるようにするなどの必要な対策を講じること。 (3) テレワークを行う労働者に対する配慮事項 情報機器ガイドラインのほか、「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」 (令和3年3月25日付け基発0325第2号、雇均発0325第3号「テレワークの適切な導入及び実施の推進の ためのガイドラインについて」別添1)を参照して必要な健康確保措置を講じること。 その際、事業者が業務のために提供している作業場以外でテレワークを行う場合については、事務 所衛生基準規則、労働安全衛生規則及び情報機器ガイドラインの衛生基準と同等の作業環境となるよ う、テレワークを行う労働者に助言等を行うことが望ましい。 (4) 自営型テレワーカーに対する配慮事項 注文者は、「自営型テレワークの適正な実施のためのガイドライン」(平成30年2月2日付け雇均発 0202第1号「「在宅ワークの適正な実施のためのガイドライン」の改正について」別添)に基づき、 情報機器作業の適切な実施方法等の健康を確保するための手法について、自営型テレワーカーに情報 提供することが望ましい。 また、情報提供の際は、必要に応じて情報機器ガイドラインを参考にし、情報提供することが望ま しい。 (解説)