安全衛生情報センター
安全衛生特別教育規程等の一部を改正する告示(平成25年厚生労働省告示第141号)が本日公示され、本 年7月1日から適用することとされたところである。その改正の趣旨、内容等については、下記のとおりで あるので、関係者への周知を図るとともに、その運用に遺漏なきを期されたい。
第1 改正の趣旨 労働安全衛生法(昭和47年法律第57号。以下「法」という。)の規定により、労働安全衛生法施行令 (昭和47年政令第318号。以下「令」という。)別表第7第6号に規定される建設機械で、動力を用い、か つ、不特定の場所に自走できるもの(以下「車両系解体用機械」という。)については、厚生労働大臣が 定める規格に適合したものでなければ譲渡等が禁止されるとともに、その運転の業務に従事する労働者 は、一定の技能講習を修了した者又は特別教育を受けた者に限定されている。 今般、労働安全衛生規則の一部を改正する省令(平成25年厚生労働省令第58号)による労働安全衛生規 則(昭和47年労働省令第32号)の一部改正により、令別表第7第6号2の解体用機械として、鉄骨切断機、 コンクリート圧砕機及び解体用つかみ機が規定されることに伴い、これらの機械で、動力を用い、かつ、 不特定の場所に自走できるもの(以下単に「鉄骨切断機等」という。)が適合しなければならない規格や、 その運転の業務に従事する労働者に対する技能講習、特別教育の内容を規定したものである。 第2 細部事項 1 安全衛生特別教育規程(昭和47年労働省告示第92号) (1) 労働者に対する特別の教育が必要な業務に、機体重量が3トン未満の鉄骨切断機等の運転業務が 追加されたことに伴い、動力を用い、かつ、不特定の場所に自走できるブレーカ(以下単に「ブレ ーカ」という。)の運転の業務に従事する労働者に対する特別教育の内容を拡充し、鉄骨切断機等 を含めた合計4機種の車両系解体用機械を対象とするものに改めたこと。 (第11条の3関係) (2) 具体的には、次のとおり改めたこと。 ア 学科教育の「小型車両系建設機械(解体用)の作業に関する装置の構造、取扱い及び作業方法に 関する知識」の教育時間を0.5時間増加させて2.5時間としたこと。 イ 学科教育の「小型車両系建設機械(解体用)の運転に必要な一般的事項に関する知識」の教育時 間を0.5時間増加させて1.5時間としたこと。 なお、この科目の範囲として規定されていた「土木施工の方法」について、用語の整理により、 「建設施工の方法」に改めたこと。 ウ 実技教育の「小型車両系建設機械(解体用)の作業のための装置の操作」の教育時間を1時間増 加させて3時間としたこと。 (3) 平成25年7月1日前に、ブレーカの運転の業務に従事する労働者に対する特別教育を受けた者につ いては、引き続き、機体重量3トン未満のブレーカの運転の業務に従事させることができること。 (4) 平成25年7月1日前に、ブレーカの運転の業務に従事する労働者に対する特別教育を受けた者につ いては、機体重量3トン未満の鉄骨切断機等の運転の業務に従事させる場合には、(2)のとおり拡充 された内容についての教育が必要であること。 2 労働安全衛生規則別表第3下欄の規定に基づき厚生労働大臣が定める者(昭和47年労働省令第113号) の一部改正関係 (1) 労働安全衛生規則別表第3の「令第20条第12号の業務のうち令別表第7第6号2に掲げる建設機械の 運転の業務」の項第2号の厚生労働大臣が定める者として、次の者を定めたこと。なお、同項第1号 には、平成25年7月1日以後に開始される車両系建設機械(解体用)運転技能講習を修了した者が規定 されていること。 ア 職業能力開発促進法(昭和44年法律第64号。以下「能開法」という。)に規定する普通職業訓練 のうち、職業能力開発促進法施行規則(昭和44年労働省令第24号。以下「能開法規則」という。) 別表第2の訓練科の欄に定める機械整備系建設機械整備科又は揚重運搬機械運転系建設機械運転科 の訓練(通信の方法によって行われるものを除く。)で、厚生労働省労働基準局長が指定するもの を修了した者 イ 能開法に規定する普通職業訓練のうち、能開法規則別表第4の訓練科の欄に掲げる建設機械整 備科の訓練(通信の方法によって行われるものを除く。)