安全衛生情報センター
労働基準法施行規則の一部を改正する省令(平成22年厚生労働省令第69号。以下「改正省令」という。) が平成22年5月7日に公布され、同日から施行されたので、下記事項に留意の上、事務処理に遺憾なきを期 されたい。
第1 改正の趣旨 労働基準法(昭和22年法律第49号)第75条第2項の業務上の疾病の範囲は、労働基準法施行規則(昭和 22年厚生省令第23号)別表第1の2(以下「別表」という。)に定められているところであるが、平成21年 3月から「労働基準法施行規則第35条専門検討会」において、最新の医学的知見、労働災害の発生状況 等を踏まえ別表の見直しの必要性等について検討を行い、同年12月21日に「労働基準法施行規則第35 条専門検討会報告書」が取りまとめられた。 本改正は、同報告書を踏まえ、別表の一部改正を行ったものである。 第2 改正事項 1 既に別表に規定する疾病又はその対象業務の見直し (1) 別表第3号4について 別表第3号4に規定する疾病を「後頭部、頸(けい)部、肩甲帯、上腕、前腕又は手指の運動器障 害」に、対象業務を「電子計算機への入力を反復して行う業務その他上肢(し)に過度の負担のか かる業務」にそれぞれ改めたこと。 (2) 別表第6号1について 別表第6号1に規定する伝染性疾患の対象業務に「介護の業務」を追加したこと。 2 例示列挙する業務上疾病の追加 次の疾病と対象業務を別表に追加したこと。 (1) 石綿にさらされる業務による良性石綿胸水又はびまん性胸膜肥厚(別表第4号7) (2) 塩化ビニルにさらされる業務による肝細胞がん(別表第7号10) (3) 電離放射線にさらされる業務による多発性骨髄腫(しゅ)又は非ホジキンリンパ腫(しゅ)(別表第 7号14) (4) 長期間にわたる長時間の業務その他血管病変等を著しく増悪させる業務による脳出血、くも膜 下出血、脳梗塞、高血圧性脳症、心筋梗塞、狭心症、心停止(心臓性突然死を含む。)若しくは解 離性大動脈瘤(りゅう)又はこれらの疾病に付随する疾病(別表第8号) (5) 人の生命にかかわる事故への遭遇その他心理的に過度の負担を与える事象を伴う業務による精 神及び行動の障害又はこれに付随する疾病(別表第9号) 第3 改正を行った別表各号の規定の内容 1 別表第3号4「電子計算機への入力を反復して行う業務その他上肢(し)に過度の負担のかかる業務に よる後頭部、頸(けい)部、肩甲帯、上腕、前腕又は手指の運動器障害」 (要旨) 本改正は、既に平成9年2月3日付け基発第65号「上肢作業に基づく疾病の業務上外の認定基準につ いて」(以下「上肢障害認定基準」という。)に基づき取り扱われていた上肢に過度の負担のかかる 業務による疾病について、対象業務の例示及び疾病名の見直しを行ったものであること。 (解説) 本規定に該当する疾病であるか否かの判断は、これまでどおり、上肢障害認定基準によること。 2 別表第6号1「患者の診療若しくは看護の業務、介護の業務又は研究その他の目的で病原体を取り扱 う業務による伝染性疾患」 (要旨) 本改正は、改正前の別表第6号5の包括的救済規定に該当するものとしての介護の業務による疥癬 等の伝染性疾患の認定状況を踏まえ、対象業務として介護の業務を明示したものであること。 (解説) 「介護の業務」とは、身体上又は精神上の障害があることにより日常生活を営むのに支障がある 者に対し、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練及び療養上の管理その他のその者の能力に応じ 自立した日常生活を営むことができるようにするためのサービスを行う業務をいうものであること。 3 別表第4号7「石綿にさらされる業務による良性石綿胸水又はびまん性胸膜肥厚」 (要旨) 本改正は、既に平成18年2月9日付け基発第0209001号「石綿による疾病の認定基準について」(以 下「石綿認定基準」という。)