安全衛生情報センター
労働災害の防止については、平素より御理解、御協力をいただき厚く御礼申し上げます。 さて、クレーン等安全規則の適用があるエレベーター及び簡易リフト(以下「エレベーター等」という。) は、人及び荷(人又は荷のみの場合を含む。ただし、簡易リフトにあっては、荷のみ。)をガイドレールに 沿って昇降する搬器にのせて、動力を用いて運搬することを目的とする機械装置ですが、そのうち一定の 条件(①エレベーター等と同様の構造を有する部分の前後に荷の送り込み装置及び荷受け装置が設けられ、 これらで一連の運搬システムを形成しており、全体として一体の設備となっていること。②搬器に人が乗 ることが構造的に極めて困難であること。③運転は搬器以外の場所に設けられた操作盤を操作することに よって行うものであること。)に合致する垂直搬送機については、昭和51年4月5日付け基収第2183号によ りクレーン等安全規則のエレベーター等としての適用がないものとして取り扱っています。 しかしながら、別添のとおり、垂直搬送機の異常処理作業(通常の運転中に発生する異常、故障等の処 理の作業をいう。以下同じ。)、保全等作業(不定期な又は定期的ではあるが頻度の低い保全の作業並びに 設備立ち上げ時等における調整及び試運転の作業をいう。以下同じ。)、組立・解体作業等の非定常作業 (日常的に反復・継続して行われることが少ない作業をいう。以下同じ。)時に搬器に挟まれることや、カ ウンターウェイトに激突されることによる死亡災害が多発しており、今後における垂直搬送機による労働 災害の防止の徹底を図る必要があります。 つきましては、下記の労働災害防止対策について、貴会の会員事業場に対して周知していただき、同種災 害の防止を図っていただきますようお願いします。
1 垂直搬送機の製造等を行う者<メーカー>において実施すべき事項 (1) 設計・製造段階における非定常作業に関する危険性等の調査等の適切な実施 「機械の包括的な安全基準に関する指針」(平成19年7月31日付け基発第0731001号)に基づき、機械 の設計、製造、改造等(以下「製造等」という。)を行う者は設計・製造段階における危険性又は有害 性等の調査及びその結果に基づく保護方策を実施することにより、リスクの低減を図ること。 特に、垂直搬送機の異常処理作業、保全等作業、組立・解体作業等の非定常作業時には、通常作業 時には想定されないような、危険な箇所への作業者の接近や搬器の操作が行われ、死亡災害が発生し ていることを踏まえ、通常作業時だけでなく非定常作業時においても搬器やカウンターウェイトの可 動範囲内への進入をせずに作業を行えるようにするため、また、可動範囲内への進入を行わざるを得 ない場合には労働安全衛生規則(以下「安衛則」という。)第107条(掃除等の場合の運転停止)の規定を 遵守できるようにするために、次の安全防護を実施すること。 ア 搬器やカウンターウェイトの可動範囲内に身体が入らないよう覆い、囲い、安全 柵等を設けるこ と。 イ 搬器やカウンターウェイトの可動範囲内に作業者が接近した場合に垂直搬送機の運転を停止する 構造とすること(例えば、搬器の可動範囲に作業者が接近したことを検知し、検知後直ちに垂直搬送 機の作動を停止させ、かつ、再起動の操作をしなければ垂直搬送機が作動しない機能を有する光線 式安全装置、超音波センサー等を利用した安全装置等を備えること。)。 ウ 垂直搬送機の起動装置は施錠できる構造とすること。 (2) 非定常作業に関する取扱説明書の整備 非定常作業時に死亡災害が発生していることを踏まえ、取扱説明書には異常処理作業、保全等作業、 組立・解体作業等の非定常作業に関する作業標準を記載すること。また、非定常作業に関する取扱説 明書には、従事する作業者に対してあらかじめ安全教育を行うことを記載するほか、異常処理作業及 び保全等作業を行う場合においては、垂直搬送機の電源を遮断し、起動装置を施錠し、当該起動装置 に作業中である旨を表示すること、複数の作業者が作業を行う場合における合図の方法及び安全の確 認方法を決めること等の注意事項を記載すること。 