で、厚生労働省労働基準局長が指定する ものを修了した者 ウ 平成4年改正前の能開法に規定する準則訓練のうち、平成5年改正前の能開法規則別表第3の訓 練科の欄に掲げる建設機械整備科又は建設機械運転科の訓練で、厚生労働省労働基準局長が指定 するものを修了した者 エ 平成4年改正前の能開法に規定する能力再開発訓練のうち、平成5年改正前の能開法規則別表第 7の訓練科の欄に掲げる建設機械整備科又は建設機械運転科の訓練で、厚生労働省労働基準局長が 指定するものを修了した者 (2) ア〜エの訓練を実施する者で、厚生労働省労働基準局長の指定を受けようとするものは、当該訓 練が、車両系建設機械(解体用)運転技能講習と同等以上の知識及び技能を付与するものであること を証する書面を添えて、厚生労働省労働基準局長あて申請する必要があること。 3 車両系建設機械構造規格(昭和47年労働省告示第150号)の一部改正関係 (1) 安定度(第4条関係) ア 鉄骨切断機等について、ブレーカと同様の後方安定度の要件を規定したこと。 イ 解体用つかみ機(特定解体用機械に該当するものを除く。)は、予測以上の荷重がかかることに よる転倒の危険があるため、ブーム及びアームが向けられている側の転倒支点における安定モー メントの値がその転倒支点における転倒モーメント値の1.33倍以上となる前方安定度を有しなけ ればならないとしたこと。 ウ ブーム及びアームの長さの合計が12メートル以上である解体用機械(以下「特定解体用機械」 という。)は、重心が高く、特に転倒しやすい構造であるため、ブーム及びアームが向けられて いる側の転倒支点における安定モーメントの値がその転倒支点における転倒モーメントの値の1.5 倍以上となる前方安定度を有しなければならないとしたこと。 エ 第4項及び第5項の「転倒支点」は、ブーム及びアームが向けられている側の全ての転倒支点を いうこと。 オ 第4項の前方安定度は、日本工業規格(以下「JIS」という。)A8340-4の4.6.4.2で引用される 国際規格 ISO10567-2007により求めること。 カ 第5項の前方安定度は、JISA8340-4附属書JC.6.1.1により求めること。 キ 本条第6項において読み替えて準用する第3項第1号中「前方安定に関し最も不利となる状態」 とは、第4項の適用については、解体用つかみ機のブーム及びアームを水平にした状態を、第5項 の適用については、ブーム及びアームを水平方向に最大限伸ばした状態をいうものであること。 ク ブーム及びアームの長さの合計が12メートル未満の解体用機械であっても、第5項の前方安定 度を確保できる範囲で、ブーム及びアームを動かすことができる範囲(作業範囲)を設定すること。 (2) 作業装置用ブレーキ(第6条関係) 鉄骨切断機等について、ブレーカと同様の作業装置用ブレーキの要件を規定したこと。ただし、 油圧又は空気圧を動力として用いる解体用機械は、本条の作業装置用ブレーキを備えなくても差し 支えないこと。 (3) 運転室(第9条) ア 第4項は、ブレーカの運転室の前面のガラスについて、強化ガラス以外の安全ガラスの使用が 認められる趣旨を明らかにするため、改正を行ったものであること。 イ 第4項の「安全ガラス」には、JISR3211(自動車用安全ガラス)に定める合わせガラス又は強化 ガラスの規格に適合するもの、及びJISR3206(強化ガラス)に定める規格に適合するものが含まれ ること。 ウ 第5項は、鉄骨切断機及びコンクリート圧砕機については、作業時に解体物やその破片が運転 室に飛来するおそれがあることから、運転室の前面に安全ガラスを使用することに加え、その前 面に物体の飛来による危険を防止するための設備を備えているものでなければならないとしたも のであること。 エ 第5項の「物体の飛来による危険を防止するための設備」は、アタッチメントの動力、想定され る作業の対象物の構造、性質、想定される機械本体と作業の対象物との距離を勘案し、最も危険 性の高い飛来物から労働者を保護することのできるものをいうこと。 (4) アーム等の昇降による危険防止設備(第11条関係) ア 鉄骨切断機等について、ブレーカと同様のアーム等の昇降による危険防止設備の要件を規定し たこと。 イ 「アーム等」の「等」には、ブームが含まれること。 (5) 自動停止装置等(第13条の2関係) ア 作業範囲(安定を確保する観点から定められた、ブーム及びアームを動かすことができる範囲) を超えてブーム又はアームが操作されるおそれがある特定解体用機械には、作業範囲を超えてブ ーム又はアームが操作されたときに、起伏装置及び伸縮装置の作動を自動的に停止させる装置又 は運転者に注意を喚起するための警音を発する装置を備えているものでなければならないとした こと。