安全衛生情報センター
潜水の業務は、適切な作業方法や必要な対策がとられていないと、窒息や減圧症などの高気圧障害注1) になるおそれがあることから、事業者は、潜水業務を行わせるときは、素潜りなどを除き、潜水士免許 をもつ一定の知識がある者にさせなければなりません。 平成30年の高気圧作業安全衛生規則注2)の改正により、日本語を解しないため潜水士免許試験による 免許の取得が困難な外国人等は、厚生労働大臣が定める者注3)に該当すれば潜水士免許を受けられるよ うになりました。 外国において取得した潜水業務に関する資格や、事業場における安全衛生管理体制の確保の状況によ り、潜水士免許が受けられるかどうかが異なるため、免許申請手続を準備する事業場の関係者に向け、 マニュアルを作成しました。
以下のすべての項目に該当する方が対象になります。 ● 日本語を解しないため、日本の潜水士免許試験による免許の取得が困難な人(以下「外国人等」と 言います。) ● 外国において、潜水業務に関する資格を取得している人。日本の潜水士免許と同等以上で、今も有 効であることを示す必要があります ● 日本語による意思疎通が難しいことを前提に、潜水業務の安全及び衛生上支障がない業務体制が整 備されている事業場において、潜水業務を行う人
潜水士免許試験によらず潜水士免許を受けるための要件は、表1のとおりです。対象外国人等を雇用す る又は雇用しようとする事業者は、対象外国人等が外国において取得した資格のほか、事業者において 実施すべき関係法令に関する教育や、事業者が作成する業務計画書などのそれぞれについて、早い段階 で所轄の都道府県労働局に相談し、要件の詳細、手続方法等についてあらかじめ確認するようにしてく ださい。
潜水士免許試験の試験科目及び範囲 | 確認方法 | |
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試験科目 | 範囲 | |
潜水業務 | 潜水業務に関する基礎知識 潜水業務の危険性及び事故発生時の措置 |
申請者が保有する外国資格を取得するために必要な学科が左記の試験科目及び範囲を包含しているかどうかを確認 |
送気、潜降及び浮上 | 潜水業務に必要な送気の方法 潜降及び浮上の方法 潜水器に関する知識 潜水器の扱い方 潜水器の点検及び修理の仕方 |
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高気圧障害 | 高気圧障害の病理 高気圧障害の種類とその症状 高気圧障害の予防方法 救急処置 再圧室に関する基礎知識 |
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関係法令 | 労働安全衛生法、労働安全衛生法施行令及び労働安全衛生規則中の関係条項 高気圧作業安全衛生規則 |
外国資格を取得する時点で習得することが想定されないため、申請者を雇用する又は雇用しようとする事業者が教育を行ったことをもって申請者が必要な知識を有するものと判断 |
3−1 外国において取得した資格の要件
外国において取得した資格には、HSE/Closed Bell、HSE/SCUBA、ADAS/Closed Bellなどがありま
す。必ずしも政府機関が発行したものである必要はありませんが、資格を取得する過程で、日本の潜水
士免許試験の試験科目のうち表2に示す「潜水業務」、「送気、潜降及び浮上」、「高気圧障害」のす
べての内容を習得している必要があります。これらのうち一部しか習得していない場合は、その資格は
要件を満たすものとして認められません。また、国際的に通用する資格であっても、日本国内で講習等
を行い取得したものは対象となりません。
科目 | 範囲 | |
---|---|---|
1-1 | 潜水業務 | 潜水業務に関する基礎知識 |
1-2 | 潜水業務の危険性及び事故発生時の措置 | |
2-1 | 送気、潜降及び浮上 | 潜水業務に必要な送気の方法 |
2-2 | 潜降及び浮上の方法 | |
2-3 | 潜水器に関する知識 | |
2-4 | 潜水器の扱い方 | |
2-5 | 潜水器の点検及び修理の仕方 | |
3-1 | 高気圧障害 | 高気圧障害の病理 |
3-2 | 高気圧障害の種類とその症状 | |
3-3 | 高気圧障害の予防方法 | |
3-4 | 救急処置 | |
3-5 | 再圧室に関する基礎知識 |
