安全衛生情報センター
有機溶剤中毒予防規則等の一部を改正する省令(平成24年厚生労働省令第71号)が平成24年4月2日に公布 され、同年7月1日から施行されることになった。 化学物質に起因する労働災害による死傷者(休業4日以上)は、毎年600〜700人に及んでいる。化学物質 による労働災害を減少させるためには、事業者による危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づく合 理的な安全衛生対策が重要であるが、職場において取り扱われる化学物質の種類・工程が多様化・複雑化 する中、リスクに基づく合理的な化学物質管理を促進するためには、作業の実態に応じた多様な発散防止 抑制措置を導入できる仕組みの構築が必要である。 このため、一定の化学物質について、(1)一定の要件の下で局所排気装置等以外の発散防止抑制措置の 導入を可能とすること及び(2)作業環境測定の評価結果等を労働者へ周知しなければならないこととする 所要の改正を行ったものである。 ついては、下記に示す改正の趣旨等を十分に理解し、その運用に遺憾なきを期されたい。
T 有機溶剤中毒予防規則関係 第1 改正の要点 1 多様な発散防止抑制措置の導入 事業者は、有害物の発散源を密閉する設備、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置(以下「局 排等」という。)以外の発散防止抑制措置を講ずることにより、有機溶剤業務を行う屋内作業場等に おける作業環境測定の結果が第一管理区分となるときは、所轄労働基準監督署長の許可を受けて、 局排等(第5条の規定により設けられるものに限る。)を設けないことができること。 (1) 許可申請のための局排等の設置の特例(第13条の2関係) 事業者は、局排等以外の発散防止抑制措置に係る許可を受けるため、有機溶剤の濃度の測定を行 うときは、次の措置を講じた上で、局排等を設けないことができること。 ア 次の事項を確認するのに必要な能力を有すると認められる者のうちから確認者を選任し、その 者にあらかじめ、次の事項を確認させること。 (ア) 当該発散防止抑制措置により有機溶剤の蒸気が作業場へ拡散しないこと。 (イ) 当該発散防止抑制措置が有機溶剤業務に従事する労働者に危険を及ぼし、又は労働者の健康 障害を当該措置により生ずるおそれのないものであること。 イ 当該発散防止抑制措置に係る有機溶剤業務に従事する労働者に送気マスク又は有機ガス用防毒 マスクを使用させること。 (2) 発散防止抑制措置による局排等の設置の特例等(第13条の3関係) 事業者は、発散防止抑制措置を講ずることにより作業場の作業環境測定の結果が第一管理区分と なるときは、所轄労働基準監督署長の許可を受けて、局排等を設けないことができることとすると ともに、当該許可を受けようとする場合の申請方法等について定めたこと。また、許可を受けた事 業者は、申請時の内容に変更があるときは、遅滞なく、文書で、所轄労働基準監督署長に報告しな ければならないこと。 許可を受けた事業者は、許可を受けた以後の作業環境測定の結果の評価が第一管理区分でなかっ たとき及び第一管理区分を維持できないおそれがあるときは、直ちに必要な措置を講じなければな らないこと。 所轄労働基準監督署長は、事業者が必要な措置を講じても第一管理区分とならなかったとき及び 第一管理区分を維持できないおそれがあると認めるときは、遅滞なく、許可を取り消すものとする こと。 2 作業環境測定の評価結果等の労働者への周知(第28条の3及び第28条の4関係) 作業環境測定の評価の記録、当該評価に基づく措置の内容等について、作業場に掲示する等により 労働者に周知しなければならないこと。 第2 細部事項 1 許可申請のための局排等の設置の特例(第13条の2関係) (1) 第1項の「発散防止抑制措置」には、有機溶剤の蒸気を吸着、分解等することにより濃度を低減 させるもの、気流を工夫することにより有機溶剤の蒸気の発散を防止するもの、冷却することによ り空気中の有機溶剤の濃度を低減させるもの等が含まれること。 (2) 第1項第1号の「確認するのに必要な能力を有すると認められる者」には、次の者が該当すること。 ア 3年以上労働衛生コンサルタント(試験の区分が労働衛生工学であるものに合格した者に限る。) としてその業務に従事した経験を有する者 イ 6年以上作業環境測定士としてその業務に従事した経験を有する者 ウ 6年以上衛生工学衛生管理者としてその業務に従事した経験を有する者 (3) 第1項第1号ロの「労働者に危険を及ぼし、又は労働者の健康障害を当該措置により生ずるおそれ」 には、例えば、発散防止抑制措置を講じて有害物質を分解する場合に、危険性又は有害性を有する 物質が生成されることによるものがあること。 (4) 本条は、発散防止抑制措置の許可を受けるための濃度測定を行うときに局排等を設置しないこと を認めるものであり、所轄労働基準監督署長への許可申請後、許可を受けるまでの間は、第5条の 規定が適用されること。 2 発散防止抑制措置による局排等の設置の特例等(第13条の3関係) (1) 第5項の「第一管理区分を維持できないおそれがある場合」には、発散防止抑制措置として設置 された設備等のレイアウトや有機溶剤の消費量に大幅な変更があった場合等があること。 (2) 特例の許可及び当該許可の取消しについては、別途定める要領に基づき処理すること。なお、当 分の間、別途指示するものを除き、本省に設置する専門家検討会で審査を行うので、その検討結果 を踏まえ処理すること。 3 作業環境測定の評価結果等の労働者への周知(第28条の3及び第28条の4関係) (1) 第28条の作業環境測定を行い、第三管理区分に区分された場合には、第28条の2第2項に基づく評 価の記録、第28条の3第1項に基づき講ずる措置及び同条第2項に基づく評価の結果を、第二管理区 分に区分された場合には、第28条の2第2項に基づく評価の記録及び第28条の4第1項に基づき講ずる 措置を、労働者に周知しなければならないこと。 (2) 周知の対象となる労働者には、直接雇用関係にある産業保健スタッフ及び労働者派遣事業の適正 な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(昭和60年法律第88号。以下「労働 者派遣法」という。)第45条第3項の規定により、派遣労働者が含まれること。なお、直接雇用関係 にない産業保健スタッフに対しても周知を行うことが望ましいこと。また、請負人の労働者に対し ては請負人である事業者が周知を行うこととなるが、「製造業における元方事業者による総合的な 安全衛生管理のための指針について」(平成18年8月1日付け基発第0801010号。以下「元方指針通達」 という。)別添1第1の10において、元方事業者が実施した作業環境測定の結果は、当該測定の範囲 において作業を行う関係請負人が活用できることとしていること。 なお、周知に当たっては、可能な限り作業環境の評価結果の周知と同じ時期に労働者に作業環境 を改善するため必要な措置について説明を併せて行うことが望ましいこと。また、有機溶剤中毒予 防規則による規制対象とされていない有害物が併用されている場合、仮に規制対象物の評価結果が 第一管理区分であっても、当該有害物へのばく露により労働者に危険を及ぼし、又は労働者の健康 障害を生ずるおそれのある場合には、事業者は労働者に呼吸用保護具着用等の措置が必要であるこ とについても説明を行うことが望ましいこと。 U 鉛中毒予防規則関係 第1 改正の要点 1 多様な発散防止抑制措置の導入 事業者は、局排等以外の発散防止抑制措置を講ずることにより、鉛業務を行う作業場の作業環境 測定の結果が第一管理区分となるときは、所轄労働基準監督署長の許可を受けて、局排等(第5条から 第13条まで及び第19条の規定により設けられるものに限る。)を設けないことができること。 (1) 許可申請のための局排等の設置の特例(第23条の2及び第58条関係) 事業者は、局排等以外の発散防止抑制措置に係る許可を受けるため、鉛の濃度の測定を行うとき は、次の措置を講じた上で、局排等を設けないことができること。 ア 次の事項を確認するのに必要な能力を有すると認められる者のうちから確認者を選任し、その 者にあらかじめ、次の事項を確認させること。 (ア) 当該発散防止抑制措置により鉛等又は焼結鉱等の粉じんが作業場へ拡散しないこと。 (イ) 当該発散防止抑制措置が鉛業務に従事する労働者に危険を及ぼし、又は労働者の健康障害を 当該措置により生ずるおそれのないものであること。 イ 当該発散防止抑制措置に係る鉛業務に従事する労働者に有効な呼吸用保護具を使用させること。 (2) 発散防止抑制措置による局排等の設置の特例等(第23条の3関係) 事業者は、発散防止抑制措置を講ずることにより作業場の作業環境測定の結果が第一管理区分と なるときは、所轄労働基準監督署長の許可を受けて、局排等を設けないことができることとすると ともに、当該許可を受けようとする場合の申請方法等について定めたこと。また、許可を受けた事 業者は、申請時の内容に変更があるときは、遅滞なく、文書で、所轄労働基準監督署長に報告しな ければならないこと。 許可を受けた事業者は、許可を受けた以後の作業環境測定の結果の評価が第一管理区分でなかっ たとき及び第一管理区分を維持できないおそれがあるときは、直ちに必要な措置を講じなければな らないこと。 所轄労働基準監督署長は、事業者が必要な措置を講じても第一管理区分とならなかったとき及び 第一管理区分を維持できないおそれがあると認めるときは、遅滞なく、許可を取り消すものとする こと。 