プッシュプル型換気装置の性能及び構造上の要件等について |
改正履歴
都道府県労働基準局長 殿
労働省労働基準局長
プッシュプル型換気装置の性能及び構造上の要件等について
標記の装置については、近年作業環境改善技術の進展に伴い、設備改善の一手法として有効性が認めら
れ、具備すべき性能及び構造上の要件の明確化が要望されてきたところである。このため、昭和53年4月
以降専門家による検討を行ってきたところであるが、今般その成果をふまえ、本装置が具備すべき性能及
び構造上の要件等を下記の第1のとおりまとめ、本装置に係る当面の法令上の適用及び取扱い等について
下記の第2のとおり定めたので了知のうえ対応に、遺憾なきを期されたい。
記
第1 プッシュプル型換気装置の性能及び構造上の要件
一様な捕捉気流(有害物質の発散源又はその付近を通り吸込み型フードに向かう気流であって、捕捉
面での気流の方向及び風速が一様であるもの)を形成させ、当該気流によって発散源から発散する有害
物質を捕捉し吸込み側フードに取り込んで排出する装置(以下、「プッシュプル型換気装置」という。)
のうち、現在までに性能等の基礎的データが蓄積され実用化が図られているものは、①有害なガス、
蒸気又は粉じんを発散する局所において吸引、排気する設備(図1参照。以下「プッシュプル型局所換
気装置」という。)で有害な化学物質の液体又は溶液が入っている開放槽の開口部に設置するもの(形
成する一様な捕捉気流に有害物質の発散源の全体を含むものを除く。以下「プッシュプル型局所換気
装置(開放槽用)」という。)②形成する一様な捕捉気流に有害物質発散源の全体を含むもの及び③
有害なガス、蒸気又は粉じん若しくは高熱等から労働者をしゃ断する設備(図3参照。以下、「プッ
シュプル型しゃ断装置」という。)である。このうち、前記②の設備についての要件は、平成9年労働
省告示第21号(有機溶剤中毒予防規則第16条の2の規定に基づき労働大臣が定める構造及び性能を定め
る件)、平成10年労働省告示第30号(粉じん障害防止規則第11条第2項第4号の規定に基づき労働大臣が
定める要件を定める件)、平成15年厚生労働省告示第375号(鉛中毒予防規則第30条の2の厚生労働大臣が
定める構造及び性能)及び平成15年厚生労働省告示第377号(特定化学物質等障害予防規則第7条第2項第
4号及び第50条第1項第8号ホの厚生労働大臣が定める要件)に規定されたとおりである。また、前記①及
び③の設備に係る風速、風量等の性能及び構造上の要件は次のとおりである。
T プッシュプル型局所換気装置(開放槽用)
1 風速
(1) 図1のAA’及びBB’の線上の点の吸込み側フードに向かう風速(同一点における風速が
変動する場合は、その最小値)の最大値の各々が0.3m/s以上であること。
(2) 吹出し側フードの開口面を16以上の等面積の四辺形(一辺の長さが50cm以下であること。)
に分け、その各々の中心点の風速をV1、V2、…、Vn、それらの平均値をVとしたとき、V1、
V2、…、Vn各々がVの0.5倍以上、1.5倍以下であること。
2 風量
吸込み風量(Q3)が吹出し風量(Q1)の1.3倍以上、20倍以下であること。
3 構造
(1) 吹出し側フードと吸込み側フードとの距離(H)が吹出し側フードの開口部の幅(D1)の30倍以
下であること。
(2) 吹出し側フードと吸込み側フードとの距離(H)が吸込み側フードのフランジの全幅(F3)の5
倍以下であること。
(3) 吸込み側フードのフランジの全幅(F3)が吹出し側フードの開口部(D1)の2倍以上であるこ
と。
4 その他
(1) 吹出し側フードとの距離(H)をできるだけ短くすること。
(2) 吹出し気流及び吸込み気流の方向を一致させること。
(3) 妨害気流をできるだけ少なくすること。
(4) 労働者の呼吸域が吹出し、吸込み気流中に入らないように設置すること。
(5) 洗浄等の作業を行う場合には、当該洗浄等により吹出し、吸込み気流ができるだけ乱されな
いようにすること。
U 削除 図2削除
V プッシュプル型しゃ断装置
1 風速
(1) 前記Tの1の(1)により測定した風速の最大値が0.5m/s以上であること。
(2) 前記の1の(2)に示す要件を満足すること。
2 風量
吸込み風量(Q3)が吹出し風量(Q1)の1.3倍以上、20倍以下であること。
3 構造
(1) 前記の3の(1)及び(3)に示す要件を満足すること。
(2) 吹出し側フードにはフランジを取り付けないこと。
4 その他
(1) 前記Tの4に示す事項
