安全衛生情報センター
平成28年に、化成品等の製造事業場で、複数の労働者等に膀胱がんの病歴又は所見があることが明らか になり、独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所の協力も得て作業実態や発生原因につ いて調査を行ったところ、これらの労働者等のうち多くは3,3'-ジクロロ-4,4'-ジアミノジフェニルメタ ン(MOCA)を取り扱う作業に従事していたことが判明したことから、平成28年9月21日付け基安発0921第1 号「3,3'-ジクロロ-4,4'-ジアミノジフェニルメタン(MOCA)による健康障害の防止対策について」又は平 成28年10月7日付け基安発1007第2号「3,3'-ジクロロ-4,4'-ジアミノジフェニルメタン(MOCA)による健 康障害の防止対策について」により、貴団体に対し、MOCAによる健康障害を防止するため、法令等の改め ての徹底及び緊急の措置の実施を要請したところです。 今般、要請から約2年が経過していること、別添参考資料のとおり、上記事業場以外の事業場において も、MOCAを取り扱ったことのある労働者等に膀胱がん有病歴者がいることが把握されていること、MOCAは 特定化学物質障害予防規則(昭和47年労働省令第39号。以下「特化則」という。)の対象物質ですが、これ らの事業場の中には、特化則の規定に基づき義務付けられている作業環境測定や特殊健康診断を実施して いない等の法令違反が認められた事業場もあったこと、MOCAに係る作業環境測定について、より正確な濃 度の見積もりが可能となる方法が確認されたことから、改めて下記のとおり健康障害の防止対策の徹底を 要請したいと思いますので、貴会関係事業場に対して改めて周知いただきますようお願いいたします。 なお、現在もMOCAの製造・取扱いを行っている事業場(現在取扱事業場)は下記1から4まで、現在の製造 ・取扱いはなく過去にMOCAの製造・取扱いを行っていた事業場(過去取扱事業場)は下記2及び3について、 実施をお願いするものです。
1 特化則に基づくばく露防止措置等の徹底(現在取扱事業場) MOCAの製造・取扱いを現在行っている事業場においては、特化則に基づくばく露防止措置を徹底する こと。 その際、設備的な対策のみならず、関係労働者の作業方法や保護具の着用・管理等についても必要な 対策を講じること。また、経気道ばく露に限らず、保護手袋の着用や休憩室への入室の際の付着物の除 去状況など、経皮ばく露や経口ばく露の防止措置も講じること。 2 特化則に基づく健康管理の徹底等(現在取扱事業場、過去取扱事業場) 現にMOCAを取り扱っている労働者及び過去に取り扱ったことのある労働者であって現在も雇用してい るものに対して、平成29年4月から施行された改正後の特化則に基づく特殊健康診断(膀胱がん等の尿路 系の障害(腫瘍等)を予防・早期発見するための項目が追加されたもの)の実施を徹底すること。 なお、MOCAを取り扱ったことのある労働者であって既に退職しているものについては、今後、専門家 の意見を聴取し、必要な措置を講じる予定としているが、それまでの間、特化則に基づく特殊健康診断 と同様の内容の検査の受検を勧奨すること。 3 特化則に基づく記録の保存期間の延長(現在取扱事業場、過去取扱事業場) 膀胱がん有病歴者の中には、 MOCAへのばく露から膀胱がんの発症まで30年以上経過していると考え られる者も確認されたことから、MOCAを現在又は過去に製造し、若しくは取り扱ったことのある事業場 においては、特化則に基づくMOCAに関する作業の記録、作業環境測定の評価の記録、特殊健康診断の結 果の記録について、法令上の保存期間(30年間)を経過後も、引き続き、保存すること。 4 当面の作業環境測定方法(現在取扱事業場) MOCAの製造・取扱事業場に実施が義務付けられている作業環境測定について、より正確に濃度を見積 もることが可能となる方法が確認されたことから、厚生労働省においては、MOCAの測定法の見直しのた めの検討を進めている。ついては、当分の間、作業環境測定基準(昭和51年労働省告示第46号)に基づく 従来のろ過捕集方法に加え、別途示す米国労働安全衛生庁(OSHA)が示す方法を参考とした測定も併用す ることが望ましいこと。 別紙 送付先団体: 一般社団法人日本化学工業協会 会長 化成品工業協会 会長 日本ウレタン建材工業会 会長 ウレタン原料工業会 会長 全国防水工事業協会 会長 建設業労働災害防止協会 会長 参考1 参考2