2 作業環境測定の評価結果等の労働者への周知(第52条の3及び第52条の4関係) 作業環境測定の評価の記録、当該評価に基づく措置の内容等について、作業場に掲示する等によ り労働者に周知しなければならないこと。 第2 細部事項 1 許可申請のための局排等の設置の特例(第23条の2関係) (1) 第1項の「発散防止抑制措置」には、鉛等又は焼結鉱等の粉じんを吸着等することにより濃度を 低減させるもの、気流を工夫することにより鉛等又は焼結鉱等の粉じんの発散を防止するもの等が 含まれること。 (2) 第1項の「確認するのに必要な能力を有すると認められる者」には、次の者が該当すること。 ア 3年以上労働衛生コンサルタント(試験の区分が労働衛生工学であるものに合格した者に限る。) としてその業務に従事した経験を有する者 イ 6年以上作業環境測定士としてその業務に従事した経験を有する者 ウ 6年以上衛生工学衛生管理者としてその業務に従事した経験を有する者 (3) 第1項第2号の「労働者に危険を及ぼし、又は労働者の健康障害を当該措置により生ずるおそれ」 には、例えば、発散防止抑制措置を講じて有害物質を分解する場合に、危険性又は有害性を有する 物質が生成されることによるものがあること。 (4) 本条は、発散防止抑制措置の許可を受けるための濃度測定を行うときに局排等を設置しないこと を認めるものであり、所轄労働基準監督署長への許可申請後、許可を受けるまでの間は、第5条から 第13条まで及び第19条の規定が適用されること。 2 発散防止抑制措置による局排等の設置の特例等(第23条の3関係) (1) 第5項の「第一管理区分を維持できないおそれがある場合」には、発散防止抑制措置として設置 された設備等のレイアウトや鉛等の消費量に大幅な変更があった場合等があること。 (2) 特例の許可及び当該許可の取消しについては、別途定める要領に基づき処理すること。なお、当 分の間、本省に設置する専門家検討会で審査を行うので、その検討結果を踏まえ処理すること。 3 作業環境測定の評価結果等の労働者への周知(第52条の3及び第52条の4関係) (1) 第52条の作業環境測定を行い、第三管理区分に区分された場合には、第52条の2第2項に基づく評 価の記録、第52条の3第1項に基づき講ずる措置及び同条第2項に基づく評価の結果を、第二管理区 分に区分された場合には、第52条の2第2項に基づく評価の記録及び第52条の4第1項に基づき講ずる 措置を、労働者に周知しなければならないこと。 (2) 周知の対象となる労働者には、直接雇用関係にある産業保健スタッフ及び労働者派遣法第45条第 3項の規定により、派遣労働者が含まれること。なお、直接雇用関係にない産業保健スタッフに対 しても周知を行うことが望ましいこと。また、請負人の労働者に対しては請負人である事業者が周 知を行うこととなるが、元方指針通達別添1第1の10において、元方事業者が実施した作業環境測定 の結果は、当該測定の範囲において作業を行う関係請負人が活用できることとしていること。 なお、周知に当たっては、可能な限り作業環境の評価結果の周知と同じ時期に労働者に作業環境 を改善するため必要な措置について説明を併せて行うことが望ましいこと。また、鉛中毒予防規則 による規制対象とされていない有害物が併用されている場合、仮に規制対象物の評価結果が第一管 理区分であっても、当該有害物へのばく露により労働者に危険を及ぼし、又は労働者の健康障害を 生ずるおそれのある場合には、事業者は労働者に呼吸用保護具着用等の措置が必要であることにつ いても説明を行うことが望ましいこと。 V 特定化学物質障害予防規則関係 第1 改正の要点 1 多様な発散防止抑制措置の導入 事業者は、局排等以外の発散防止抑制措置を講ずることにより、特定化学物質を製造し、又は取 り扱う業務を行う作業場の作業環境測定の結果が第一管理区分となるときは、所轄労働基準監督署 長の許可を受けて、局排等(第4条第3項及び第5条第1項の規定により設けられるものに限る。)を設 けないことができること。 (1) 許可申請のための局排等の設置の特例(第6条の2関係) 事業者は、局排等以外の発散防止抑制措置に係る許可を受けるため、第二類物質の濃度の測定を 行うときは、次の措置を講じた上で、局排等を設けないことができること。 ア 次の事項を確認するのに必要な能力を有すると認められる者のうちから確認者を選任し、その 者にあらかじめ次の事項を確認させること。 (ア) 当該発散防止抑制措置により第二類物質のガス、蒸気又は粉じんが作業場へ拡散しないこと。 (イ) 当該発散防止抑制措置が第二類物質を製造し、又は取り扱う業務(臭化メチル等を用いて行 う燻蒸業務を除く。)に従事する労働者に危険を及ぼし、又は労働者の健康障害を当該措置に より生ずるおそれのないものであること。 