外国において取得した資格は、その取得時期や取得方法などにより習得事項が異なるため、申請者が提 出した書類等に基づき、都道府県労働局において個別の審査が行われます。同じ時期に同じ方法で取得し た同一の資格については、概ね審査結果が一致することが想定されますが、資格により、試験範囲や講習 内容が随時見直されることがあるので留意ください。 外国で取得した資格については、資格証の写しから文字が読み取れないことがあるため、資格証に記載 されている文字をすべて写しの欄外に打ち直し、正確な日本語訳を付してください。資格証に記載されて いる言語によっては、在日大使館等による翻訳証明の提出を求めることがあります。 外国で取得した資格が真正であることと、現時点で有効であることを確認するため、資格証の写しに加 えて、資格の有効性を外国の発行者に照会した結果を示す必要があります。照会結果は、必ずしも署名入 りである必要はなく、発行機関からのEmailによる回答でも構いませんが、都道府県労働局において確認 が取れるよう、照会先を明記してください。照会結果は、申請日前3か月以内に回答されたものである必 要があります。 ダイビング指導員に関する国際資格については、すべての課程を外国において修了して取得したものに ついては、外国において取得した資格として取り扱います。 令和元年12月現在、既に都道府県労働局の 審査を経たもの等、要件を満たすとされた外国資格の例は、表3のとおりです。
資格名 | 取得時期 | 発行機関/発行国 |
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ADAS/Closed Bell | 2008 | ADAS/オーストラリア |
PADI DIVEMASTER | 2019 | PADI Worldwide/米国 |
DCBC/Closed Bell | 2005 2008 |
DCBC/カナダ |
HSE/Closed Bell | 2004 2011 2013 2017 |
HSE/英国 |
HSE/Surface Supply | 2002 2011 |
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HSE/SCUBA | 2019 | |
INPP/Classe 3 | 2004 | INPP/フランス |
3−2 関係法令に係る教育 外国において資格を取得する過程には、日本の関係法令に関する科目が含まれていないため、事業者 は、対象外国人等に対し、日本の関係法令に関する教育を行ってください。 教育を行うべき関係法令は、表4に示す高気圧業務特別教育規程注4)第6条の表中の関係法令、すな わち①労働基準法、労働安全衛生法、労働安全衛生法施行令及 び労働安全衛生規則中の関係条項(使用 者の責務、安全衛生管理体制、有害業務、就業制限、健康診断等)及び②高気圧作業安全衛生規則の関 係条項(潜水業務関係すべて)です。教育は、申請者が理解できる言語により、①を20分、②を40分程度 以上、合計で1時間以上行い、終了後簡単なテスト(効果測定)を行って理解度を確認してください。 必要に応じて通訳を配置する場合は、通訳に要する時間を別途見込む必要があります。 講師には、潜水士免許を有する者など関係法令に十分な知識を有する者を充てるとともに、事業者、 衛生管理者など事業場の責任者の立会いの下に実施してください。
科目 | 範囲 | |
---|---|---|
① | 関係法令 | 働基準法、労働安全衛生法、労働安全衛生法施行令 及び労働安全衛生規則中の関係条項 |
② | 高気圧作業安全衛生規則中の関係条項 |
3−3 業務計画書
申請者が、「潜水業務の安全及び衛生上支障がないと認められる場合」に該当するためには、対象外
国人等が事業場において行う予定の業務について、日本語による意思疎通が難しいことを前提に、潜水
業務の安全及び衛生上支障がないよう業務実施体制が準備されている必要があります。
具体的には、対象外国人等を雇用する又は雇用しようとする事業者において業務計画書を作成し、申
請書に添付してください。事業者は、この申請により潜水士免許を取得した者を業務に就かせるときは、
業務計画書に従って業務を行わせる必要があります。
業務計画書には、事業者名、作成日、事業の種類、事業の期間、潜水業務等の概要、使用する言語の
ほか、事業場の安全衛生管理体制や、安全衛生の取組状況などが記載されている必要があります。
都道府県労働局において、作業者間の意思疎通を図るための手段、労働災害が発生した場合等の緊急
時の体制等について、審査を行います。対象外国人等が通常使用する言語で意思疎通をしたり、緊急時