(2) この装置は、局所排気装置等の設備に加えて補助的な設備として設置するものであること。
第2 プッシュプル型換気装置に係る法令上の取扱い等
プッシュプル型換気装置のうち、前記第1の①のプッシュプル型換気装置(開放槽用)及び③のプッ
シュプル型しゃ断装置は、有機溶剤中毒予防規則(昭和47年労働省令第36号。以下「有機則」という。)、
粉じん障害防止規則(昭和54年労働省令第18号。以下「粉じん則」という。)、鉛中毒予防規則(昭和
47年労働省令第37号。以下「鉛則」という。)及び特定化学物質等障害予防規則(昭和47年労働省令第
39号。以下「特化則」という。)で規定するプッシュプル型換気装置としては認められないものであ
ること。なお、プッシュプル型換気装置に係る法令上の取扱い等の詳細については、以下のとおりで
あること。
1 有機則関係
(1) 有機則第12条第2号の「逆流擬縮機等」の「等」には、前記第1のTの要件を具備したプッシュ
プル型局所換気装置(開放槽用)が含まれるものであること。
(2) 有機則第13条に係る局所排気装置等の特例許可の基準及び処理要領を示した昭和53年12月25日
付け基発第707号の記の第2の8の(2)のイ及びロを次のとおり改める。
イ 許可の条件
自動車の車体、航空機の機体、船体ブロック又はこれらと同等以上の容積及び面積を有する
物の外面について塗装等の有機溶剤業務を行う場合で次のいずれかに該当すること。
(イ) 削除
(ロ) 全体換気装置(有機溶剤中毒予防規則第16条の2の労働大臣が定める構造及び性能を具
備しないプッシュプル型一様流換気装置(塗装用)であって有機則第17条第1項の換気量
を有するものを含む。)を設置し、かつ、当該業務に従事する労働者に送気マスク又は有
機ガス用防毒マスクを使用させること等適切な代替措置が講じられていると認められると
き。
ロ 許可の処理要領
(イ) 本条第1項に係る申請書が提出された場合は、申請書に記載された内容の書面審査及び
実地調査の上、許可の可否を決定すること。
ただし、許可の有効期間を満了した後、前回とほぼ同一内容の再申請のあった場合にお
いて必ずしも実地調査を要するものではないこと。
(ロ) 申請書は2部提出させ、許可又は不許可の旨を表示して、1部を申請者に返還保存させる
とともに、1部は所轄労働基準監督署において保管すること。
(ハ) 許可の期間は2年を限度とすること。
2 特化則関係
特化則第5条第2項の「管理第2類物質を湿潤な状態にする等」の「等」には、前記第1のTの要件を
具備したプッシュプル型局所換気装置(開放槽用)を管理第2類物質又は特定第2類物質の液体が入っ
ている開放槽の開口部に設置することが含まれるものであること。
3 指導上の留意点
(1) プッシュプル型局所換気装置(開放槽用)等(前記第1の①、②及び③のプッシュプル型換気装
置をいう。以下同じ。)の設計・施工には高度な知識と技術を要するので、本装置を設置しよう
とする事業者及び設計・施工業者に対して、十分な能力を有する者に設計及び施工を行わせるよ
う指導すること。
(2) プッシュプル型局所換気装置(開放槽用)等は、有害物質の飛散・拡散面が広くて局所排気装
置の設置が困難な場合等に設置するよう指導すること。
(3) 吹出し、吸込み気流を著しく乱すおそれがある作業場所には本装置を設置しないよう指導する
こと。
(4) 有機溶剤中毒予防規則第16条の2の労働大臣が定める構造及び性能を有するプッシュプル型換気
装置(塗装用)を設置する事業者に対しては、当該作業に従事する労働者以外の者が有害なガス、
蒸気又は粉じんにばく露されるおそれのある箇所に立入って作業を行わないよう指導すること。
(5) プッシュプル型局所換気装置(開放槽用)等(労働安全衛生法施行令(昭和47年政令第318号)第
15条第1項第8号に規定するプッシュプル型換気装置を除く。)を設置している事業者に対しては、
有機則第20条の2、第21条及び第22条、鉛則第35条、第36条及び第37条、特化則第30条、第32条、
第33条及び第34条の2並びに粉じん則第17条、第18条、第19条及び第20条に準じて当該装置の自
主検査、点検及びそれらの記録を行うよう指導すること。
〔解説〕 プッシュプル型換気装置の分類
プッシュプル型換気装置は、労働安全衛生法施行令(昭和47年政令第318号)第15条第8号の労働
省令で定めるものの他に、プッシュプル型換気装置(開放櫓用)(前記第1のT)及びプッシュプル
型しゃ断装置(前記第1のV)に分類される。