なお、作業範囲を超えてブーム又はアームを操作することは、労働安全衛生規則第163条 により禁止されていること。 イ 「安定度等」の「等」には、構造、材料、ブーム及びアームの長さが含まれること。 ウ 「作業範囲を超えてブーム又はアームが操作されるおそれがある」とは、ブーム及びアームを 水平にした状態において、第4条第4項の前方安定度を確保できない構造であることをいうこと。 エ 特定解体用機械に該当しない解体用機械であって、ブーム及びアームを水平にした状態におい て、第4条第4項の前方安定度を確保できない構造のものについては、本条の装置を備えているこ とが望ましいこと。 (6) 逆止め弁(第14条関係) ア 油圧を動力として用いる特定解体用機械の起伏装置及び伸縮装置は、原則として、油圧ホース の破損や接続部からの油漏れによる油圧の異常低下によるブーム及びアームの急激な降下等を防 止するための逆止め弁を備えているものでなければならないとしたこと。 イ 「急激な降下等」の「等」とは、急激な収縮をいうこと。 ウ 特定解体用機械に該当しない解体用機械であって、ブーム及びアームを水平にした状態におい て、第4条第4項の前方安定度を確保できないものについては、「逆止め弁」を備えたものとする こと。 (7) 表示(第15条関係) ア 取り替えることのできるアタッチメントを有する車両系建設機械については、当該アタッチメ ントの重量及び装着することのできるアタッチメントの重量が運転者の見やすい位置に表示され ているもの、又は運転者が当該事項を容易に確認できる書類を備え付けたものでなければならな いとしたこと。 イ 本条の表示について、運転者が必要な事項を容易に確認できる書類を備え付けることにより代 替できることとしたこと。 ウ 運転者が容易に確認できる書類の備付けの方法には、必要事項を記載した書類を運転席周辺の 書類入れに入れておくことが含まれること。 4 車両系建設機械(解体用)運転技能講習規程(平成2年労働省告示第65号)の一部改正関係 (1) 労働者の就業が制限される業務として、機体重量3トン以上の鉄骨切断機等の運転の業務が追加 されたことに伴い、ブレーカの運転の業務に従事することが認められる技能講習の内容を拡充し、 鉄骨切断機等を含めた合計4機種の車両系解体用機械を対象とするものに改めたこと。 (2) 一般の技能講習の範囲及び時間について、次のとおり改めたこと。 ア 学科講習の「作業に関する装置の構造、取扱い及び作業方法に関する知識」の講習時間を1時 間増加させて5時間としたこと。 イ 学科講習の「運転に必要な一般的事項に関する知識」の範囲に「鉄骨造又は木造の工作物等の 種類及び構造」を加え、その講習時間を1時間増加させて3時間としたこと。なお、この科目の範 囲として規定されていた「土木施工の方法」について、用語の整理により、「建設施工の方法」 に改めたこと。 ウ 実技講習の「作業のための装置の操作」の講習時間を1時間増加させて5時間としたこと。 (3) 車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)運転技能講習を修了した者等に関する特例に ついて、次のとおり改めたこと。 ア 学科講習の「作業に関する装置の構造、取扱い及び作業方法に関する知識」の講習時間を1時 間増加させて2時間としたこと。 イ 学科講習の「運転に必要な一般的事項に関する知識」の範囲に「鉄骨造又は木造の工作物等の 種類及び構造」を加えたこと。なお、この科目の範囲として規定されていた「土木施工の方法」 について、用語の整理により、「建設施工の方法」に改めたこと。 ウ 実技講習の「作業のための装置の操作」の講習時間を1時間増加させて2時間としたこと。 (4) 建設業法施行令(昭和31年政令第273号)に規定する建設機械施工技術検定のうち、1級の技術検定 に合格した者で、実地試験においてトラクター系建設機械操作施工法とショベル系建設機械施工法 のいずれをも選択しなかったもの、又は2級の技術検定で第4種から第6種までの種別に該当するも のに合格した者については、これまで一部の講習科目の受講を免除していたが、別途鉄骨切断機等 の安全な操作方法等に係る知識及び技能を付与する必要があるため、時間を短縮した技能講習を実 施することとしたこと。 (5) 建設業法施行令に規定する建設機械施工技術検定のうち、1級の技術検定に合格した者で、実地 試験においてショベル系建設機械操作施工法を選択したもの、又は2級の技術検定で第2種の種別に 該当するものに合格した者については、これまで技能講習の全部を免除していたが、別途鉄骨切断 機等の安全な操作方法等に係る知識及び技能を付与する必要があるため、時間を短縮した技能講習 を実施することとしたこと。 (6) 講師の要件については、平成16年3月19日付け基発第0319009号「公益法人に係る改革を推進す るための厚生労働省関係法律の整備に関する法律の施行並びにこれに伴う関係政令、省令及び告示 の改正等について」(以下「基発第0319009号通達」という。)の別添8の34に示したとおりであるこ と。 (7) 第2条第2項の表の「走行の操作」の科目の「定められたコース」については、昭和47年10月30日 付け基発第703号「安全関係技能講習規程の施行について」(以下「基発第703号通達」という。)の 第12の2の(1)を準用すること。 (8) 第2条第2項の表の「作業のための装置の操作」の科目については、次のア及びイをそれぞれ行う こと。 ア ブレーカ @ 「定められた方法」とは、次の(ア)から(ウ)までの操作を組み合わせて行わせる方法をいう こと。 (ア) ブーム及びアームの上下の操作 (イ) ブレーカユニットの伸ばしと抱込みの操作 (ウ) 旋回及びタガネを作業点へ移動させる操作 A 基本操作のほか、コンクリート柱、壁等立体物及びコンクリート床等平面体の解体作業のた めの装置の操作を行わせること。 イ 解体用つかみ機 @ 「定められた方法」とは、次の(ア)から(ウ)までの操作を組み合わせて行わせる方法をいう こと。 (ア) ブーム及びアームの上下の操作 (イ) つかみ具の開閉の操作 (ウ) 対象物をつかみ、持ち上げて旋回し、所定の位置に置く操作 A 基本操作のほか、解体用つかみ機による木造工作物等立体物の解体作業のための装置の操作 を行わせること。 (9) 実技講習に使用する機械は次のものとすること。 ア 「走行の操作」については、ショベル系建設機械であればブレーカ又は解体用つかみ機以外の ものでも差し支えないこと。また、タイヤ式又はクローラ式のいずれでもよいこと。 イ 「作業のための装置の操作」については、タイヤ式又はクローラ式のブレーカ(ドラグ・ショ ベルのバケットをブレーカユニットに交換したもので差し支えない。)及び解体用つかみ機(ドラ グ・ショベルのバケットを解体用つかみ具に交換したもので差し支えない。)を使用すること。 ウ 使用する車両系建設機械は、機体重量が5トン以上のものとすること。 (10) 修了試験の実施については、平成2年9月26日付け基発第586号「床上操作式クレーン運転技能講 習規程、小型移動式クレーン運転技能講習規程、車両系建設機械(解体用)運転技能講習規程、不 整地運搬車運転技能講習規程及び高所作業車運転技能講習規程の施行について」(以下「基発第58 6号通達」という。)の第1の3によること。ただし、一部の講習科目の受講が免除されている者に ついては、受講者が受講した各科目の点数の合計をもって満点とし、合格は、各科目の得点が、 各科目の配点の40%以上であって、かつ、得点の合計が、受講者が受験した科目の配点の合計点 の60%以上である場合とすること。 (11) 学科試験における各科目の配点は、次のとおりとすること。 ア 走行に関する装置の構造及び取扱いの方法に関する知識30点 イ 作業に関する装置の構造、取扱い及び作業方法に関する知識30点 ウ 運転に必要な一般的事項に関する知識20点 エ 関係法令20点 合計100点 (12) 実技試験については、基発第703号通達の第12の3の(2)を準用して行うこと。この場合の実技試 験採点表は、別表によること。 5 附則関係 (1) この告示は、平成25年7月1日から適用すること。(附則第1条) (2) 改正規定の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例によることとした こと。(附則第3条関係) 第3 関係通達の一部改正 1 基発第586号通達の一部改正 基発第586号通達の第4の2及び3を次のように改めること。 2・3削除 2 基発第0319009号通達の一部改正 基発第0319009号通達の別添7の6の(2)「ブレーカ(ドラグ・ショベルにブレーカユニットを装着し たもので差し支えない。)」を「ブレーカ及び解体用つかみ機(ドラグ・ショベルのアタッチメントを それぞれブレーカユニット及び解体用つかみ具に交換したもので差し支えない。)」に改正すること。別表(PDF:140KB)