の連絡を行ったりする際に支障があると考えられる場合は、潜水士免許は付与されません。
3-1から3-3までを中心に、別表に示す書類を整えてください。 個々の書類の作り方や記載例については、厚生労働省ホームページから、「外国人等に対する潜水士 免許の付与」の項目を参照ください。
この申請により付与される潜水士免許は、潜水士免許試験の合格者に付与される潜水士免許と異なり、 有効期間が定められた免許となります。 特定の事業場及び業務を前提として審査を行ったうえで付与される免許であるため、業務の大幅な変 更を行ったときは、対象外国人等にそのまま潜水業務を行わせることはできません。 潜水士免許の申請に当たり、所持する外国資格を偽り、架空の業務計画書を作成する等、不正の行為 により潜水士免許を受けたときは、取消し等の対象となる場合があります(労働安全衛生規則第66条)。 潜水士免許は、ダイビングの能力や他の人を指導する能力を証明するものではありません。
この申請により潜水士免許を付与された対象外国人等が事業場を退職するときなどは、所轄の都道府 県労働局に、免許の返納を申し出て免許の取消しを受けるよう対象外国人等に伝えてください。事業場 が変わった場合、そのまま潜水業務を行うことはできません。 別の事業で潜水業務を行おうとするときや、有効期間を更新して新たに潜水業務を行おうとするとき は、対象外国人等は、あらためて潜水士免許の申請をする必要があります。その場合、3-1については 外国資格が現在有効であることの確認、3-2については、関係法令のうち改正された部分についてのみ の教育に限るなど、一部簡素化されることがあります。
この申請は、潜水業務を行うことを前提としたものでなければならないため、原則として、地方出入 国在留管理局が発行する在留カードにより、短期滞在以外の就業が可能な在留資格であることを都道府 県労働局において確認しています。ただし、申請者を雇用する予定であるが手続中であるなどの場合は、 在留資格が短期滞在であっても受け付けることがありますので、所轄の都道府県労働局に相談ください。 なお、出入国在留管理庁のWebサイトで、在留カードの有効性を確認することができます注5)。
この申請は、申請者の住所を管轄する都道府県労働局注6)の健康主務課(健康課又は健康安全課)あ てに行います。事業場からの事前相談も健康主務課あてにお願いします。申請者の住所が決まらない段 階では、事業場の所在地を管轄する都道府県労働局への相談も可能ですが、申請先の都道府県労働局は、 申請者の住所によることとなります。 注1) 潜水業務など高気圧下での労働災害の例 ダムの点検中での溺死: https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/SAI_DET.aspx?joho_no=101214 橋脚建設工事での減圧症: https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/SAI_DET.aspx?joho_no=100899 注2) 高気圧作業安全衛生規則(昭和47年労働省令第40号) https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=347 M50002000040 注3) 厚生労働大臣が定める者: 高圧室内作業主任者及び潜水士免許規程(昭和47年労働省告示第130号)第2条 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=74111000&dataType=0&pageNo=1 注4) 高気圧業務特別教育規程(昭和47年労働省告示第129号) https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=74100000&dataType=0&pageNo=1 注5) 出入国在留管理庁 在留カード等番号失効情報照会 https://lapse-immi.moj.go.jp/ZEC/appl/e0/ZEC2/pages/FZECST011.aspx 注6) 都道府県労働局所在地一覧 https://www.mhlw.go.jp/kouseiroudoushou/shozaiannai/roudoukyoku/ 注7) 労働安全衛生規則様式第12号 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000187045.html