なお、上記(1)に基づき保護方策を実施した後に残る残留リスク情報及びその他の必要な情報は、安 衛則第24条の13及び「機械等譲渡者等が行う機械に関する危険性等の通知の促進に関する指針」(平成 24年厚生労働省告示第132号。以下「危険性等通知指針」という。)に基づいて、残留リスクマップ及 び残留リスク一覧として、取扱説明書の冒頭等認識しやすい箇所に記載すること。 (3) 自ら非定常作業を行う場合において実施すべき事項 製造した垂直搬送機の組立・解体作業を行う場合や保全等作業を請け負う場合などメーカーが自ら 非定常作業を行う場合には、次の事項を実施すること。 ア 非定常作業に関する作業手順書の整備 非定常作業が行われる現場の状況や条件等に応じて、危険性又は有害性等の調査を実施し、その 結果に基づく保護方策を実施することにより、リスクの低減を図ること。その結果を踏まえ、作業 者に残留リスク情報を伝えるための作業手順書を整備すること。その際には、通常作業時だけでな く非定常作業時においても搬器やカウンターウェイトの可動範囲内への進入をせずに作業を行う作 業手順とし、異常処理作業及び保全等作業時に可動範囲内への進入を行わざるを得ない場合には、 垂直搬送機の電源を遮断し、起動装置を施錠し、当該起動装置に作業中である旨を表示するなど安 衛則第107条(掃除等の場合の運転停止)の規定を遵守した作業手順とすること。また、従事する作業 者に対してあらかじめ安全教育を行うことを記載するほか、複数の作業者が作業を行う場合におけ る合図の方法及び合図の確認方法等の注意事項を記載すること。 イ 安全教育の実施 上記アで整備した作業手順書を用いた安全教育の実施により、作業者に作業手順書に基づく作業 の徹底を図ること。 ウ 作業を他者に請け負わせる場合の留意事項 上記アで整備した作業手順書を提供し、これに沿った作業を発注すること。 2 垂直搬送機を労働者に使用させる事業者<ユーザー>において実施すべき事項 (1) 使用段階における非定常作業に関する危険性等の調査等の適切な実施 労働安全衛生法第28条の2に基づき、機械の製造等を行う者から提供された残留リスク情報等を踏ま えて、使用段階における危険性又は有害性等の調査を実施し、その結果に基づく保護方策を実施する ことにより、リスクの低減を図ること。 特に、垂直搬送機の異常処理作業、保全等作業の非定常作業時には、通常作業時には想定されない ような、危険な箇所への作業者の接近や搬器の操作が行われ、死亡災害が発生していることを踏まえ、 垂直搬送機に次の安全防護が実施されているか確認し、実施されていない場合には実施すること。 ア 搬器やカウンターウェイトの可動範囲内に身体が入らないよう覆い、囲い、安全 柵等が設けられ ていること。 イ 搬器やカウンターウェイトの可動範囲内に作業者が接近した場合に垂直搬送機の運転を停止する 構造であること(例えば、搬器の可動範囲に作業者が接近したことを検知し、検知後直ちに搬器の作 動を停止させ、かつ、再起動の操作をしなければ搬器が作動しない機能を有する光線式安全装置、 超音波センサー等を利用した安全装置等を備えていること。)。 ウ 起動装置は施錠できる構造であること。 なお、機械の製造等を行う者から必要な情報が提供されていない場合には、「危険性等通知指針」 に基づいて情報を提供するように垂直搬送機の製造等を行う者に対し求めること。 (2) 非定常作業に関する作業手順書の整備及び安全教育の実施等 ア 非定常作業に関する作業手順書の整備 上記(1)の危険性等の調査等の実施結果を踏まえ、作業者に残留リスク情報を伝えるために、異常 処理作業、保全等作業の非定常作業時用の作業手順書を整備すること。