安全衛生情報センター
労働安全衛生規則等の一部を改正する省令(令和4年厚生労働省令第91号)により改正され、令和6年4月1 日から施行される労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号。以下「安衛則」という。)第594条の2第1 項に規定する皮膚等障害化学物質等については、「労働安全衛生規則等の一部を改正する省令等の施行に ついて」(令和4年5月31日付け基発0531第9号。以下「施行通達」という。)の記の第4の8(2)において、 「別途示すものが含まれること」とされているところであるが、今般、「別途示すもの」について下記の とおり示すので、関係者への周知徹底を図るとともに、その運用に遺漏なきを期されたい。
1 趣旨 本通達は、安衛則第594条の2第1項が適用される皮膚等障害化学物質等のうち、皮膚から吸収され、 若しくは皮膚に侵入して、健康障害を生ずるおそれがあることが明らかな化学物質に該当する物を示す とともに、皮膚等障害化学物質等についての留意事項を示す趣旨であること。 本通達は、現時点での知見に基づくものであり、国が行う化学品の分類(日本産業規格Z7252(GHSに基 づく化学品の分類方法)に定める方法による化学物質の危険性及び有害性の分類をいう。)の結果(以下 「国が公表するGHS分類の結果」という。)の見直しや新たな知見が示された場合は、必要に応じ、見直 されることがあること。 2 用語の定義 (1) 皮膚刺激性有害物質 皮膚等障害化学物質等のうち、皮膚刺激性有害物質は、皮膚又は眼に障害を与えるおそれがあるこ とが明らかな化学物質をいうこと。具体的には、施行通達記の第4の8(2)の「国が公表するGHS分類の 結果及び譲渡提供者より提供されたSDS等に記載された有害性情報のうち「皮膚腐食性・刺激性」、 「眼に対する重篤な損傷性・眼刺激性」及び「呼吸器感作性又は皮膚感作性」のいずれかで区分1に 分類されているもの」に該当する化学物質をいうこと。ただし、特定化学物質障害予防規則(昭和47 年労働省令第39号。以下「特化則」という。)等の特別規則において、皮膚又は眼の障害を防止する ために不浸透性の保護衣等の使用が義務付けられているものを除く。 (2) 皮膚吸収性有害物質 皮膚等障害化学物質等のうち、皮膚吸収性有害物質は、皮膚から吸収され、若しくは皮膚に侵入し て、健康障害を生ずるおそれがあることが明らかな化学物質をいうこと。ただし、特化則等の特別規 則において、皮膚又は眼の障害等を防止するために不浸透性の保護衣等の使用が義務付けられている ものを除く。 3 皮膚吸収性有害物質に該当する物 皮膚吸収性有害物質には、次の(1)から(3)までのいずれかに該当する化学物質が含まれること。 (1) 国が公表するGHS分類の結果、危険性又は有害性があるものと区分された化学物質のうち、濃度基 準値(安衛則第577条の2第2項の厚生労働大臣が定める濃度の基準をいう。)又は米国産業衛生専門家 会議(ACGIH)等が公表する職業ばく露限界値(以下「濃度基準値等」という。)が設定されているもの であって、次のアからウまでのいずれかに該当するもの ア ヒトにおいて、経皮ばく露が関与する健康障害を示す情報(疫学研究、症例報告、被験者実験等) があること イ 動物において、経皮ばく露による毒性影響を示す情報があること ウ 動物において、経皮ばく露による体内動態情報があり、併せて職業ばく露限界値を用いたモデル 計算等により経皮ばく露による毒性影響を示す情報があること (2) 国が公表するGHS分類の結果、経皮ばく露によりヒトまたは動物に発がん性(特に皮膚発がん)を示 すことが知られている物質 (3) 国が公表するGHS分類の結果がある化学物質のうち、濃度基準値等が設定されていないものであっ て、経皮ばく露による動物急性毒性試験により急性毒性(経皮)が区分1に分類されている物質 4 皮膚等障害化学物質を含有する製剤の裾切値について (1) 次のア及びイに掲げる皮膚等障害化学物質の区分に応じ、その含有量がそれぞれ次のア及びイに掲 げる含有量の値(ア及びイの両方に該当する物質にあっては、ア又はイに係る値のうち最も低いもの、 イに該当する物質であって、二以上の有害性区分に該当するものにあっては、その該当する有害性区 分に係る値のうち最も低いもの)未満であるものについては、皮膚等障害化学物質等には該当しない ものとして取り扱うこと。なお、パーセントは重量パーセントであること。 ア 皮膚刺激性有害物質 1パーセント イ 皮膚吸収性有害物質 1パーセント(国が公表するGHS分類の結果、生殖細胞変異原性区分1又は発 がん性区分1に区分されているものは0.1パーセント、生殖毒性区分1に区分されているものは0.3パ ーセント) (2) (1)に定める値は、労働安全衛生法施行令第18条第3号及び第18条の2第3号の規定に基づき厚生労 働大臣の定める基準(令和5年厚生労働省告示第304号)の別表第3における容器等への名称等の表示に 係る裾切値の考え方を用い、皮膚刺激性有害物質については、「皮膚腐食性・刺激性」、「眼に対す る重篤な損傷性・眼刺激性」及び「呼吸器感作性又は皮膚感作性」(呼吸器感作性については気体を 除く。)の裾切値、皮膚吸収性有害物質については、その他の関係する有害性区分の裾切値を踏まえ て設定したものであること。 5 該当物質の一覧 (1) 3の皮膚吸収性有害物質に該当する物は、別添に掲げるとおりであること。 (2) 次に掲げる物質の一覧を厚生労働省ホームページで公表する予定であること。 ア 3の皮膚吸収性有害物質 イ 皮膚刺激性有害物質(国が公表するGHS分類の結果があるものに限る) ウ 特化則等の特別規則において不浸透性の保護衣等の使用が義務付けられている物質別添(PDF:26KB)