に基づき、改正前の別表第4号8の包括的救済規定に該当するものとし て取り扱われていた良性石綿胸水及びびまん性胸膜肥厚を例示列挙したものであること。 (解説) 本規定に該当する疾病であるか否かの判断は、これまでどおり、石綿認定基準によること。 4 別表第7号10「塩化ビニルにさらされる業務による肝血管肉腫(しゅ)又は肝細胞がん」 (要旨) 本改正は、医学専門家による検討会において取りまとめられた「塩化ビニル障害の業務上外に関 する検討会報告書(平成21年2月)」を踏まえ、改正前の別表第7号22の包括的救済規定に該当するも のとして取り扱われていた肝細胞がんを例示列挙したものであること。 (解説) 本規定に該当する疾病であるか否かの判断は、これまでどおり、本省にりん伺して行うものであ ること。 5 別表第7号14「電離放射線にさらされる業務による白血病、肺がん、皮膚がん、骨肉腫(しゅ)、甲状 腺(せん)がん、多発性骨髄腫(しゅ)又は非ホジキンリンパ腫(しゅ)」 (要旨) 本改正は、医学専門家による検討会において取りまとめられた「電離放射線障害の業務上外に関 する検討会報告書(平成16年1月)」及び「電離放射線障害の業務上外に関する検討会報告書(平成20 年10月)」を踏まえ、改正前の別表第7号22の包括的救済規定に該当するものとして取り扱われてい た多発性骨髄腫(しゅ)及び非ホジキンリンパ腫(しゅ)を例示列挙したものであること。 (解説) 本規定に該当する疾病であるか否かの判断は、これまでどおり、本省にりん伺して行うものであ ること。 6 別表第8号「長期間にわたる長時間の業務その他血管病変等を著しく増悪させる業務による脳出血、 くも膜下出血、脳梗塞、高血圧性脳症、心筋梗塞、狭心症、心停止(心臓性突然死を含む。)若しくは 解離性大動脈瘤(りゅう)又はこれらの疾病に付随する疾病」 (要旨) 本改正は、既に平成13年12月12日付け基発第1063号「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因 するものを除く。)の認定基準について」(以下「脳・心臓疾患認定基準」という。)に基づき、改正 前の別表第9号「その他業務に起因することが明らかな疾病」に該当するものとして取り扱われてい た脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、高血圧性脳症、心筋梗塞、狭心症、心停止(心臓性突然死を含む。) 及び解離性大動脈瘤(りゅう)を例示列挙したものであること。 (解説) 本規定に該当する疾病であるか否かの判断は、これまでどおり、脳・心臓疾患認定基準によるこ と。 7 別表第9号「人の生命にかかわる事故への遭遇その他心理的に過度の負担を与える事象を伴う業務に よる精神及び行動の障害又はこれに付随する疾病」 (要旨) 本改正は、既に平成11年9月14日付け基発第544号「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外 について」(以下「精神障害判断指針」という。)に基づき、改正前の別表第9号「その他業務に起因 することが明らかな疾病」に該当するものとして取り扱われていた精神及び行動の障害を例示列挙 したものであること。 (解説) (1) 「精神及び行動の障害」の範囲は、精神障害判断指針における「精神障害」の範囲と同一で あること。 (2) 本規定に該当する疾病であるか否かの判断は、これまでどおり、精神障害判断指針によるこ と。 第4 標準処理期間 1 概要 追加された疾病に係る標準処理期間については、別表第9号に定める疾病に係る療養補償給付、休業 補償給付、遺族補償給付及び葬祭料に関しては8か月とし、これ以外は他の疾病(包括的救済規定に係 るものを除く。)に係る標準処理期間と同様に6か月とすること。 2 関係通達の改正 平成6年9月30日付け基発第612号「行政手続法の施行について」を別紙1のとおり改めること。 第5 その他の関係通達の改正 改正省令の施行に伴い、関係通達を別紙2のとおり改めること。