その際には、メーカーから 提供された非定常作業に関する作業標準及び注意事項を参考の上、通常作業時だけでなく非定常作 業時においても搬器やカウンターウェイトの可動範囲内への進入をせずに作業を行う作業手順とし、 可動範囲内への進入を行わざるを得ない場合には、垂直搬送機の電源を遮断し、起動装置を施錠し、 当該起動装置に作業中である旨を表示するなど安衛則第107条(掃除等の場合の運転停止)の規定を遵 守した作業手順とすること。また、従事する作業者に対してあらかじめ安全教育を行うことを記載 するほか、複数の作業者が作業を行う場合における合図の方法及び安全の確認方法等の注意事項を 記載すること。 イ 安全教育の実施 上記アで整備した作業手順書を用いた安全教育の実施により、作業者に作業手順書に基づく作業 の徹底を図ること。 ウ 作業を他者に請け負わせる場合の留意事項 上記アで整備した作業手順書を提供し、これに沿った作業を発注すること。 エ 垂直搬送機の製造等を注文する場合の留意事項 非定常作業に関する作業標準及び注意事項を取扱説明書に記載して提供することを注文時の条件 に含めること。 3 非定常作業を請け負う者<メンテナンス業者等>において実施すべき事項 (1) 非定常作業に関する危険性等の調査等の適切な実施 非定常作業が行われる現場の状況や条件等に応じて、危険性又は有害性等の調査を実施し、その結 果に基づく保護方策を実施することにより、リスクの低減を図ること。 特に、垂直搬送機の異常処理作業、保全等作業、組立・解体作業等の非定常作業時には、通常作業 時には想定されないような、危険な箇所への作業者の接近や搬器の操作が行われ、死亡災害が発生し ていることを踏まえ、垂直搬送機に次の安全防護が実施されているか確認し、実施されていない場合 には発注者に対して実施を求めること。 ア 搬器やカウンターウェイトの可動範囲内に身体が入らないよう覆い、囲い、安全柵等が設けられ ていること。 イ 搬器やカウンターウェイトの可動範囲内に作業者が接近した場合に垂直搬送機の運転を停止する 構造であること(例えば、搬器の可動範囲に作業者が接近したことを検知し、検知後直ちに搬器の作 動を停止させ、かつ、再起動の操作をしなければ搬器が作動しない機能を有する光線式安全装置、 超音波センサー等を利用した安全装置等を備えること。)。 ウ 起動装置は施錠できる構造であること。 (2) 非定常作業に関する作業手順書の整備及び安全教育の実施等 ア 非定常作業に関する作業手順書の整備 上記(1)の危険性等の調査等の実施結果を踏まえ、作業者に残留リスク情報を伝えるための作業手 順書を整備すること。その際には、発注者から提供された非定常作業に関する作業手順書を参考の 上、搬器やカウンターウェイトの可動範囲内への進入をせずに作業を行う作業手順とし、異常処理 作業及び保全等作業時に可動範囲内への進入を行わざるを得ない場合には、垂直搬送機の電源を遮 断し、起動装置を施錠し、当該起動装置に作業中である旨を表示するなど安衛則第107条(掃除等の 場合の運転停止)の規定を遵守した作業手順とすること。また、従事する作業者に対してあらかじめ 安全教育を行うことを記載するほか、複数の作業者が作業を行う場合における合図の方法及び安全 の確認方法等の注意事項を記載すること。 イ 安全教育の実施 上記アで整備した作業手順書を用いた安全教育の実施により、作業者に作業手順書に基づく作業の 徹底を図ること。 ウ 作業を請け負う場合の留意事項 発注者が整備した作業手順書を提供することを求めること。 (別記団体) エレベーター保守事業協同組合 建設業労働災害防止協会 JEMAエレベータメンテナンス事業協同組合 全国クリーニング生活衛生同業組合連合会 中央労働災害防止協会 一般社団法人日本エレベーター協会 一般社団法人日本クレーン協会 一般社団法人日本建設業連合会 一般社団法人日本産業機械工業会 一般社団法人日本倉庫協会 一般社団法人日本物流システム機器協会 一般社団法人日本物流団体連合会 公益社団法人ボイラ・クレーン安全協会 日本マテリアルハンドリング協会 公益社団法人日本ロジスティクシステム協会