イ 当該発散防止抑制措置に係る第二類物質を製造し、又は取り扱う業務に従事する労働者に有効 な呼吸用保護具を使用させること。 (2) 発散防止抑制措置による局排等の設置の特例等(第6条の3関係) 事業者は、発散防止抑制措置を講ずることにより作業場の作業環境測定の結果が第一管理区分と なるときは、所轄労働基準監督署長の許可を受けて、局排等を設けないことができることとすると ともに、当該許可を受けようとする場合の申請方法等について定めたこと。また、許可を受けた事 業者は、申請時の内容に変更があるときは、遅滞なく、文書で、所轄労働基準監督署長に報告しな ければならないこと。 許可を受けた事業者は、許可を受けた以後の作業環境測定の結果の評価が第一管理区分でなかっ たとき及び第一管理区分を維持できないおそれがあるときは、直ちに必要な措置を講じなければな らないこと。 所轄労働基準監督署長は、事業者が必要な措置を講じても第一管理区分とならなかったとき及び 第一管理区分を維持できないおそれがあると認めるときは、遅滞なく、許可を取り消すものとする こと。 2 作業環境測定の評価結果等の労働者への周知(第36条の3及び第36条の4関係) 作業環境測定の評価の記録、当該評価に基づく措置の内容等について、作業場に掲示する等によ り労働者に周知しなければならないこと。 第2 細部事項 1 許可申請のための局排等の設置の特例(第6条の2関係) (1) 第1項の「発散防止抑制措置」には、第二類物質の蒸気等を吸着、分解等することにより濃度を 低減させるもの、気流を工夫することにより第二類物質の蒸気等の発散を防止するもの、冷却する ことにより空気中の第二類物質の濃度を低減させるもの等が含まれること。 (2) 第1項第1号の「確認するのに必要な能力を有すると認められる者」には、次の者が該当すること。 ア 3年以上労働衛生コンサルタント(試験の区分が労働衛生工学であるものに合格した者に限る。) としてその業務に従事した経験を有する者 イ 6年以上作業環境測定士としてその業務に従事した経験を有する者 ウ 6年以上衛生工学衛生管理者としてその業務に従事した経験を有する者 (3)第1項第1号ロの「労働者に危険を及ぼし、又は労働者の健康障害を当該措置により生ずるおそれ」 には、例えば、発散防止抑制措置を講じて有害物質を分解する場合に、危険性又は有害性を有する 物質が生成されることによるものがあること。 (4) 本条は、発散防止抑制措置の許可を受けるための濃度測定を行うときに局排等を設置しないこと を認めるものであり、所轄労働基準監督署長への許可申請後、許可を受けるまでの間は、第4条第3 項及び第5条第1項の規定が適用されること。 2 発散防止抑制措置による局排等の設置の特例等(第6条の3関係) (1) 第5項の「第一管理区分を維持できないおそれがある場合」には、発散防止抑制措置として設置 された設備等のレイアウトや特定化学物質の消費量に大幅な変更があった場合等があること。 (2) 特例の許可及び当該許可の取消しについては、別途定める要領に基づき処理すること。なお、当 分の間、別途指示するものを除き、本省に設置する専門家検討会で審査を行うので、その検討結果 を踏まえ処理すること。 3 作業環境測定の評価結果等の労働者への周知(第36条の3及び第36条の4関係) (1) 第36条の作業環境測定を行い、第三管理区分に区分された場合には、第36条の2第2項に基づく評 価の記録、第36条の3第1項に基づき講ずる措置及び同条第2項に基づく評価の結果を、第二管理区 分に区分された場合には、第36条の2第2項に基づく評価の記録及び第36条の4第1項に基づき講ずる 措置を、労働者に周知しなければならないこと。 (2) 周知の対象となる労働者には、直接雇用関係にある産業保健スタッフ及び労働者派遣法第45条第 3項の規定により、派遣労働者が含まれること。なお、直接雇用関係にない産業保健スタッフに対 しても周知を行うことが望ましいこと。また、請負人の労働者に対しては請負人である事業者が周 知を行うこととなるが、元方指針通達別添1第1の10において、元方事業者が実施した作業環境測定 の結果は、当該測定の範囲において作業を行う関係請負人が活用できることとしていること。 なお、周知に当たっては、可能な限り作業環境の評価結果の周知と同じ時期に労働者に作業環境 を改善するため必要な措置について説明を併せて行うことが望ましいこと。また、特定化学物質障 害予防規則による規制対象とされていない有害物が併用されている場合、仮に規制対象物の評価結 果が第一管理区分であっても、当該有害物へのばく露により労働者に危険を及ぼし、又は労働者の 健康障害を生ずるおそれのある場合には、事業者は労働者に呼吸用保護具着用等の措置が必要であ ることについても説明を行うことが望ましいこと。